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鍼灸で「がんの術後ケア」。筋緊張をほぐし、痛みや不調を取り除く。野口直子先生(くぬぎ鍼灸)

2024.11.20

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新世代の鍼灸師に訊く 第12回(1)鍼灸院は「未病を予防する」ことから「病気を改善する」ことまで守備範囲が広く、身近な健康アドバイザーとしてもっと活用したい医療施設の一つです。前回の記事はこちら>>

更年期から起こりやすいトラブルの予防法・解決法「がんの術後ケア」

野口直子先生(くぬぎ鍼灸)

くぬぎ鍼灸 院長 野口直子(のぐち・なおこ)先生 1975年、愛知県生まれ。お茶の水女子大学在学中に「毫針電極の電気化学特性」というテーマで卒業研究に取り組んだことが鍼灸との出合い。ランドスケープデザインの会社を経て、東京衛生学園専門学校に入学。大学病院など複数の医療機関に勤務した後、2011年に開業。19年より横浜市立大学附属市民総合医療センターペインクリニック内科非常勤鍼灸師。

くぬぎ鍼灸 院長 野口直子(のぐち・なおこ)先生 1975年、愛知県生まれ。お茶の水女子大学在学中に「毫針電極の電気化学特性」というテーマで卒業研究に取り組んだことが鍼灸との出合い。ランドスケープデザインの会社を経て、東京衛生学園専門学校に入学。大学病院など複数の医療機関に勤務した後、2011年に開業。19年より横浜市立大学附属市民総合医療センターペインクリニック内科非常勤鍼灸師。

筋緊張をほぐし、自律神経を整えて術後の痛みや不調、不安などを取り除く

野口直子先生が一人で営むくぬぎ鍼灸には、がんの術後ケアを目的とした患者さんが大勢訪れます。大半は近隣の医療機関からの紹介です。「私は横浜市立大学附属市民総合医療センターペインクリニック内科に非常勤鍼灸師としても勤務しており、同センターの外来で週1~2回、慢性疼痛を中心に施術しています。医療連携は私の長年のテーマの一つですが、がんや痛みの専門医からも鍼灸治療が認められ、患者さんに必要とされているのはありがたいことです」

手術創をかばう姿勢が筋緊張による痛みを引き起こす

がんの術後ケアにおいても主訴は痛みが多いといいます。「原因について“手術で神経を傷つけてしまった後遺症で痛みが残った”と考えがちですが、実はそれだけではないのです。自分でも気づかないうちに手術創をかばうような姿勢をとり続け、それによって筋肉の強い緊張を引き起こし、手術創が治っても痛みとして残ってしまうのです」。いわゆる筋性疼痛と呼ばれるもので、なかなか治らず、治療法を求めてさまざまな診療科を転々とする人も少なくありません。

「筋肉のこわばりをほぐすだけでも痛みはずいぶん楽になるため、そのことを経験的に知っている専門医が患者さんに鍼灸治療をすすめてくれます」

大きな手術をした人は、手術をした周辺の筋肉が緊張していることが多く、このような場合には、背骨の両サイドに複数の鍼を打ち、背中や腰の筋緊張を緩めていきます。


最初に脈や舌、おなかの状態などを診察する。

最初に脈や舌、おなかの状態などを診察する。

さらに、背骨の真上にある督脈(とくみゃく)という※経絡に灸をします。「脊髄から自律神経の枝が出ており、背骨の周囲を刺激するのは自律神経を整えるうえでも大きな効果があります」。

※経絡とはエネルギーが流れる通路のことで、督脈もその一本。

督脈上に灸を、その両脇に鍼を施術。

督脈上に灸を、その両脇に鍼を施術。

手術で腹筋を切断している場合は腹部に筋緊張がみられることが多く、箱灸で腹部全体を温めて痛みを和らげます。

箱灸で腹部を温める。

箱灸で腹部を温める。

また、安静にすることで筋肉量が低下すると深部の筋肉がギュッと硬くなり、これも筋緊張の原因になります。「有効な解決策は運動による筋肉の増量ですが、体力が低下して思うように運動できないため、動ける体づくりの手助けをすることも欠かせません」。

このベースとなるのが「食べる(食事)・寝る(睡眠)・出す(排泄)」へのサポートです。これらの機能が支障をきたしているときは、中医学による弁証をもとに選択したツボを鍼や灸で刺激し改善に導いていきます。「活力が出てきたなどの変化がみられる人も多く、このように健康の基本を整えるのはとても大事なことなので、積極的に取り組んでいます」。

足にあるツボを使って、つらい症状を軽減することも多い。ただし、同じ症状でも原因によって選択するツボは違うため、オーダーメイド治療が基本だ。

足にあるツボを使って、つらい症状を軽減することも多い。ただし、同じ症状でも原因によって選択するツボは違うため、オーダーメイド治療が基本だ。

施術中は患者さんが安心して自分を労る時間になるように

さらに野口先生が施術する中で重視しているのが“安心感”です。「治療が一区切りしたとはいえ、患者さんはさまざまな不調や再発の不安を抱えながら暮らしています。特に40~50代の女性は、子育てや家事、介護、仕事などに追われ、自分の体調管理が後回しになることも少なくありません。せめて施術中は心身ともにリラックスして自分を労る時間にしてほしいのです」。だから、セルフケアの指導も患者さんの負担にならない範囲にとどめるといいます。

また、完全予約制にすることで治療室のプライベート空間を確保し、患者さんが施術中に話したいことが話せるように配慮しています。「ここに来て、おしゃべりすると気持ちがすっきりするといってくださる人も多いです。患者さんからアドバイスを求められたときは、ともに考えることを大切にしており、患者さん自身がご自分の考えや気持ちを整理して次の行動に移っていけるようなサポートを心がけています」。

病気やケガをした人たちが安心して休んでいける、木陰の止まり木的な存在でありたい──。こんな思いを込めて名づけたくぬぎ鍼灸で、野口先生は患者さんたちを温かく迎え入れています。

診療案内

神奈川県鎌倉市大町1-11-6 プレシャスフラット102
TEL:0467(80)2975 完全予約制
診療時間/9時~17時
休診日/不定休(HPで確認)
診療費/初診料2200円、Simple(基本)7700円、Regular(基本+頭のケアor足裏ケア)9900円、Total(基本+頭のケア+足裏ケア)1万3200円 ほか
https://kunugi89.com/

くぬぎ鍼灸

※次回へ続く。

・連載「新世代の鍼灸師に訊く」の記事一覧はこちら>>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2024年12月号

家庭画報 2024年12月号
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