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舘ひろしさんが訪れる「あさば」静岡・修善寺で535年間も愛され続ける温泉宿

2024.09.18

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〔特集〕最高の宿、感動のホテル 世界からも高評価を受けている、日本の宿とホテル。そこには、日本が誇る“おもてなし”の文化が息づいています。自然の中のリトリート、五感を刺激するアートなホテルや心と体を癒やすウェルネスのホテル、土地の恵みをいただく美食の宿など、家庭画報が取材し厳選した宿とホテルを、最新情報とともにご紹介します。前回の記事はこちら>>

・特集「最高の宿、感動のホテル」の記事一覧はこちらから>>

舘ひろしさんが日本屈指の名宿で「おもてなし」の心に触れる

ロビーでくつろぐ舘さん。一点の曇りもなく磨かれた掃き出し窓から、「あさば」の象徴である能舞台を中心とした広い庭が一望できる。

ロビーでくつろぐ舘さん。一点の曇りもなく磨かれた掃き出し窓から、「あさば」の象徴である能舞台を中心とした広い庭が一望できる。

舘ひろし(たち・ひろし)
1950年愛知県生まれ。1976年映画デビュー。1986年にドラマ『あぶない刑事』で大ブレイク。同シリーズの映画8作目『帰ってきたあぶない刑事』が今年大ヒット。映画『ゴールデンカムイ』の続編となるドラマシリーズが2024年10月よりWOWOW で独占放送・配信予定。

あさば ── 静岡・修善寺
535年間、愛され続ける温泉宿

「素晴らしい庭ですね。何時間でも見ていられます」。伊豆修善寺の温泉宿「あさば」を訪ねた舘ひろしさんが、感激の面持ちで口にしたのは、館内のさまざまな場所から眺めることができる庭への賛辞。


竹林が風にそよぐ山、前田子爵邸から移築された由緒ある能舞台、色とりどりの鯉が泳ぐ池。旧家に生まれ、築200年の武家屋敷で育った舘さんにとって、心落ち着く眺めだといいます。

「僕が長年通う下呂温泉『水明館』の離れ『青嵐荘』も小川の流れる庭がいい。庭は水がないとね」と舘さん。2022年に改装されたモダンなサロンと伝統的な能舞台の対比が面白い

「僕が長年通う下呂温泉『水明館』の離れ『青嵐荘』も小川の流れる庭がいい。庭は水がないとね」と舘さん。2022年に改装されたモダンなサロンと伝統的な能舞台の対比が面白い。

舘さんが背にしているのは、先々代当主が「池のような風呂を」といってつくらせた野天風呂。四季折々の自然が楽しめるよう、周囲に枝垂れ桜や藤、もみじなどが植えられている。

舘さんが背にしているのは、先々代当主が「池のような風呂を」といってつくらせた野天風呂。四季折々の自然が楽しめるよう、周囲に枝垂れ桜や藤、もみじなどが植えられている。

「父が庭で苔を育てていたのでわかるのですが、苔をこれだけ美しく保つのは容易なことではないはず。手入れの行き届いた庭は最高のおもてなしですね」との言葉に、女将の浅羽魅咲さんは「庭師が喜びます」と顔をほころばせます。

2023年の改装で、客室3つを合わせてつくられた「羽衣」。主室、寝室、浴室のいずれからも能舞台「月桂殿」が望める。

2023年の改装で、客室3つを合わせてつくられた「羽衣」。主室、寝室、浴室のいずれからも能舞台「月桂殿」が望める。

舘さんにお茶とお着き菓子をすすめる女将。畳にテーブルのスタイルは外国人や高齢者も快適に過ごせる。

舘さんにお茶とお着き菓子をすすめる女将。畳にテーブルのスタイルは外国人や高齢者も快適に過ごせる。

客室に案内された舘さんが目を留めたのは、両面に紙を張った太鼓張りの障子。

「現代的で上品ですね。部屋を構成しているものすべてが本物で、似つかわしくない材質のものが一切使われていないのもいい。ご当主のセンスなのでしょうね」。と、これは若い頃から建築に関心があるという舘さんらしいご感想。

「羽衣」の半露天風呂。改装により全客室が源泉かけ流しの風呂付きになった。「羽衣」を含む新しい4室には陽光や風を直接肌に感じられるテラスもある。

「羽衣」の半露天風呂。改装により全客室が源泉かけ流しの風呂付きになった。「羽衣」を含む新しい4室には陽光や風を直接肌に感じられるテラスもある。

うろこはパリパリに、脂ののった身は表面だけあぶってレアに仕上げた駿河湾産金目鯛の炭火焼き。丁寧な仕事で素材のおいしさを最大限に引き出す料理は簡素にして贅沢。季節感のある器もご馳走の一部だ。写真は尾形乾山の「残菊」。

うろこはパリパリに、脂ののった身は表面だけあぶってレアに仕上げた駿河湾産金目鯛の炭火焼き。丁寧な仕事で素材のおいしさを最大限に引き出す料理は簡素にして贅沢。季節感のある器もご馳走の一部だ。写真は尾形乾山の「残菊」。


すみずみまで行き届いた名宿の心遣いと美意識に触れ、満足そうに微笑む舘さんでした。

家庭画報が選ぶ“別格”の宿
あさば「おもてなし」の真髄

「代々受け継がれてきたものをよりよい形で次の代に渡したい」── 浅羽魅咲さん

浅羽魅咲(あさば・みさ)
現当主浅羽一秀さんの妻で、おもてなしの中心を担う女将。「先祖が修禅寺でお参りする人に泊まる場所と食事を提供したのが原点。その温かい心を忘れずにおもてなしいたします」。

先代女将に学んだ更新し続けることの大切さ

1489(延徳元)年に浅羽弥九郎幸忠が開いた宿坊に始まり、現在はその子孫である浅羽一秀さん・魅咲さんご夫妻が暖簾を守る温泉宿「あさば」。時代を超えて、国内外から高い評価を得ている名宿の「おもてなし」の真髄を、女将の魅咲さんに伺いました。

重厚な門をくぐった先に待つのは、秋らしい“日月”の暖簾。伊豆大島在住の染色家、菅原 匠の作品で、季節ごとに掛け替えられる。

重厚な門をくぐった先に待つのは、秋らしい“日月”の暖簾。伊豆大島在住の染色家、菅原 匠の作品で、季節ごとに掛け替えられる。

玄関には靴のスムーズな脱ぎ履きを助ける椅子や手すりが用意されている。

玄関には靴のスムーズな脱ぎ履きを助ける椅子や手すりが用意されている。

7年前に他界した先代女将、愛子さんから、魅咲さんが常々いわれていたのは、「当たり前のことを当たり前にすること」。それは、お客様一人一人に合ったおもてなしをすることと、そのために宿全体を常に更新し続けることを意味していました。

教えを守るため、魅咲さんが心がけているのは、お客様の声に敏感であることと、新しいホテルや評判のレストランを訪ねて勉強し、自分の「引き出し」を増やすこと。「先代の女将は『引き出しがあれば、迷ったときもその中からヒントを見つけて答えが出せる』と話していました」と魅咲さん。

現代アートが飾られ、美術書が並ぶサロン。写真右のテラコッタでできた作品は、ご当主と親交のあるアーティスト、李禹煥(リウファン)の作。

現代アートが飾られ、美術書が並ぶサロン。写真右のテラコッタでできた作品は、ご当主と親交のあるアーティスト、李禹煥(リウファン)の作。

絨毯を畳に変えてスリッパをなくし、素足や靴下で過ごせるようにしたのは約10年前。板間や絨毯敷きの部分はスーツケースの運搬用。

絨毯を畳に変えてスリッパをなくし、素足や靴下で過ごせるようにしたのは約10年前。板間や絨毯敷きの部分はスーツケースの運搬用。

椅子席からきれいに見えるよう、床の間を少し高めに、掛け軸の表具と花いけを小さくしたという。写真の掛け軸は酒井抱一の「秋江月影」。

椅子席からきれいに見えるよう、床の間を少し高めに、掛け軸の表具と花いけを小さくしたという。写真の掛け軸は酒井抱一の「秋江月影」。

その先代女将は、能舞台で日本の伝統芸能の公演を行う『修善寺藝術紀行』を発案し、実現した方。新しい挑戦に前向きで、魅咲さん夫妻の代になって変えたこと──スリッパをやめる、エステサロンをつくるなど──にも一切反対しませんでした。

「いいと思うといって、背中を押してくれたことに感謝しています。でも、私たちは今最善だと思っているものが、この先もずっとそうであるとは考えておりません。例えば、現在は、お客様のご要望もあり、寝室にベッド、主室にテーブルと椅子をご用意していますが、いつか、『宿はやっぱりお布団に座卓でしょう』という時代がくるかもしれません。どんなときも、『お客様に心地よく過ごしていただく』という目的さえ見失わずにいれば、あとは、そのとき宿を任された者が一番よいと思う形を選んでいけばいいのだろうと思っています。夫が先祖から受け継ぎ、今だけ自分たちがお預かりしているこの宿を、よりよい形で次の代に渡したい。その一心で、これからも精一杯務めてまいります」。

清々しい笑顔でいいきる魅咲さんの手には、535年の歴史を刻んだ名宿のバトンが握られています。

あさば
住所:静岡県伊豆市修善寺3450-1
TEL:0558(72)7000
料金:1室2名利用で1泊2食付き1名8万2650円~ ご紹介した「羽衣」は同19万2650円~(ともにサービス料込み)
全12室 IN14時30分/OUT11時30分 7歳未満不可(はなれ「天鼓」を除く)。

(次回へ続く。この特集の記事一覧はこちらから>>

※本特集内に記載している料金は原則として1室2名利用時の、1泊朝食付き、または2食付き1名の最低料金です。時期や部屋により宿泊料金は変わります。別途サービス料、入湯税、宿泊税などがかかる場合があります。INはチェックイン時間、OUTはチェックアウト時間を表しています。時期により料理内容が変更になる場合があります。

この記事の掲載号

『家庭画報』2024年10月号

家庭画報 2024年10月号

撮影/阿部 浩 取材・文/清水千佳子 スタイリング/中村抽里 ヘア&メイク/岩淵賀世

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