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匂いたつ香水箱 唯一無二の美〔香川漆芸 × アンリ・ジャック〕日本とフランス、感性のマリアージュ

2024.03.04 | PR

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〔香川漆芸 × アンリ・ジャック〕日本とフランス、感性のマリアージュ

江戸時代から受け継がれる独自の技法と豊かな色彩で名高い「香川漆芸」。日本が世界に誇るその伝統工芸の作家たちが今回コラボレーションしたのは、フランスの最高級香水メゾン「アンリ・ジャック」です。

オーダーメイドの香水作りから始まった「アンリ・ジャック」は、世界中から集めた貴重な天然原料を用いて伝統的な製法で作る香水はもとより、ボトルやボックスの芸術的な美しさでも知られています。

「香川の三技法」の一つ、「蒟醤(きんま)」の重要無形文化財保持者(人間国宝)の山下義人さんを中心とした香川漆芸チームが挑んだのは、「アンリ・ジャック」が4月に日本限定で発売する新しい香水「ユイブラン」と「ナギオア」のための香水箱の制作。日本とフランスの異なる感性のマリアージュから、世界に二つとない、匂いたつような5つの香水箱が誕生しました。

愛らしい梅の花が黒漆に映えて。心華やぐ香りの宝箱「紅梅白梅」

左/「紅梅白梅」 端正な五角形の箱の天面中央に輝くのは「アンリ・ジャック」のロゴ。金蒔絵をシルクスクリーンで何層にも重ね、立体感を出している。朱漆と白漆、金蒔絵で描かれた吉祥文様の梅はのびやかで愛らしい。箱背面の花の一部に「香川の三技法」の一つ「存ぞん清(ぞんせい)」を使用。香水箱(縦15×横16×高さ11cm)+アンリ・ジャック日本限定香水「ユイブラン」「ナギオア」(各30㎖)2本セット297万円(予定価格、限定1点)/アンリ・ジャック(アンリ・ジャック 銀座)

右/「アンリ・ジャック」の新しい日本限定香水 メゾンのレシピ約3000種の中から日本向けに新たに選ばれた香水は2つ。上・「ユイブラン」(フローラル/フルーティ)はジャスミンなど白い花を多く用いた香りが爽やか。名前は漢字の「結」とフランス語で白を意味する「ブラン」に由来。下・「ナギオア」(フルーティ/フローラル )はトップノートがマンダリンやプラムで甘く華やかな香り。名前は漢字の「凪」とフランス語でゴールドを意味する「オア」に由来する。

一輪ずつ表情の異なる菊がまさに爛漫。日本情緒あふれる印籠型「菊花爛漫」

[香川漆芸]×[アンリ・ジャック

江戸時代に薬入れとして流行した印籠型の箱は「アンリ・ジャック」たっての希望で実現したもの。シックな色彩で手描きされた菊の花は159輪。2輪だけ「存清」の技法を用いた花が興趣を添えている。緒締玉に用いているのは「香川の三技法」の一つ「彫漆(しょうしつ)」。香水箱(縦8×横13×高さ13.5cm)+アンリ・ジャック日本限定香水「ユイブラン」「ナギオア」(各15ml)2本セット253万円(予定価格、限定1点)/アンリ・ジャック(アンリ・ジャック 銀座)

大海原を悠々と渡る タンチョウヅルは長寿の象徴「飛翔」

大海原を悠々と渡る タンチョウヅルは長寿の象徴 飛翔

雄々しく翼を広げるのは日本の特別天然記念物のタンチョウヅル。 蓋の背面にも1羽飛んでおり、全部で3羽。波立つ海は黒漆に木綿豆腐を加えて練ったもので描く「絞漆(しぼうるし)」の技法で表現している。羽の一 部に「存清」、約15色の漆からなるカラフルな緒締玉に「彫漆」の技法を使用。香水箱(縦8×横13×高さ13.5cm)+アンリ・ジャック日本限定香水「ユイブラン」「ナギオア」(各15ml)2本セット253万円(予定 価格、限定1点)/アンリ・ジャック(アンリ・ジャック 銀座)

鮮やかな色彩、独創的なフォルムに大輪の牡丹の花と蝶が遊んで「牡丹」

鮮やかな色彩、独創的なフォルムに大輪の牡丹の花と蝶が遊んで「牡丹」

緑漆、朱漆ともにパール粉を練り込んであり、上品に煌めく。「花のような形の箱は木製品加工の高い技術を持つ『Mokuichi』さんの作。5点の木地すべてをお願いしました」と山下さん。牡丹の花と蝶はシルクスクリーンと手描きで表現し、蝶2匹に「存清」の技法を使用。香水箱(横15×縦16×高さ11cm)+アンリ・ジャック日本限定香水「ユイブラン」「ナギオア」(各30㎖)2本セット297万円(予定価格、限定1点)/アンリ・ジャック(アンリ・ジャック 銀座) 


5つの香水のために誕生した風格ある長持風香水箱「有職文(ゆうそくもん)」

5つの香水のために誕生した風格ある長持風香水箱「有職文(ゆうそくもん)」

ササン朝ペルシャ発祥の「有職文様」と、中国西域から伝わる「繧繝彩色(うんげんさいしき)」(同系色の濃淡による色のぼかし)」に想を得た文様は桔梗がモチーフ。花の一部に「存清」の技法を使用。家紋風の藤の花で装飾された「アンリ・ジャック」のロゴも目を引く。香水箱(縦11×横30×高さ10cm)+アンリ・ジャック日本限定香水「ナギオア」「ユイブラン」「ムスクオイルロワサンゼキパージュ」「デシベリア」「タンドレス ドゥ アンリ・ジャック」(各15ml)5本セット363万円(予定価格、限定1点)/アンリ・ジャック(アンリ・ジャック 銀座)

手前「アンリ・ジャック」日本限定の香水5種類
右から、5月発売の新作「ナギオア」、「ユイブラン」、2022年発売の「ムスクオイルロワサンゼキパージュ」(ムスキー/フゼア-タバコ)、「デシベリア」(フローラル/グリーン)、「タンドレス ドゥ アンリ・ジャック」(フローラル/スパイシー)。世界で10店舗目に開店した銀座のブティックで香りを比べてみたい。

アンリ・ジャックと香川漆芸による世界に一つの香水箱

本物を知る人々から高い評価を得ているフランスの香水メゾン「アンリ・ジャック」と日本の香川漆芸。そのコラボレーションは2つの国をオンラインで繫いだミーティングで幕を開けました。

「アンリ・ジャック」からは創業者夫妻の長女でCEOのアナリズ・クレモナさんとアーティスティックディレクターのクリストフ・トレメールさんらが参加。日本の伝統工芸とのコラボレーションへの並々ならぬ熱意が伝わりました。アーティスティックディレクターのクリストフ・トレメールさん。

アーティスティックディレクターのクリストフ・トレメールさん。

1951年香川県生まれ。 2007年紫綬褒章、21年 旭日小綬章受章。13年重 要無形文化財「蒟醤」保持 者(人間国宝)認定。左は 22年の作「玉藻城蒟醤水 指」。玉藻城(高松城)の 松がモチーフ。

人間国宝 山下義人さん●1951年香川県生まれ。 2007年紫綬褒章、21年 旭日小綬章受章。13年重要無形文化財「蒟醤」保持者(人間国宝)認定。

ともに高い美意識とクラフツマンシップへのリスペクトを持ちながらも、香水箱作りは順風満帆とはいきませんでした。「アンリ・ジャック」の芸術面を担うトレメールさんが、漆をはじめとする日本の伝統文化に強い関心を持っており、その
分、リクエストが多岐にわたったのが一因です。

それはもちろん、「この貴重な機会に最高のものを」という情熱の表れでしたが、香川漆芸側にとっては、びっくりするようなこともしばしば。最たるものが空間に対する感性の違いでした。

「私は日本人なので、空間を大切にしたい、空気を表現したいという美意識があり、そういう作品を作っています。でも、フランスの人の美意識は違うんですね。トレメールさんのご希望に応えて、『菊花爛漫』は全面を菊の花で埋め尽くし、『飛翔』の鶴は当初の予定より大きめに描きました。もっとも、菊はところどころ隙間を作りましたけどね(笑)。新しい試みの連続でした」と山下さん。

一方で、「アンリ・ジャック」側も、「これは日本の人から見てもおかしくないか?」と確認するなど、日本側の意見を尊重することも忘れませんでした。「家紋の柄のものを作ってほしい」とリクエストした際には、「ほかの家の家紋の入ったものは使いにくいので、『家紋風』のオリジナルの文様にしてはどうか」という香川漆芸側の提案に賛同。「有職文」が誕生しました。 

互いの感性の違いを認め合い、少しずつ歩み寄ったことで完成した、新しくて美しい香水箱5点。2024年3月1日に東京・銀座の「アンリ・ジャック 銀座」でお披露目されます。
「クリスタルガラスの香水瓶 を収める台座は対照的な質感 のほうが合うと思い、マット な漆にしました」と山下さん。

「クリスタルガラスの香水瓶を収める台座は対照的な質感のほうが合うと思い、マットな漆にしました」と山下さん。


・南フランスのプロヴァンスにある「アンリ・ジャック」のラボラトリー。伝統的な 製法で作られる香水は香料濃度約100%。

南フランスのプロヴァンスにある「アンリ・ジャック」のラボラトリー。伝統的な製法で作られる香水は香料濃度約100%。
香水瓶は吹きガラスによる手作り。

香水瓶は吹きガラスによる手作り。

2023年4月に オープンした銀座並木通りの「アンリ・ジャック 銀座」。●掲載の香水箱と香水のセッ ト5種類(各限定1点)は4月末まで銀座店に展示され、購入希望の申し込みを受け付けま す。希望者が複数の場合は抽選により当選者を決定し、5月以降にお届けの予定です。

2023年4月に オープンした銀座並木通りの「アンリ・ジャック 銀座」。

●今回ご紹介した香水箱と香水のセッ ト5種類(各限定1点)は2024年4月末まで「アンリ・ジャック 銀座」に展示され、購入希望の申し込みを受け付けます。希望者が複数の場合は抽選により当選者を決定し、5月以降にお届けの予定です。

香川の三技法

蒟醤(きんま)

漆を塗り重ね、蒟醤剣で文様を彫る。彫った溝に色漆を埋め、表面を平らに研いで余分な色漆を取り除き、文様を表現する。磯井如真「蒟醤喰籠遊禽之図」(撮影/高橋 章)

漆を塗り重ね、蒟醤剣で文様を彫る。彫った溝に色漆を埋め、表面を平らに研いで余分な色漆を取り除き、文様を表現する。磯井如真「蒟醤喰籠遊禽之図」(撮影/高橋 章)


存清(ぞんせい)漆を塗り重ねた器物に色漆で 文様を描く。剣で輪郭や細部 に線彫りを施したり、沈金をするなどして文様を引き立たせる。香川宗石「讃岐存清香盆」(撮影/高橋 章)

漆を塗り重ねた器物に色漆で文様を描く。剣で輪郭や細部 に線彫りを施したり、沈金をするなどして文様を引き立たせる。香川宗石「讃岐存清香盆」(撮影/高橋 章)


彫漆(ちょうしつ)

各種の色漆を数十回から数百回塗り重ね、その色漆の層を彫り下げることで文様を浮き 彫りにする。玉楮象谷「紅花緑葉饌盒」(撮影/髙橋 章) 香川県立ミュージアム蔵

各種の色漆を数十回から数百回塗り重ね、その色漆の層を彫り下げることで文様を浮き 彫りにする。玉楮象谷「紅花緑葉饌盒」(撮影/髙橋 章) 香川県立ミュージアム蔵


左は 22年の作「玉藻城蒟醤水 指」。玉藻城(高松城)の 松がモチーフ。

人間国宝 山下義人さん22年の作「玉藻城蒟醤水指」。玉藻城(高松城)の 松がモチーフ。

 シルクスク リーンを中心に制作全般に携わった山下亨人さん。

シルクスク リーンを中心に制作全般に携わった山下亨人さん。

左・「菊花爛漫」と「飛翔」の緒締玉を 「彫漆」の技法で制作した松原弘明さん。右・シルクスクリーンのデータ作成などを担当 した出渕光一さん。

左・「菊花爛漫」と「飛翔」の緒締玉を 「彫漆」の技法で制作した松原弘明さん。右・シルクスクリーンのデータ作成などを担当した出渕光一さん。


極細の筆を巧みに操り、「紅梅白梅」の花のしべを描く 山下さん。気が遠くなるような根気と集中力を要する工程。 中・「アンリ・ジャック」から預かった香水瓶を使って、台 座にきれいに収まるかを確認する。下・「有職文」の加飾に は8色もの色漆が使われた。1色塗るごとに1時間は乾燥さ せる必要があるため、色が多いほど制作に時間がかかる。

極細の筆を巧みに操り、「紅梅白梅」の花のしべを描く山下義人さん。気が遠くなるような根気と集中力を要する工程。

極細の筆を巧みに操り、「紅梅白梅」の花のしべを描く 山下さん。気が遠くなるような根気と集中力を要する工程。 中・「アンリ・ジャック」から預かった香水瓶を使って、台 座にきれいに収まるかを確認する。下・「有職文」の加飾に は8色もの色漆が使われた。1色塗るごとに1時間は乾燥さ せる必要があるため、色が多いほど制作に時間がかかる。

「アンリ・ジャック」から預かった香水瓶を使って、台 座にきれいに収まるかを確認する。

極細の筆を巧みに操り、「紅梅白梅」の花のしべを描く 山下さん。気が遠くなるような根気と集中力を要する工程。 中・「アンリ・ジャック」から預かった香水瓶を使って、台 座にきれいに収まるかを確認する。下・「有職文」の加飾に は8色もの色漆が使われた。1色塗るごとに1時間は乾燥さ せる必要があるため、色が多いほど制作に時間がかかる。

「有職文」の加飾には8色もの色漆が使われた。1色塗るごとに1時間は乾燥させる必要があるため、色が多いほど制作に時間がかかる。



お問い合わせ/アンリ・ジャック 銀座 
電話 03(3289)0068

撮影/Fumito Shibasaki〈Donna〉(静物) 福家大介〈福家スタジオ〉(香川取材) スタイリング/阿部美恵(静物) 取材・文/清水千佳子 『家庭画報』2024年4月号掲載。

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