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「ミラノデザインウィーク」現地特別取材 ミラノはなぜ“世界のデザインの首都”になったのか

2024.07.01

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〔特集〕ミラノデザインウィーク探訪 ミラノサローネとは、「ミラノサローネ国際家具見本市」の通称です。年間わずか6日間の家具の見本市が、組織的には無関係のミラノ市内のデザインイベント「フォーリサローネ(サローネの外)」の活動を促し、「ミラノデザインウィーク」と呼ばれる“世界最高峰のデザインの祭典”を生み出すことになりました。ミラノがなぜ「世界のデザインの首都」になりえたのか。その答えを求めて、世界最大の家具見本市と世界のデザイン潮流を牽引するキーパーソンを探訪。その謎を紐解いていきます。
特集「ミラノデザインウィーク探訪」の記事一覧はこちら>>>

デザインの首都ミラノ ──
市街地全体を生かして行われる世界最高峰の“デザインの祭典”を訪ねて

ロー・フィエラミラノで行われるミラノサローネに対して、市内で行われる新作展示は「フォーリサローネ(サローネの外)」と呼ばれます。フォーリサローネの醍醐味は、普段は入れないミラノ市内の歴史的建造物を生かした華麗な展示が見られることです。

ミラノサローネの会場はミラノ近郊のロー市に建つロー・フィエラミラノ。マッシミリアーノ・フクサス設計。

【ミラノサローネ】【ミラノデザインウィーク】とは?

「ミラノサローネ」は、ミラノサローネ国際家具見本市のこと。2005年よりミラノ近郊のロー市に建設された「ロー・フィエラミラノ」が会場となっている。総敷地面積40万m2を超える東京ドーム9個分の巨大会場で、毎年4月、世界約180カ国から37万人(2024年度)の来場者を迎える世界最大のデザインの祭典。


これに対して、同時期にミラノ市内で行われるデザインイベントは、「フォーリサローネ(サローネの外)」と呼ばれる。この二つを総称し、一般に「ミラノデザインウィーク」と呼ばれている。

パラッツォ・ヴィスコンティで行われた華麗なる「フロス」の新作発表会。フロスは、1962年にイタリアを代表するデザイナー、カスティリオーニ兄弟を中心に設立されたモダン照明のトップブランド。1988年に同社がこのパラッツォで行った国際的デザイナーによる歴史的プレゼンテーションと対比する形式で、マイケル・アナスタシアデス、バーバー・オズガビー、フォルマファンタズマらの新作を発表。上写真は、過去の展示開催年度1988年にちなみ、アキッレ・カスティリオーニが発表した「タラクサカム88」が象徴的に展示されたもの。「タンポポ」の綿毛を連想させる同社を代表する名作。

世界が注視するデザインの街
なぜミラノは世界のデザインの都になりえたのか

ミラノの象徴ドゥオーモ。

「ミラノサローネ国際家具見本市」は1961年、イタリアのトップ家具ブランドがボードメンバーに名を連ねるイタリア家具工業連盟(1945年設立)によって始められました。ミラノが選ばれた要因は、近郊にブリアンツァ地域に代表される、家具の一大生産拠点が集中していたこと。また、ミラノ工科大学などの優れたデザインの教育機関があり、人材が豊富に供給できたことも重要です。

「高級デザイン業界のリーダーとして知られるブリアンツァの企業は、ミラノ工科大学で学んだデザイナーと特別な関係を築いていました。デザイン業界の起業家たちとデザイナーたちのシナジーによって、1960年代から現在に至るまで、モダンデザインにおけるミラノの優位性は強化され続けました」(フレックスフォルム創業家3代目ジュリアーノ・ガリンベルティ氏)。

第62回ミラノサローネ開幕。テープカットには大臣や州知事も参加。2024年は4月16日~21日まで6日間にわたって開催され、来場者は37万人(前回比20パーセント増)、うち国外からは54パーセント。出展数は35か国・1950に及び成功裏に閉幕。© Courtesy Salone del Mobile. Milano

前夜祭ではスカラ座にて開幕を祝うコンサートイベントが開催された。© Diego Ravier

また創造的で美的革新を好むイタリアの国民性と、デザインを基幹産業として捉え、デザイン立国として生きようとする国としての戦略的な思考が、サローネを世界最大の見本市に押し上げる要因ともなりました。

(左より)デザイナーのジョルジオ・アルマーニ氏、ミラノサローネのマリア・ポッロ代表、ミラノ市長ジュゼッペ・サラ氏。ミラノサローネの代表、フォーリサローネで家具を発表するファッションブランドの帝王、市長の構図は、「サローネ」と「フォーリ」が仲よく手を取り、双方をミラノ市長が支援する、という「ミラノデザインウィーク」の構造を象徴するかのよう。マリア代表のソワレはアルマーニ。© Ruggiero Scardigno

期間中、スカラ広場に設置されたデザインキオスクに立ち寄る代表。© Salone del Mobile. Milano

当初、国内のものであったミラノサローネは1967年に国際家具見本市となり、さらに併設の隔年見本市として1974年にエウロクチーナ(キッチン)、1976年にエウロルーチェ(照明)が開催されるなど、その規模、内容を徐々に発展していきます。

90年代に入ると、出展希望業者の総数に対し、会場が追い付かず、「ウェイティング」する企業が増え続けたことから、あぶれたブランドが、店舗や大学、公共の施設など市内各所を発表の場としようとする動きを展開。これが現在のフォーリサローネ(サローネの外)につながります。

フォーリサローネでは、当初より大学施設を活用。

ドイツの水栓金具「GROHE(グローエ)」は、歴史的建造物(パラッツォ・レアーレ)で「GROHE(グローエ) SPA(スパ)」の展示を開催。

近年では、このフォーリサローネでファッションや車など異業種の参入が増え、ブランディングを意識したインスタレーションやブランドの世界観やアイディアを楽しむ体感型の発表が増加。

この一週間が、プロだけでなく、すべてのデザイン愛好家にとっても欠かせないデザイン発信の場「ミラノデザインウィーク」として、広く一般に知れ渡るようになりました。

「ここ20年くらいの間に世界中の企業がデザインの重要性を再認識し、プレゼンテーションの場としてミラノを選ぶようになりました」(タイム&スタイル 吉田龍太郎CEO)

「ミラノで何を発信するのか、トップデザイナーは1年先、2年先のサローネのサイクルに合わせて仕事をしています」(デザイナー深澤直人氏)。

ドイツ「ポーゲンポール」は16世紀の邸宅を舞台に。

「ボッテガ・ヴェネタ」は カッシーナ社とル・コルビュジエ財団とのコラボレーションによるスツールを積み上げたインスタレーション。

デザインの世界では、世界中が注視するデザインの首都ミラノでの発信や評価が、なによりも重要視されるようになっていきました。

家具見本市を基盤にして、いつしか業種の垣根を越え、街全体がデザインの見本市会場に変わっていったミラノ。世界のデザインの潮流は、常にこの街から発信され続けています。

(次回へ続く。この特集の一覧>>

取材協力:ミラノサローネ国際家具見本市 https://www.milanosalone.com/

この記事の掲載号

『家庭画報』2024年07月号

家庭画報 2024年07月号

Photo/Leo Pellegatta Coordination/Kayo Tokunaga

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