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漆器に宿る匠の技。土地に根差すさまざまな技法から漆芸の奥深さを知る

2024.02.22

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〔特集〕第58回全国漆器展の受賞作品から 漆器に宿る匠の技 2023年秋に開催された第58回全国漆器展。美術工芸品部門、産業工芸品部門で2作品が家庭画報賞を受賞しました。その他の受賞作品も含め、今回は「日本の漆芸技法」に着目し、高度な匠の技が発揮された美しい漆器の魅力に迫ります。
令和6年1月の能登半島地震により被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
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特集「漆器に宿る匠の技」の記事一覧はこちら>>

日本の漆器の「多彩な技法」を知る

日本各地の漆器産地には、その土地に根差した技法が今に受け継がれています。全国漆器展の受賞作品に、日本独自の高度な漆芸技術の魅力を探ります。

・象谷塗 後藤塗

経済産業大臣賞
「香川漆器 漆下駄『Siccok』」一和堂工芸(香川漆器)

手前2点が後藤塗、奥が象谷(ぞうこく)塗。下駄は、国産桐で製作されるさぬき市志度産。漆塗りは、一和堂工芸。側面は、摺漆塗で桐の木目を生かす。本来の後藤塗の色が一番手前の下駄の色。使用するに従い透明感が増していく。

使うほどに深みと艶やかさを増すモダンな漆下駄

存清(ぞんせい)、蒟醬(きんま)、彫漆(ちょうしつ)など優雅な色漆が美しい香川漆器。その始祖・玉楮(たまかじ)象谷は、他に類を見ない技法を編み出した才人です。

象谷塗では、数回重ね塗りをして、川や池に群生する真菰(まこも)の粉末を蒔く方法で、独特の渋みと陰影を増す味わいを得ました。

後藤塗の考案者、後藤太平もまた風流人。なんと塗漆面についた塵に妙味を感じて、髹漆(きゅうしつ)法を創案。朱の濃淡で二十数回塗り重ね、指頭で漆を叩いたり撫でたり。細かく斑紋が生じた独特な表現を完成させました。

讃岐の朱(あか)塗と呼ばれる艶やかな塗りを桐下駄にとプロデュースしたのは、和装のオリジナル商品を企画する「nodo88」の片岡由美子さん。漆黒のような輝きをもつ漆下駄が四国で作られたという意味を込め「Siccok(シッコック)」と、名づけています。

左は象谷塗だが、手揉みの土佐和紙を貼って塗りを施しているので独特な風合い。右は後藤塗。朱を使わず、白漆塗りなのでマロン色に。

香川漆器 漆下駄「Siccok」
一和堂工芸(香川漆器)
長さ23.5×踵高5.5センチ(Mサイズ) 
長さ24.5×踵高5.5センチ(Lサイズ) 各4万260円
住所:東京都渋谷区本町3-52-6-701
TEL:03(6336)0379(nodo88/ノード・オッタントット)

・乾漆
林野庁長官賞
「乾漆 鮫皮塗コンポート」橘漆工芸(江戸漆器)

鮫皮塗といわれる技法は、剣道具の胴に使われている。丈夫なうえ独特の意匠をもつことに魅せられて挑戦。白い大小の水玉部分は骨。

硬い鮫皮を貼り、研ぎ出した迫力あるコンポート

大きなコンポートですが、あれっと思うほど軽やかです。乾漆で整形されているからです。

乾漆は、粘土で型を作り石膏を流し、漆と麻布を積層して固まった形が素地。この器には、5~6枚の麻布を重ねています。乾漆には軽量かつ変形や割れが少ないという利点があります。奈良の阿修羅像なども乾漆です。

「轆轤(ろくろ)だと木地を頼まないといけないけれど、乾漆は思い描いた形が自分でできるからいい。でも何しろ手間がかかるんだけど」と作者の大上 博さん。

さらに器部分には鮫皮(実際はエイ皮)を貼っています。鮫皮は剣道具や上等の刀の柄に用いられているので、乾漆に合わせることを試みたものの、伸び縮みしない皮を貼るのはひと苦労だったとか。

漆で埋めると、骨の部分が白い水玉のように現れました。外周の花びらには銀と黒塗りを研ぎ出すなど、凝りに凝ったコンポートです。

脚は木製。欅を轆轤で挽いて形を造り、乾漆で作られた器に接着している。エイの皮の接着には麦漆と呼ばれる接着用の漆を使っている。

乾漆 鮫皮塗コンポート
橘漆工芸(江戸漆器)
径35×高さ11センチ 60万5000円
住所:埼玉県八潮市緑町3-26-25 
TEL:048(996)6988

・沈金(ちんきん)
日本経済新聞社賞
「万華鏡 入子重」松原紗霧(越前漆器)

精緻な模様が美しい二段の入れ子重

「鏡のように対称になってキラキラ輝く万華鏡をイメージしました」と松原紗霧さん。

麻の葉模様の菱形一つずつに、ぎっしり放射状に彫り込まれた精緻な羊歯(しだ)模様。繊細な極細の線による沈金で見事に埋め尽くされています。

漆で模様を描いた上に金や銀の細粉を蒔く蒔絵に対して、沈金は、刃物を使って線や点を彫ってそこに漆を摺り込んで金箔を埋め込む技法。彫り込んだ線に金を沈めるというわけです。

絵型を転写して彫り込みますが、「溝の角度や強弱の力加減が難しい」といいます。沈金一筋に学んできた松原さんならではの鮮やかな表現といえます。

六角形の入れ子重で、下段が小さいので収納時には一段になる。素地は木粉とメラミン樹脂の成形。冷蔵庫にも入れられて使いやすい。

万華鏡 入子重
松原紗霧(越前漆器)
17.5×15.5×高さ12センチ 11万円
住所:福井県鯖江市河和田町21-4 
TEL:0778(65)0011(丸山久右衛門商店)
数量限定で家庭画報ショッピングサロンで販売中。 https://shop.sekaibunka.com

・蒔絵(まきえ)
商工組合中央金庫社長賞
「ジュエリーボックス 朱 青」中門漆器店(輪島塗)

芍薬の花の金に玉虫のしべが光る

丸い蓋物に施した華麗な蒔絵は、芍薬の大輪。牡丹と並ぶ高貴な花を描き、幾重にも重なる芍薬の花びらのあでやかさを面と線の蒔絵で表現。えもいわれぬ優美さです。

漆で模様を描き、漆が乾かぬうちに金や銀の細粉を蒔きつける蒔絵には、研出蒔絵、平蒔絵、高蒔絵などさまざまな表現の技法があり、使う道具も質量ともに多彩。かつて金粉を蒔く粉筒には、鶴の鎖骨の先端を切って使っていたことも。

蒔絵は、1200年前から行われてきた日本独自の技法。この作は「他に類を見ない作品創りに励みたい」という中門 博さんの真骨頂を発揮した作といえます。

芍薬の花のしべにあしらった螺鈿は玉虫の羽。夜光貝の螺鈿とは異質で、なにか神秘的なものが伝わってくるようだ。内側は黒塗り。

ジュエリーボックス 朱 青
中門漆器店(輪島塗)
径12×高さ12センチ 61万6000円(2点組)

・螺鈿(らでん)
奨励賞
「煌めき おもてなし揃」能作(金沢漆器)

誰が袖をかたどった優雅な盆には、異なる螺鈿と蒔絵の表現。

繊細な意匠が煌めくおもてなしの膳

石川県金沢市周辺で作られる金沢漆器は、加賀藩の保護のもと華麗で品位の高い伝統工芸品を生んできました。「加飾の金沢」と称される雅やかな表現は、高度な技術の蒔絵をはじめ螺鈿、卵殻などの加飾にも見られます。

アワビ、夜光貝、白蝶貝などをやすりで薄く削ったものを使う螺鈿。螺鈿は中国大陸から伝わった技法で、螺は巻き貝、鈿は飾りの意味。用いる貝は厚貝と薄貝で、煮て薄く剥がした0.1ミリ以下のものを使うことも。

螺鈿の輝きと蒔絵を施した誰が袖盆は、宝石をつけたような華麗さが伝わります。

杯には、極小の螺鈿と蒔絵があしらわれる。

煌めき おもてなし揃
能作(金沢漆器)
膳:24.1×18×高さ1.8センチ 杯:径7×高さ8センチ 19万8000円(1セット)
住所:石川県金沢市広坂1-1-60
TEL:076(263)8121

・根来(ねごろ)
奨励賞
「タンブラー 脱乾漆 根来」津田漆器店(輪島塗)

朱塗りの下からのぞく黒漆との対比の妙

かつて和歌山県の根来寺で作られていた堅牢な什器は、長年の使用で表面の朱塗りがかすれ下地の黒漆が模様のような斑紋になって現れてきました。雅味に富むこの趣を讃えて「根来」と呼んでいます。

入念な下地に黒漆を3度塗り、朱漆を上塗りする本来の根来塗は、400年以上途絶えていた発祥の地で復活。2007年に和歌山県郷土伝統工芸品の指定を受けました。

このタンブラーは、黒漆を重ね塗りし、その上に朱漆を塗って研ぎ出しています。「根来の出し方を工夫した」という作者ですが、内側の黒漆が、外側の根来のかすれ方を印象的にしています。

脱乾漆による麻布を重ねた造形がおおらかで、実際に持っても軽やかで使いやすい。側面につけた微妙な凸凹が握りやすさをもたらす。

タンブラー 脱乾漆 根来
津田漆器店(輪島塗)
径7.5 ~8×高さ10.2センチ 2万2000円

(次回に続く。この特集の一覧>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2024年03月号

家庭画報 2024年03月号

撮影/久間昌史 スタイリング/佐藤由美子 取材・文/片柳草生 取材協力/日本漆器協同組合連合会 手作りの品のため、サイズや色、形、仕上がりなどが、 写真や説明と異なる場合があります。

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