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天気や時間でも見え方が変わる、特別客室「家庭画報スイート」ならではの美術鑑賞

2023.10.27

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期間限定特別室「家庭画報スイート」 第2回

長崎県壱岐島にある離島唯一の5つ星旅館「壱岐リトリート海里村上 by 温故知新」に誕生した、期間限定特別室「家庭画報スイート」。“泊まれるアートギャラリー”をコンセプトに、九州が誇る伝統工芸品やアートなど全40作品を、趣向をこらして展示した、五感で愉しめる客室です。今回は客室内に展示されているアート作品と、インテリア、ファブリックをご紹介します。前回の記事はこちら>>>


アート【ART】

客室の扉を開けると広がるのは、真っ白な空間。この客室で過ごす時間の中で、自分なりの“色”を見つけ、よりたくさんの“色”を感じられるように、まずは白い世界へとご案内します。

そこから洋室に進むと、大きな窓に切り取られた湯本湾の絶景が目に飛び込んできます。これが、この客室で一番大きなアートといってもいいでしょうか。晴れの日には、海と空が作り出す鮮やかな青い世界が。曇りや雨の日には、色を失い、まるで水墨画のような景色が広がります。

1日のハイライトは、夕刻。1日輝き続けた太陽が真っ赤に染まり、その輪郭をはっきりと映して水平線に吸い込まれていく。水色、黄色、朱色……刻一刻と変わる空の色、地球がゆっくりと回るのを感じながら、やがて広がる漆黒、そして星空を待つひとときも、かけがえのない旅の思い出となることでしょう。


飾られているのは、九州を舞台に活躍しているアーティストの作品です。ぜひ、美しい原風景に包まれながら、頭の中を空っぽにして、時間の許す限り作品と向き合ってみてください。作品をどこから見るか、そしてその日の天気や時間でも、見え方や感じ方が変わるかもしれません。

「いのちのふるさと 風光絵巻 春(ふうこうえまき はる)」50号(117×91㎝) 油彩
「いのちのふるさと 風光絵巻 春(ふうこうえまき はる)」50号(117×91㎝) 油彩

どこまでも青い空、光に満ちた草原には美しい水の流れ、爽やかな風が吹き抜け、遠くには命の象徴である卵が世界の調和を保っている。草原を駆けていくこびとたちは、理想に向かって生きていく私たちを投影している。明るい色彩と精緻な表現により、愛に溢れた優しい世界が描かれており、天地人一体の哲学的な世界観を作り上げている。

●作品の楽しみ方
この作品は、眼下に広がる湯本湾の穏やかで美しいロケーションと、刻々と変化する光と自然の色彩とのハーモニーを感じていただくことをイメージしています。海を背にして作品を眺めたとき、足元の黄色い絨毯の先に、鮮やかな草原が続いているように感じていただけると思います。日常では味わうことのない不思議で優しい感情は、まさにアートの力ではないでしょうか。絵画の静かで優しい世界に繋がっていくような感覚をお楽しみください。

江上寛二(えがみ かんじ)
1947年生まれ。朝倉高等学校卒業後、佐賀大学特設美術科へ。久留米大学附設高等学校美術科教諭を50年勤める。現在、同校非常勤講師。


「requiem(レクイエム)」30×30㎝ 磁、アクリル 2022年
「requiem(レクイエム)」30×30㎝ 磁、アクリル 2022年

薄く板状に整形した粘土を放置し、さまざまなパラメータが作用し合い生まれた大小の“ひびそのもの”が作品である。自ずと生じた亀裂の断面は、作為的には再現し得ない複雑さを生み、素材感や厚みの情報が削がれることで、特別な意味のある模様のようにも見える。割れるという過程を経て、粘土は美しさを伴い、個を発揮する。その姿には、生と死、始まりと終わりが共存しており、ゆったりと流れる時間の中で深遠な美しさを生む。

●作品の楽しみ方
波の動きや海底をイメージさせる形の陶板が、光を透過し、陽の当たり方で異なる表情を見せる作品です。作品が乳白色の背景に反射したり、影の方が存在感を放ったり。あるいは、白い陶板が全く別の色に見える時間もあるかもしれません。夜はぜひ、室内の電気を消してご鑑賞ください。

内藤真星(ないとう まほし)
2000年、島根県生まれ。学部4年次に作品制作を始める。陶磁器、金属、樹脂などに触れる過程で、素材の能動的な形状変化に興味を持ち制作研究を行っている。現在、九州大学大学院芸術工学部在学中。


「壱岐鬼凧(いきおんだこ)」
「壱岐鬼凧(いきおんだこ)」

家内安全、無病息災の魔除けとして島の家に飾られる壱岐島伝統の民芸品で、長崎県指定の伝統的工芸品。描かれているのは、壱岐に伝わる「百合若大臣伝説」の鬼と武者との格闘の様子。背には弓状に張った弦が取り付けられ、揚げると「ビューン」とうなり音がする。通常は赤、橙、黄、緑の4色の食紅を使い分けて描かれるが、こちらは客室監修の「gallery cobaco」秋重久美子氏とのコラボレーションで作られた、オリジナルカラーの一点もの。

斉藤あゆみ(さいとう あゆみ)
壱岐島生まれ壱岐島育ち。祖父母が作ってきた鬼凧の伝統を守るため壱岐へ戻り、島で唯一の工房を営む。裏山の竹を削って骨組みを作り、和紙にした絵を描いて色を塗り続けている。島の鬼凧職人は、同氏と祖母のフクヨ氏だけ。


「紙層(しそう)」「紙層(しそう)」

和紙を幾層にも重ねた様から「紙層」と名づけられた。手漉き和紙ならではの素材感、優しい風合いや色、表情から、一つひとつの手作業、手間に込められた思いを感じ取ることができる。

早水惠一郎(はやみず けいいちろう)
鹿児島生まれ。多摩美術大学卒業。岐阜の美濃で手漉き和紙の工程を学んだ後、地元鹿児島で紙漉きを始める。手漉き和紙の素材としての奥行きを感じられる作品を制作する。

撮影/久間昌史

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