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建物の内装から神父の上祭服まで! 礼拝堂に満ちるマティスのクリエイション(連載第12回)

2024.03.26

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「マティス 自由なフォルム」展がもっと楽しくなる短期集中連載。

5月27日まで国立新美術館で開催されている「マティス 自由なフォルム」展。“色彩の魔術師”と形容されるアンリ・マティス(1869〜1954)が後半生に取り組んだ「切り紙絵」の作品を中心に、これまでとは異なる視点で紹介される、とてもユニークで貴重な展覧会です。大きなサイズの作品や大掛かりな展示も圧巻。作品の見どころを、美術展プロデューサーの今津京子さんが解説します。連載一覧はこちら>>

第12回 《白色のカズラ(上祭服)のためのマケット(正面)》「マティス 自由なフォルム」

文/今津京子(美術展プロデューサー)

マティスはヴァンスのロザリオ礼拝堂内部の装飾とステンドグラスだけでなく、礼拝堂のあらゆるオブジェも制作します。祭壇の上の十字架、燭台、天井から吊り下がるランプなど、いわば空間すべてを作ったのです。

アンリ・マティス《白色のカズラ(上祭服)のためのマケット(正面)》1950-1952年 切り紙絵 126.5×196.5cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez

ミサで使われる小物も同様で、神父が着用する上祭服、頚垂帯(けいすいたい)、腕帛(わんぱく)、そして祭壇に置いて使用する聖杯用覆布と聖体布入れを一式として色の異なる6つのシリーズが制作され、今でもミサの際に使われています。 展覧会では5種の色のシリーズを展示。色は宗教儀式によって定められており、この白のシリーズは、クリスマス、復活祭、キリストの昇天日、そして聖母マリアの祝祭日という重要な儀式に使用されるものです。


マティスがデザインした祭服。季節や祝日によって6種類あり、それぞれ2着ずつを礼拝用、展示用としている。6着の中には葬儀用の黒い式服も含まれる。写真はエピファニー(顕現祭もしくは公現祭)に着用するもの。

薔薇色に見えますが紫色のシリーズの上祭服で、待降節(クリスマス前)と四旬節(復活祭前)の時期に使用するもの。人間による動きのあるオブジェが加わることで、ステンドグラスなどの内装とともにより一体感のある空間を作り出します。撮影/小野祐次


マティス 自由なフォルム
国立新美術館 企画展示室 2E(東京都港区六本木7-22-2)
会期:2024年2月14日(水)~5月27日(月)
開館時間:10時~18時 ※毎週金・土曜日は20時まで(入場は閉館の30分前まで)
休館日:毎週火曜日 ※4月30日は開館
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
観覧料:一般2200円ほか
展覧会ホームページ:https://matisse2024.jp
 
今津京子/Kyoko Imazu
撮影/小野裕次

撮影/小野裕次

美術展プロデューサー。パリをベースに、今回の「マティス 自由なフォルム」、「ルーヴル美術館展 愛を描く」(2023年)、「ガブリエル・シャネル展 Manifeste de Mode」(2022年)、「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」(2020年)など、40年にわたり数十を超える大型展覧会の企画に携わる。日仏英の3か国語を操り、美術、ファッションなどの分野でジャーナリストとしても活動。音楽、演劇、料理、アンティークなどアール・ド・ヴィーヴルをこよなく愛する。

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