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“美醂(みりん)の家”「白扇酒造」のお正月──美味なるおせちの秘訣は3年熟成の本みりん使いにあり

2024.12.27

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〔特集〕岐阜・加茂「白扇酒造」にみる “美醂(みりん)の家”の正月迎え、いまむかし 伝承の技術、伝来の味を守る家の正月迎えの様子を紹介した1997年1月号掲載の特集「味の名家のおせちとお雑煮」。28年前に訪れた岐阜「白扇酒造」の加藤家を再訪し、昔の写真とともに、今の正月迎えの姿を追いました。前編の記事はこちら>>

・特集「“美醂の家”の正月迎え、いまむかし」の記事一覧はこちらから>>

美味なるおせちの秘訣は3年熟成の本みりん使いにあり

大正14(1925)年に建てられた母屋2階の座敷で、家族揃っての正月迎え。お祝い事の贈答用に酒を運んだ指樽(さしだる)や角樽(つのだる)が床脇に飾られるのも、酒の醸造元らしい新年のしつらい。

大正14(1925)年に建てられた母屋2階の座敷で、家族揃っての正月迎え。お祝い事の贈答用に酒を運んだ指樽(さしだる)や角樽(つのだる)が床脇に飾られるのも、酒の醸造元らしい新年のしつらい。

みりんは、かつて“美醂”と書き、醂とは果物が熟成して甘く発酵することを表す言葉です。江戸時代に生き酛もと造りの淡麗な清酒が一般的になる前、みりんは甘い酒として人気がある飲み物でした。江戸時代には砂糖が高価だったため、料理に甘みを加えるときにみりんを入れることが多くなり、現在では調味料として使うのが主流となりました。

料亭に注文する重箱に加えて、手作りのかずのこ、栗やごぼう、れんこん入りの黒豆、田作りが並ぶ。豊場惺也作の大皿に盛られたのは、成美さんが作る鮎の甘露煮と酢焼き。

料亭に注文する重箱に加えて、手作りのかずのこ、栗やごぼう、れんこん入りの黒豆、田作りが並ぶ。豊場惺也作の大皿に盛られたのは、成美さんが作る鮎の甘露煮と酢焼き。

加藤家の正月料理の材料となる黒豆やれんこんなどの野菜類は、3代目夫人の郁子さんの頃からほとんど自給自足。その味の決め手となるのは、やはり3年熟成の本みりん、福来純。


搾りたては色が白く、フレッシュな味わいながら、3年熟成すると琥珀色に変化し、味わいは深くなり、香りは濃醇になります。黒豆のふっくらとしたまろやかな味の仕上がりに、また田作りやかずのこのつやつやとした照りに、みりんの効果を感じとることができます。

お雑煮はかつおだしの醬油仕立てで、本みりんを隠し味に使っている。中身は煮た角餅と、この地方で正月菜として売られる小松菜のみ。仕上げにかつお節をのせていただく。

お雑煮はかつおだしの醬油仕立てで、本みりんを隠し味に使っている。中身は煮た角餅と、この地方で正月菜として売られる小松菜のみ。仕上げにかつお節をのせていただく。


お雑煮はすまし仕立てで、中には煮た角餅が入ります。お雑煮の丸餅・角餅の境界は岐阜県の関ヶ原あたりとされ、当地では飛驒川の東西で分かれるともいわれます。飛驒川の清流で立派に育った鮎の料理は、奥様の成美さんの手作りです。

元日の夕方からは蔵を改装したスペースで一家団らんのひととき

かつて仕込み蔵だったため、天井が高く、広々とした空間。テーブル席に移って和やかに語り合う4代目の加藤孝明さん、成美さん夫妻と、5代目の祐基さん、咲さん夫妻。

かつて仕込み蔵だったため、天井が高く、広々とした空間。テーブル席に移って和やかに語り合う4代目の加藤孝明さん、成美さん夫妻と、5代目の祐基さん、咲さん夫妻。

元日の夕方には席を移して、テーブル席で家族水入らずの時間を過ごします。かつての仕込み蔵を2023年秋にイベントスペースと売り場に改装し、広いキッチンも新設しました。

手前から、加藤家の年越しに欠かせない、根菜類と豆腐、糸昆布などを大鍋で炊いた「おとりこし」、砂肝の中華風、成美さんの十八番の牛しゃぶしゃぶとレモンのミルフィーユ。尾頭つきの鯛の塩焼きは、近くにある「割烹 魚勘」から届いた。

手前から、加藤家の年越しに欠かせない、根菜類と豆腐、糸昆布などを大鍋で炊いた「おとりこし」、砂肝の中華風、成美さんの十八番の牛しゃぶしゃぶとレモンのミルフィーユ。尾頭つきの鯛の塩焼きは、近くにある「割烹 魚勘」から届いた。

テーブルには成美さんの手料理が並びます。料理の主役は、加茂地方で昔から食べられている「おとりこし」という料理。酒の仕込みで忙しい年末にたっぷりと作る煮物で、大根、にんじん、里いも、ごぼう、豆腐、油揚げ、糸昆布を大きな鍋で炊き、大晦日から三が日まで毎日食べます。

「大晦日には焼いたいわしがつきます。昔風の料理で、若い頃はあまり好きではなかったけれど、最近はこれがないと年が越せない感じですね」と孝明さん。ともに並ぶのは、牛肉のしゃぶしゃぶとレモンのミルフィーユと、砂肝の中華風。40年来成美さんが作り続けている料理で、祐基さん、真基さんも「懐かしいなあ」と声を揃えます。

原材料を大切にし、伝統製法を守り、この地でしか造れないみりん、日本酒を造り続けること。さらに新しい時代を見据えながら試行錯誤し、挑戦を続けること。お正月は、蔵の歴史を見つめ直しながら、心新たに家業と向き合うときでもあるのです。

熟成した本みりんは美しい琥珀色に変化。芳醇で深みのある味わいと香りが特徴で、料理はもちろん、バニラアイスにかけたり、ソーダ割りにして楽しめる。

熟成した本みりんは美しい琥珀色に変化。芳醇で深みのある味わいと香りが特徴で、料理はもちろん、バニラアイスにかけたり、ソーダ割りにして楽しめる。

もち米、米麴、自社製造した米焼酎のみを原料に、伝統製法を守り、3年熟成させた本みりん「福来純」720ml 1265円と、「黒松白扇 純米大吟醸 馥(ふく)」720ml 4400円。

もち米、米麴、自社製造した米焼酎のみを原料に、伝統製法を守り、3年熟成させた本みりん「福来純」720ml 1265円と、「黒松白扇 純米大吟醸 馥(ふく)」720ml 4400円。



大神神社から届いた杉玉が下がる、歴史を感じさせる外観。

白扇酒造(はくせんしゅぞう)
住所:岐阜県加茂郡川辺町中川辺28
TEL:0574(53)2508

この特集の記事一覧はこちらから>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2025年01月号

家庭画報 2025年01月号

撮影/蛭子 真、浅井憲雄 取材協力/萬 眞智子

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