エンターテインメント

役者としてのスタートラインに立つ思い。福士蒼汰さんが挑む映画『湖の女たち』

2024.05.20

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今月の人 福士蒼汰さん

2023年は、NHKのドラマ『大奥』での、柔らかな物腰の中に気品と知性と芯の強さが滲む、万里小路有功(までのこうじありこと)役が評判に。

続編に別の役で再登板するなど、着実に役の幅を広げている福士蒼汰さんが、吉田修一氏の同名の小説を映画化した『湖の女たち』でさらなる新境地に挑んでいます。

鬱屈した人間をディープに生々しく描く

物語は、琵琶湖に近い介護療養施設で起きた不審死を捜査する刑事の濱中圭介(福士さん)と、聴取を受けた介護士の豊田佳代(松本まりかさん)が、精神的に追い詰められる中でインモラルな関係に堕ちていくというもの。そこに17年前の薬害事件や、旧満州での出来事が絡んでいくヒューマンミステリーです。

「圭介は、何かの枠組みの中に自分が入ってしまいそうなのが怖くて、佳代に欲望のままの自分をぶつけていくのですが、そんな気持ちを表現することが新鮮で。鬱屈した人間をディープに描く作品自体、僕はあまり経験がなかったので、この作品を通して、役者としてのスタートラインにようやく立ったような気持ちです。試写を観たときも、今までは役の中に自分を見てしまうところがあったのですが、圭介に関しては自分とは別の人間がそこにいる感じがして。スクリーンに映る自分が存在する意味みたいなものが、初めてわかったような気がしました」


圭介の苛立ちや激情、やるせなさを、生々しく表現している福士さん。撮影では「何も考えず、そこに圭介として存在すること」だけを意識したといいます。

「頭を使ってお芝居をした瞬間、大森立嗣監督に見抜かれてしまうので、すごく刺激的な時間でした。でも、それもまた楽しくて」。琵琶湖の北側の集落に泊まり込んで撮影する中で、言葉も自然に滋賀弁になっていったそうです。

「不思議な体験でした。琵琶湖も毎日見ていたのですが、海みたいな壮大さと迫力があるのに、どこにも逃げ道がなくて、時や物事が溜まっていくような印象があって。実際、底を掘ると、何十年とか何百年も前のものが出てくるそうです。そこに、“歴史が堆積していく”という、海や川では表せない『湖の女たち』のテーマがあるのだなと感じました」

「やりたいことはたくさんあるのに体が一つしかないのが辛いところです」──福士さん

「こういった作品に、できれば続けてもう一本挑戦してみたい」と話す福士さん。一方で、身体能力も抜群の彼は、「もちろん、アクション作品も大好きです」と爽やかな笑顔を見せます。

「格闘技は定期的に習っています。英語の勉強もずっと続けていて、今はほかの言語も学んでいます。どれも好きでやっていることですが、役者は何をしても仕事の糧になるのでラッキーだなと。やりたいことはたくさんあるのに、体が一つしかないのが辛いところです(笑)」

家族と一緒に過ごす時間やその笑顔に支えられて

2023年『THE HEAD』Season2で、待望の海外ドラマ初出演も果たした30歳の息抜きは、友達と食事に行くことや、家族と一緒に過ごす時間だそう。

「僕は家族がとても大切で。両親と2人の姉がいるのですが、みんなの笑顔を見るとすごくほっとするし、素直な気持ちになります。圭介ほどではないですが、僕にもプレッシャーに押し潰されそうになったり、心が折れそうになったりすることがあって。家族の笑顔は、そういうときの支えにもなっています」

衣装協力/エンポリオ アルマーニ(ジョルジオ アルマーニ ジャパン)

憧れの俳優像は?と尋ねると「今は3つあります」と福士さん。「一つは今回ご一緒した浅野忠信さんのように、心を無にしてお芝居ができる役者。もう一つは岡田准一さんのように、武術が使えるストイックな役者。あと一つは早乙女太一さんのように、魅せる殺陣ができる役者です」。衣装協力/エンポリオ アルマーニ(ジョルジオ アルマーニ ジャパン)

そんな福士さんの目標は、やはり「国や人種を超えて、どこでもお芝居ができる人」。演出にも興味があるようです。

「この間、俳優がショートフィルムを撮るWОWОWさんの企画で初めて脚本・監督をさせていただき、演出する面白さを実感しました。前から興味があったので、いい機会をいただけて感謝しています。ぜひまたやってみたいです」

福士蒼汰(ふくし・そうた)
1993年、東京都生まれ。2011年に俳優デビュー。映像作品を中心に活躍し、最近の主な主演作は、連続ドラマ『弁護士ソドム』『アイのない恋人たち』など。海外デビュー作となったドラマ『THEHEAD』Season2がHuluで配信中。また、WOWOW放送・配信のアクターズ・ショート・フィルム4『イツキトミワ』で、初めて脚本・監督を手がけている。

『湖の女たち』

ⓒ 2024 映画「湖の女たち」製作委員会

ⓒ 2024 映画「湖の女たち」製作委員会

琵琶湖に程近い介護療養施設で、100歳の入所者が人工呼吸器の停止によって死亡した。西湖署の若手刑事・濱中圭介(福士蒼汰)とベテランの伊佐美佑(浅野忠信)は殺人事件と断定し、豊田佳代(松本まりか)ら当直の介護士と看護師に執拗に事情聴取を行っていくが......。

原作/吉田修一『湖の女たち』(新潮文庫刊)
監督・脚本/大森立嗣
出演/福士蒼汰、松本まりか、福地桃子、財前直見、浅野忠信ほか
URL/https://thewomeninthelakes.jp/
全国公開中

この記事の掲載号

『家庭画報』2024年06月号

家庭画報 2024年06月号

撮影/筒井義昭 スタイリング/髙橋美咲〈Sadalsuud〉 ヘア&メイク/矢澤睦美〈wani〉 取材・文/岡﨑 香

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