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肖像画のように描かれた“椅子”。マティスがこだわり、集めた調度品にも注目を(連載第7回)

2024.03.19

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「マティス 自由なフォルム」展がもっと楽しくなる短期集中連載。

5月27日まで国立新美術館で開催されている「マティス 自由なフォルム」展。マティスが後半生に取り組んだ「切り紙絵」の作品を中心に、これまでとは異なる視点で紹介される、とてもユニークで貴重な展覧会です。大きなサイズの作品や大掛かりな展示も圧巻。作品の見どころを、美術展プロデューサーの今津京子さんが解説します。連載一覧はこちら>>

第7回 《ロカイユ様式の肘掛け椅子》「マティス 自由なフォルム」

文/今津京子(美術展プロデューサー)

マティスのアトリエは、世界中の多様な文化のオブジェで溢れていました。異国情緒あふれるこれらの調度品は、作品を構成するものとしてしばしば画面に登場します。

《ヴェネツィアの肘掛け椅子》ドイツあるいはイタリア、19世紀 針葉樹の木、彩色による装飾、釉を塗った銀めっき、金めっき 89×55×74cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez

このロカイユ様式の肘掛椅子は、オブジェのコレクションの中でも特に重要なもの。1942年、ニースの骨董屋で購入した2脚の椅子と小さな丸テーブルのセットの一つです。ロカイユ様式とは、非常に曲線の多い、しばしば自然をモチーフにした18~19世紀にフランスで発祥したスタイルでヨーロッパに広がってゆきます。


アンリ・マティス《ロカイユ様式の肘掛け椅子》1946年 油彩/カンヴァス 92×73cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez

この様式の家具をマティスは長らく探していたようで、見つけた時の喜びを友人に記しているほど。そして、その椅子をまるで肖像画のように描きました。展覧会では椅子と絵画の両方が出品されています。

マティス 自由なフォルム
国立新美術館 企画展示室 2E(東京都港区六本木7-22-2)
会期:2024年2月14日(水)~5月27日(月)
開館時間:10時~18時 ※毎週金・土曜日は20時まで(入場は閉館の30分前まで)
休館日:毎週火曜日 ※4月30日は開館
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
観覧料:一般2200円ほか
展覧会ホームページ:https://matisse2024.jp
 
今津京子/Kyoko Imazu
撮影/小野裕次

撮影/小野裕次

美術展プロデューサー。パリをベースに、今回の「マティス 自由なフォルム」、「ルーヴル美術館展 愛を描く」(2023年)、「ガブリエル・シャネル展 Manifeste de Mode」(2022年)、「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」(2020年)など、40年にわたり数十を超える大型展覧会の企画に携わる。日仏英の3か国語を操り、美術、ファッションなどの分野でジャーナリストとしても活動。音楽、演劇、料理、アンティークなどアール・ド・ヴィーヴルをこよなく愛する。

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