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「シティポップは開放感と切なさが共存する“総合芸術”」音楽評論家・柴崎祐二さんが語る魅力

2024.01.12

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今、世代を超えて世界が夢中 ときめく!昭和レトロの魅力 1926年から89年までと長く続いた昭和の時代。特に70年代、80年代のカルチャーが、1997年から2012年に生まれたZ世代には、今、魅力的に映っているといわれます。特集前半ではノスタルジーとポップさが渾然一体となった昭和レトロの作品やアイテムを、後半ではシティポップの魅力をたっぷりお届けします。前回の記事はこちら>>

柴崎祐二さん(音楽評論家)が語るシティポップの魅力

音楽評論家・柴崎祐二さん選、シティポップを代表する名曲・名盤
(右上から時計回りに)誰もが知る名盤。大滝詠一『A LONG VACATION』/ © THE NIAGARA ENTERPRISES INC.、海外リスナーからも愛される「PLASTIC LOVE」が入る一枚。竹内まりや『VARIETY』/MOON RECORDS(ワーナーミュージック・ジャパン) 、敏腕音楽プロデューサーの顔も。角松敏生『AFTER 5 CLASH』/ソニー・ミュージックレーベルズ、欧米ではシティポップの女王! 杏里『TIMELY‼』/フォーライフミュージック、世界が認める天才。山下達郎『FOR YOU』/ソニー・ミュージックレーベルズ 撮影協力/ディスクユニオン

シティポップとは、開放感と切なさが共存する“総合芸術”

2年前にアップされたオフィシャルリリックビデオ、約2400万回。1年前アップのオフィシャルミュージックビデオ、約3030万回(2023年11月6日現在)。“シティポップ”を代表する松原みきさん「真夜中のドア〜stay with me」、竹内まりやさん「PLASTIC LOVE」のYouTube再生回数です。今なぜ、ここまでの広がりを見せるのか。『シティポップとは何か』の編著者、音楽評論家の柴崎祐二さんにお聞きしました。

「まず、最近の音楽とは違う新鮮さがあるのだと思います。今は楽曲を打ち込み、一人で完結させることも多いのに対し、70〜80年代は本格的なスタジオに一流のミュージシャン、時には作曲家や作詞家、編曲家といった豪華なプロダクションチームが集まり、音を作り上げていきました。いわば洗練された“総合芸術的な成り立ち”で、80年代の音楽業界ならではのスタイルだといえます」

実は1983年生まれの柴崎さん。1997年から2012年生まれのZ世代より少し年上ですが、シティポップに対する感覚は近い、と語ります。


「若い世代に人気が高い理由の一つは、情景が浮かんでくる曲だということ。自分が直接体験している時代ではないのに、シティポップの曲を聴くと、あたかもそのシーンの中に入り込んだような感覚を共有できるんです。また、言語がわからない海外リスナーのかたには心地よく聴けるという意味で、BGM的側面も魅力なのでしょう。バラードやロック調のものよりダンサブルな曲が人気なのも、昨今の傾向といえます」。

「海外のリスナーから絶大な人気を誇る一枚」と柴崎さん。7万円超えがつく希少盤となっている。間宮貴子『LOVE TRIP』/ユニバーサル ミュージック

情景を再生し、メロディで切なさをかき立てるシティポップ

国境や世代を超え、ここまで広がった要因にSNS、YouTubeの力を指摘しつつ、特に愛される鍵として挙げるのは楽曲が持つ「ノスタルジー」。

「ノスタルジーとは、物悲しさと心温まる感じを併せ持つ、両義的な感覚なんですよね。非常に開放的な音楽でありながら、メロディや歌詞のどこかに切なさが垣間見える。シティポップの楽曲には歌詞で情景を再生し、メロディで切なさをかき立てる作用があるといえます」。

トレンドの変遷が早い音楽業界において、5年以上人気を博している息の長さ。「一過性のブームを超え、もはや定着した感があります」と柴崎さん。

「ソウルミュージックやロックと同じく、メタジャンル化したといってもいいかもしれません。ロックと聞いてローリング・ストーンズを思い浮かべるように、世界のリスナーからはシティポップといえば山下達郎さん、竹内まりやさん、杏里さんといったかたがたがアイコン的存在としてすでに認知されているのだと感じます」。

柴崎祐二
1983年、埼玉県生まれ。音楽ディレクター、評論家。2006年よりレコード業界にてプロモーションや制作に携わる。ジャズを好む父とニューミュージック派の母のもと、高校生の頃ティン・パン・アレーやシュガー・ベイブに開眼。「シティポップが世界で認められた背景には、ブーム以前から「真夜中のドア〜stay with me」や、「PLASTIC LOVE」などを地道に推し続けた、日本の先駆的なDJの皆さんの功績も大きい」と語る。

特集「「ときめく!昭和レトロの魅力」の記事一覧はこちら>>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2024年01月号

家庭画報 2024年01月号

撮影/鍋島徳恭 スタイリング/阿部美恵 構成・取材・文/小松庸子 撮影協力/ディスクユニオン

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