〔特集〕ミラノデザインウィーク探訪 ミラノサローネとは、「ミラノサローネ国際家具見本市」の通称です。年間わずか6日間の家具の見本市が、組織的には無関係のミラノ市内のデザインイベント「フォーリサローネ(サローネの外)」の活動を促し、「ミラノデザインウィーク」と呼ばれる“世界最高峰のデザインの祭典”を生み出すことになりました。ミラノがなぜ「世界のデザインの首都」になりえたのか。その答えを求めて、世界最大の家具見本市と世界のデザイン潮流を牽引するキーパーソンを探訪。その謎を紐解いていきます。
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【Cassina(カッシーナ】
伝統を今に進化させる革新精神をミラノ市内の本店で発信
ミラノ市内の旗艦店で新作を披露したカッシーナ。その世界観は年々拡大し、8年前にアートディレクターに就任したパトリシア・ウルキオラの手腕を感じさせます。
「カッシーナは今を生きるブランド。歴史を継承し新たな思考哲学で進化する」── パトリシア・ウルキオラ(アートディレクター)
ウルキオラと自身がデザインしたソファ「モンクラウド」。今年はカーブのモジュールを追加発表。すべての新作ソファも含め、再生PET繊維など革新的なサーキュラー素材を採用。ともにコーディネートされたのは、シャルロット・ペリアンによるテーブル「アコルド」。
Patricia Urquiola(パトリシア・ウルキオラ)
スペイン出身。ミラノ工科大学建築学部卒業、恩師のアッキレ・カスティリオーニのアシスタント講師、ヴィコ・マジストレッティなどのもとでの経験を経て2001年ミラノにスタジオを開設。2015年よりカッシーナのアートディレクター。
今年も錚々たるデザイナーによる屋内外家具に加え、小物やラグの新作から、ネリ&フーなど新鋭デザイナーの新作やイームズの名作も扱う照明部門もさらに充実。家具ブランドから総合インテリアブランドへの昇華を遂げたブランドの姿がありました。
「カッシーナは、今を生きるブランド。記憶を継承しながら現代的でよりフレッシュであることがテーマ」と語る彼女は、その革新的指揮で数々の名作を今年も斬新に復刻させました。カルロ・スカルパによるソファ「コルナーロ」や、シャルロット・ペリアンによるテーブル「ターブル・モンパルナス」などです。
カルロ・スカルパが1973年にデザインし今年復刻された「コルナーロ」。幾何学的な輪郭と柔らかいクッションのコントラスト、ボディを囲う彫刻的なフレームが魅力。プロポーションはそのままに高さと奥行きを増し、アームチェアと2人掛けに加え、3人掛けとコーナーソファも発表。
エントランスには、今年20周年を迎えたシャルロット・ペリアンコレクションを祝し復刻された「ターブル・モンパルナス」とマイケル・アナスタシアデスによる新作チェア「フルッツ」が。
印象的なのは、これまで見たことのないそれらの多彩な表情。
「サステナブルな革新的技術と素材はもちろん、生地から色まで複雑な思考と研究を凝らし、より現代的に蘇らせるのです」。
彼女の手にかかると、過去の記憶は軽快な今のアイコンに変貌し、さまざまなヒントを投げかけます。70〜80年代のポストモダニズム的な空気が漂う会場は、まさに伝統と革新のミックス&マッチが新鮮でした。
カッシーナ・イクスシー青山本店
https://www.cassina-ixc.jp(次回へ続く。
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取材協力:ミラノサローネ国際家具見本市
https://www.milanosalone.com/