北陸新幹線が延伸開業し、旅の目的地としても注目される石川県・小松。九谷焼をはじめとした伝統工芸や自然環境に恵まれ、豊かな食文化が育まれてきた土地です。地域文化の粋が集められた料亭。小松ならではの料亭文化と魅力あふれる女将との出会いを目当てに旅へ出かけましょう。
●お話を伺った方
日本料理 梶助 梶あい子さん(写真・右) 熊本県出身。東京の高級料亭「なだ万」に接客係として就職し、帝国ホテル店に勤める。同じく「なだ万」で修業していた現社長の梶太郎さんと結婚し、小松へ。2020年、「日本料理 梶助」店舗リニューアルを行い、女将に就任。「小珠の和」では、代表を務める。
あわづ温泉 喜多八 喜多真裕美さん(写真・左)茨城県出身。競歩の元日本代表としてオリンピック3大会出場。引退後は、粟津温泉にある元魚屋の老舗旅館「喜多八」3代目・喜多重光さんとの結婚を機に旅館の若女将に転身。スポーツ合宿を誘致するなど、元オリンピアンならではの視点を生かしたおもてなしを提案する。
今、訪れたい「小松流 料亭文化」
三代 徳田八十吉の器に見目麗しく盛られた料理。写真/日本料理 梶助
小松は、加賀前田家三代当主・前田利常公が隠居した地。小松城での隠居後の慶安5年(1652)に、千利休の孫・宗旦(そうたん)の四男にあたる仙叟(せんそう・後の裏千家始祖)を招き、茶の湯文化の保護・奨励に努めました。
この茶の湯文化は、懐石料理、加賀料理へと連なります。そして、小松では、町民がお茶を嗜むなど、文化の担い手は町衆でした。
そのため小松の料亭文化は、町衆が築き上げたといっても過言でなく、美意識と親しみやすさが両立しているというのも特徴です。京都の公家、金沢の武家文化から由来する料亭とは一味違った世界観を感じられます。
「料亭というとハードルが高いと思われる方もいらっしゃいますが、小松の料亭は、元々、商人や北前船の廻船(かいせん)問屋など町衆が利用してきたもので、さまざまな人を受け入れる懐の深さがあると思います。料亭に初めて訪れる方には、私どもも会話しながら、リラックスして楽しめるようおもてなしいたします。ぜひ小松の素晴らしさを堪能していただきたいです」と梶さん。
鮮烈な色絵の九谷焼の器と加賀会席料理との取り合わせも見事。写真/日本料理 梶助
10人が力を合わせて、小松の魅力を発信「こまつ女将 小珠の和」
後列左より、宮城香織さん(料亭小六庵)、高野雅世さん(料亭まつ家)、鵜川雅恵さん(日本料理なか乃)、土定万理子さん(料亭一浪)、浮田彩さん(割烹鮨米八)。前列左より、釜井田江さん(和餐伸)、喜多真裕美さん(あわづ温泉喜多八)、梶あい子さん(日本料理梶助)、長沖朋子さん(安宅の関長沖)。
数ある料理店や旅館を選ぶ際に女将の人柄というのも重要なポイントではないでしょうか。そんな女将との出会いを目的にした旅もおすすめです。 豊かな食文化が根付く小松の料理店や旅館の女将・若女将によって2020年に発足された「こまつ女将 小珠の和」は、10人の女将が小松の魅力を発信すべく、結束してピーアール活動を行っています。
何と言っても女将各々の個性を活かしたおもてなしが魅力です。元オリンピアンや己書(おのれしょ)の師範など、さまざまな経歴を持つ女将たち。それぞれの強みを活かし、女将の個性を存分に楽しめる旅のプランなども提案しています。
元オリンピアンの女将がアスリート視点で“食・温泉・運動”のヘルスツーリズムを提案
あわづ温泉 喜多八の若女将・喜多真裕美さん。
競歩の元オリンピアンである喜多真裕美さんが提案するのは、「ヘルスツーリズム」です。
「『健康に気づく旅』がテーマです。旅先の短い期間で完全に健康改善するのは難しいですが、運動や食事で健康増進できることを学び、心もリフレッシュいただく。そしてお帰りいただいた後も、日常から健康を意識してもらえるようになることを考えてプランニングしています」と喜多さん。
ヘルスツーリズムの目安は2泊3日。事前に若女将によるヒアリングの後にグループごとにプランが考えられます。初日に身体のデータを計測し、ストレッチやゴルフ、早朝の
木場潟ウォーキングや温泉ソムリエによる講義などのほか、合間に観光も含められています。
ウォーキングでは、「日本一早く歩ける若女将」と言われる喜多さんと一緒に歩きます。姿勢、足の振出、着地などしっかりと指導してもらえ、「歩くことが好きになった」という参加者の声がよく聞かれるそう。
夕食は、「小珠の和」のメンバーにもなっている小松市内の日本料理店「和餐 伸」にて薬膳師の資格を持つ女将が考えた献立。朝食は、あわづ温泉 喜多八でたんぱく質やビタミンなど栄養素をバランスよくとれるオリジナル朝食です。最終日には、計測を行い、身体の変化を数値化。そのデータを持ち帰って帰宅後の健康増進に役立ててもらいます。
「女将同士が親しくなり、連携することで、小松の魅力を再認識することができました」と話すお二人。
女将が案内する土地の味覚や文化を堪能する旅は、より深く小松の魅力を知り得ることにもつながり、新たな発見に満ちあふれたものになるでしょう。
高たんぱくで低カロリー。減塩にも配慮した朝食は、小松の名産トマトや玄米こしひかりなどを提供する。写真/あわづ温泉 喜多八
若女将は製菓学校へ通った経歴を生かし、ロビーの「宿場町カフェ」にてスイーツを提供。舟盛りをモチーフにした「あわづパフェ」も人気。写真/あわづ温泉 喜多八
日本料理 梶助石川県小松市大和町141
電話:0761-22-8314
URL:
https://www.kajisuke.co.jp/営業時間:11時30分~14時(LO13時30分)17時~22時(LO21時30分)※要予約
水曜定休、他不定休あり
あわづ温泉 喜多八
石川県小松市井口町ヘ13
電話:0761-65-1821
URL:
https://www.kitahachi.com/会席プラン:1室2名利用で1泊2食付き 1名1万8700円~(すべてサービス料込み、入湯税別)。
ヘルスツーリズムプラン:1名3万円~(8名からのグループで実施。休前日は別途追加料金)
IN15時/OUT10時(プランにより異なります)
●お問い合わせ小松市 観光交流課 電話:0761-24-8076
https://www.city.komatsu.lg.jp ●関連記事を読む里山の自然と、和の文化に囲まれて。“ちょうどいい”街「小松市」で暮らす豊かな日々