〔特集〕20世紀&21世紀にグルマンを魅了 世界のスーパーシェフ列伝 美食は時代を映す鏡──。フランス料理を起点に、卓越した才能で各時代を牽引したスーパーシェフたちの功績と美食界の進化を辿る旅へとご案内します。
前回の記事はこちら>>・特集「世界のスーパーシェフ列伝」の記事一覧はこちらから>>
【1970年代~】
ポール・ボキューズ
伝統的なフランス料理とは異なる「ヌーヴェル・キュイジーヌ」の幕開け時は流れ第二次世界大戦後、人々の生活は飛躍的に便利に。さらに1960年代以降は、五月革命(1968年)など、既存の価値観への反発が社会のあちこちで発露されるようになります。
料理においても、過度な油脂や飾りは避けられるように。ポール・ボキューズなどの新世代のシェフが、上質で新鮮な素材をシンプルに生かす、健康的な美食を推し進めました。1969年には、彼らを後押しする食の雑誌『ゴー・ミヨー』を、ジャーナリストのアンリ・ゴーとクリスチャン・ミヨーが創刊。新潮流の料理の特徴を整理した「ヌーヴェル・キュイジーヌ宣言」を誌上で発信しました。
その項目は、「料理の簡素化」「軽さの追求」「新テクノロジーの活用」「絶えざる創造」など。フランス料理は時代に即して生まれ変わり、活気に溢れるようになりました。

〔1960年代日本では?〕
高度経済成長が続く。ピエール・トロワグロ総料理長の「マキシム・ド・パリ」をはじめ、「レンガ屋」「レジャンス」など、フランスから料理長や顧問を招いた本格的フランス料理店が複数登場。
フランス料理界の「法王」。時代を牽引した唯一無二の巨匠ポール・ボキューズ (1926~2018)リヨン近郊で料理人の家庭に生まれる。第二次世界大戦従軍を経て地元やパリの名店で修業し、フェルナン・ポワン(
こちらの記事参照>>)からとりわけ強い薫陶を受ける。1959年に家業を継ぎ、1965年に3つ星を獲得。以降50年以上守り抜く。圧倒的なカリスマ性でフランス国内はもとより、世界でも存在感を発揮し、「法王」「フランス料理の大使」などと呼ばれた。日本でも1960年代に提携店の技術指導を行うなど、日本のフランス料理の発展にも大きく寄与。
【主な弟子】
渋谷圭紀(大阪「ラ・ベカス」)、エミール・ユン(アルザス「ル クロコディル」)
(次回に続く。
この特集の記事一覧はこちらから>>)