ジュエリー見聞録 5月 宝石史研究家・山口 遼さんの解説で、素晴らしいジュエリーとその見どころをお届けします。
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パヴェが上手い!とうなる技術
解説/山口 遼(宝石史研究家)
人や動物、さらには物を褒める言葉はたくさんあります。美しい、綺麗、珍しい、見たことがない、などいろいろですが、われわれ日本人が最もよく使うのが、「かわいい」という言葉ではないでしょうか。特に女性は「かわいい」が大好きだと思います。「かわいい」は海を越え、もはや「KAWAII」として万国共通の褒め言葉となっています。
今月のジュエリーは「ショパール」の最新作、レッサーパンダの指輪です。両手を前で合わせて黒いしっぽを摑んでおり、キョトンとした表情がなんともかわいい。パンダと名前がついていますが、あの白黒のパンダとは別の種らしく、おもにヒマラヤ山系の諸国に住んでいる保護動物です。
ショパールはこの小動物のかわいさを表現するために、カラーダイヤモンドを含むダイヤモンドで全身を埋め尽くす、パヴェと呼ばれる技法を採用しました。総数は1000個を超えます。いちばん多いのはコニャック色のダイヤモンド、それに白と黒のダイヤモンドを加えて、ブラウンを少し。目だけはサファイアを使っています。地金はローズゴールドですが、ほとんど見えません。表面がこれほどに湾曲した面にダイヤモンドを密集させるのは大変な技術が必要で、パヴェが上手い!と、うならせるものがあります。その結果、実にかわいい、見事な指輪ができあがったのです。日本文化を体現した、日本女性の心を鷲摑みするようなジュエリーですね。
キュートな愛らしさが光るジャパンビスポークの煌めき野生のレッサーパンダは生息数が1万頭を下回る希少な生物。また、古代中国では「幸運」と「繁栄」を象徴する存在だそう。8名の職人が約8か月の製作期間を要し、緻密に作り上げた完璧なプロポーションが、この上ない愛らしさを物語ります。リング(RG×コニャックダイヤモンド計7.39ct×ブラックダイヤモンド計6.03ct×ブラウンダイヤモンド×ダイヤモンド×サファイア)2085万6000円(参考価格)/ショパール
●お問い合わせ/ショパール ジャパン プレス TEL:03(5524)8922