カルチャー&ホビー

【声に出してみたい古典】「花は盛りに…」の一文で兼好が伝えたかったこと

2023.12.13

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12月・美を感じる心

徒然草

『徒然草』は兼好の著した随筆で、14世紀前半、鎌倉時代末期の成立。通常243段の章段に分けて読まれている。

選・文=渡部泰明(日本文学研究者)

『徒然草』第137段、冒頭の一文。『徒然草』は、分裂と抗争を繰り返す鎌倉・南北朝時代を生きた賢者、兼好の随筆である。本書には、生きていくための知恵が溢れている。花は満開だけが素晴らしいのか。月は翳りのない状態だけをよしとするのか。いや、違う。これまで当たり前と思い込まれていた美意識に、作者は敢然と異を唱えている。

その筆の勢いは、美意識などという固定的な枠組みすら取り払うかのようだ。思い込みはいけない。「見る」という言葉が鍵だ。何を見るのか。どのように見ようとするべきなのか。続く文章では、見えないものを見る大切さが語られている。


美しいと感じる心がなければ、美は存在しない。だが、美しさという固定観念に囚われれば、美はあっという間に消え去る。自分を閉じ込めている殻を破り、美しいと感じる潑溂とした心を育てていこう。そう兼好は提案しているのだろう。

自分の殻を破ればどうなるか。まずは自分と他者とを隔てる垣根が消え、深い心のつながりが可能になるはずだ。兼好は、分裂と抗争に溢れた社会だったからこそ、その時代を他者とともに生きる知恵を示したかったのだろう。私たちも、嚙みしめるべき言葉である。さまざまな四季の美を繰り広げてきた、一年の最後にもふさわしい。
国文学資料館館長の渡部泰明先生による朗読と解説を音声でお楽しみください!

こちらからご視聴いただけます>>



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この記事の掲載号

『家庭画報』2023年12月号

家庭画報 2023年12月号

イラスト/髙安恭ノ介

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