名字365 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を毎日紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
連載一覧はこちら>>
珍しい名字:指原(さしはら)
「指原」と書いて何と読むでしょうか。ほとんどの人は正しく「さしはら」と読めると思います。しかし、15年以上前だとおそらく多くの人は「ゆびはら」と読んだのではないでしょうか。
「指原」は全国ランキングでは1万位以下の珍しい名字のため、多くの人は見たことがなく、「指(ゆび)」「原(はら)」という漢字の読み方通り「ゆびはら」と読んだはずです。
ところが、タレント指原莉乃さんの活躍で、「指原」と書いて「さしはら」と読むのは常識となりました。その影響力の大きさには驚きます。
さて「指原」という名字は大分県以外にはほとんどなく、しかも大分県でもほぼ大分市のみに集中しているという1点集中型の名字です。従って、その由来も大分市にあります。
とくに多いのが大分市東部の丹川地区で、市内には「佐志原」という名字もあることから、「さしはら」という言葉がルーツで、あとから漢字をあてたものと思われます。
「さし」とは上代語で焼畑を指すとも、真っすぐな地形を指すともいわれます。丹川地区は丹生川に沿って長く伸びる谷間で、古代から「丹生郷」として史料にも登場します。
この古くから開けた谷間を「さしはら」と呼び、ここに住んだ「さしはら」一族が、「指原」という漢字をあてたのが由来でしょう。
森岡浩/Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
墨アート製作 書家・越智まみ(
https://esprit-de-mami.com/)
セブンアカデミーで越智まみさんの「オンライン書道」墨アートレッスンが開催中。詳細は
こちらから>>