名作歌舞伎への招待状『鎌倉三代記』
気品溢れる佇まいの立女方として古典から新作まで幅広い役どころを演じてきた中村時蔵さん。2023年11月の歌舞伎座では『鎌倉三代記』の三浦之助義村を初役で演じるが、1972年8月に上演された第4回「杉の子会」で時姫を勤めた経験がある。
「時姫は歌舞伎に登場するお姫様の中でも大役といわれる“三姫”の一つです。『本朝廿四孝』の八重垣姫、『祇園祭礼信仰記』の雪姫は本公演でも演じる機会はありましたが、時姫を演じたのは杉の子会という勉強会で一度だけ。当時、八重垣姫を（6世中村）歌右衛門のおじさまに教えていただく機会があり、その翌年に時姫も教えていただきました。
今回は息子の（中村）梅枝が時姫を演じますので、おじさまから教えていただいたことが台本に書いてあるので、それを見て思い出しながら教えなければと思っています。
私自身は三浦之助義村役なのでご経験のある（中村）梅玉のお兄さんに教えていただきます。ビデオで見ただけではわからないことがいろいろありますから、初めて勤める時にはきちんと教えていただかなければなりません。
例えば鎧を着た時の基本的な仕草や役の気持ちのことなど、細かく説明していただけるのでとても面白いんです。三浦之助は私の祖父（3世中村時蔵）も演じておりまして演ってみたい役でした」
『鎌倉三代記』の三浦之助義村。©松竹
今回上演される『鎌倉三代記』の「絹川村閑居の場」の見どころとは？
「『鎌倉三代記』は大坂の陣の時代設定を北条時政と御家人との争いに変えて描かれていて、徳川家康を北条時政、千姫を時姫、真田幸村を佐々木高綱と見立てています。実は生きていた佐々木高綱が北条時政の首を狙うということなので、江戸幕府の監視下では描けなかった徳川家康への思いなどが入っているのではないでしょうか。
今回は最後に中村芝翫さんが演じる佐々木高綱の“ぶっ返り”もある予定なので、派手で見応えがありますよ」
中村時蔵1955年、東京都生まれ。1960年4月歌舞伎座『嫗山姥』の童ほかで3代目中村梅枝を名乗り、初舞台。1981年6月歌舞伎座『妹背山婦女庭訓』のお三輪ほかで5代目中村時蔵を襲名。現代を代表する立女方の一人。2023年11月の吉例顔見世大歌舞伎では夜の部の『鎌倉三代記』で三浦之助義村を演じる。
〔今月の歌舞伎〕
【歌舞伎座】歌舞伎座新開場十周年吉例顔見世大歌舞伎～2023年11月25日（20日は休演）
●昼の部 11時開演
極付印度伝『マハーバーラタ戦記』
●夜の部 16時30分開演
一、秀山十種の内『松浦の太鼓』 二、『鎌倉三代記』 三、『顔見世季花姿繪』
〈春調娘七種〉〈三社祭〉〈教草吉原雀〉
1等席1万8000円ほか
チケットホン松竹：0570-000-489
【平成中村座】北九州市制60周年 平成中村座 小倉城公演
『小笠原騒動』犬神兵部（中村勘九郎）、お大の方（中村七之助）。2019年11月 平成中村座 小倉城公演。
～2023年11月26日（20日は休演）
●昼の部 11時開演
一、『義経千本桜 渡海屋 大物浦』 二、『風流小倉俄廓彩』
●夜の部 15時30分開演
小笠原諸礼忠孝 通し狂言『小笠原騒動』
出演は中村勘九郎、中村七之助、中村橋之助、中村虎之介、中村鶴松、中村歌之助、中村福之助、坂東新悟、片岡亀蔵ほか。
松席（1階平場・座布団席）、竹席（1、2階長椅子席）1万6000円ほか
博多座電話予約センター：092（263）5555
