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「青木さ、なんで評価してんの?」凍り付いた先輩の一言。青木さやかさんの「反省道」

2023.10.12

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タレント、俳優、エッセイストとして活躍する青木さやかさんには、わざわざ人には言わないものの、日頃から心がけている行動の基本ともいうべき「反省道」があるといいます。主に8つのテーマからなるこの「反省道」、コツコツと実践してはいるものの、青木さんにとって一筋縄ではいかないようで……。等身大の自分と向き合う文章が共感を呼び、早くも重版となった最新著書『50歳、はじまりの音しか聞こえない』から抜粋してお届けします。

50歳にして、わたしの「反省道」(前編)

文=青木さやか

世間では、マスクを外す人が増えてきた。2023年の夏。世の中の情勢については中学2年生の娘より疎く、友人たちとの会話が政治経済に及ぶと、ほとんどついていけない。大切な人たちに本気で呆れ返られたくはないものだから、「なるほどね、そっちね、ふむふむ。わたしも。わかる。元々わかってた」という顔をしてお茶を啜(すす)ってみたりする。

そんな50歳だ。大丈夫か。


それでも知っていることもある。

水害、物価高、戦争、空きビルたくさん、子ども減ってる、マイナンバー、北からのミサイル(結構知ってる)。

世の中には暗雲が立ち込めているようだ。

あゝわたしは一体何ができるのだ。居ても立ってもいられない。地球防衛軍に入りたい気分ですよ。どこかにあるのかな、地球防衛軍。しかし今日の仕事はロケ。台本を読むと、「初めて聞いた! こんな時短レシピあったのか!」といった内容。平和です。地球が危うい今、こんなことしていていいのだろうか、と若干戸惑いつつ、いや、目の前のことを精一杯やらせていただくことがベストだ。
それしかない。

「青木さん青木さん」

時短レシピのディレクターは、若い男性だった。出演の料理研究家の動きをみて、なにかを閃ひらめいたようだ。

「みました? いま先生がまな板使わずに手のひらにのせて、豆腐切ってましたよね。それって、まな板洗わなくて済むから、すごい時短テクですよ!」

「……」

「それ、一発行っときますか」

「あの」

「はい?」

「それ、お豆腐切ったことある人は大体知ってると、思います」

「え?」

「お豆腐まな板にのせると、その方がバランス崩れて難しいから、わたしも手にのせたまま切っちゃいますけどね」

「え〜そうですかあ?」

「うーん、いや、そう言われると、どうだろう。多分、そうじゃないかな、と思うんですけどね、ごめんなさいね、違ったら」

「僕は豆腐を手のひらで切るなんて知りませんでしたよ」

「お料理はされます?」

「しませんね」

「お豆腐、切ったことあります?」

「ないですね」

ないんかい! 

平和である。今日の日にありがとう。一旦眠りたいです。

さて、世の中の小さなピースの一つであるわたしは、この先、娘や孫の時代までその人たちが楽しく過ごす為に何ができるか、ということを常々考えて行動していることがある。友人にも聞かれない限り自分からは話すことはない。コツコツとやっている。

それが、わたしの「反省道」である。

まず、基本の8つのこと。

○嘘つかない
○悪口言わない
○顔つき(柔和に)
○態度(優しく)
○言葉づかい(丁寧)
○約束を守る
○感情を出さない(怒りなど)
○不貞腐れない

これをやろうと心がけると決めてから5年以上経つ。これがなかなか難しい。いや、わたしにとっては、無茶苦茶難しかった。

わたしの会話の多くは、嘘や悪口でできていたような気がする。当時の自分を擁護すると、それがいい、と思っていたところもある。一緒にいる人が面白いと思ってくれれば、大袈裟に話した方がいいだろうと思っていた。本当の歳より上に言った方が面白いだろうな、と思ったときはそうしていたから、一体わたしって本当は何歳だっけ? と、1973年生まれで度々検索して調べたりしていた。

悪口だって本人の前なら面白ければオッケーだと思っていた。それに、その人が傷つかないとわたしが判断したツッコミ的なことなら、むしろ「その人」を助けてあげられていると思っていた。だけど、「その人」は、傷ついていることがあった。それにたとえ笑顔で別れても、わたしの知らないところで泣いている「その人」もいただろう。あるときは、わたし自身が「その人」だったこともあったはずなのに、「その人」を作っていたのだとも思う。

悪口というか陰口も言った。いや、評価かもしれない。良かれと思って「あの人はもう少しこうした方がいいよね」「こうなるともっと面白いのにね」ということを口にしていた(何様!)。

陰口や評価を言ってるときは、顔つきも悪くなるというものだろう。思い返してみると、わたしの母は、よく人や物を「評価」していた。過去、母との大きな確執があったわたしは、反面教師として母をみていた。だから、母のような言動、振る舞いをしないようにと心がけていたのだ。しかし、わたしは、普段から「評価」をしていた。それに気づいたのは5年ほど前の、ある芸能人の結婚式だった。とても大きな披露宴で大勢のお客様がいた。そしてたくさんの方が順番に祝辞を述べていた。わたしは隣の席のビビる大木さんにずっと祝辞の感想を言い続けた。

大木さん、今の祝辞長くないですか? あ、面白いですね、今の。あー、声が聞き取りづらいですねえ、マイクの持ち方ー。ははは、このエピソード、まあまあ面白いですね。

「青木さ」

「はい」

「なんで人の祝辞、評価してんの?」

わたしは、その瞬間、凍りついた。

そうか、わたしが話していることは、「評価」なのか。考えてみればそうだ。反面教師にしていたはずだったのに、母と同じことをしている。

それから披露宴の感想どころか、何も耳に入ってこなくなり、ほとんどその披露宴のことは覚えていない。

披露宴が終わり、会場をあとにしてボタンを押してエレベーターを待った。

「あ、このエレベーター、速いですね」

すると大木さんはこう言った。

「すごいな、青木。エレベーターも評価するんだ!」

この出来事は、わたしにとって物凄く大きかった。お笑いの先輩は時に笑いに変えて大きな気づきをくれる。笑いながらわたしも聞くのだが心の中では、あーやなとこ指摘されたわ〜誰も教えてくれなかったこと〜いや、普通言わないよね。気づいても。だって、きっと、とても言いづらいことだもの。

「言われた」から「聞きたくなかった」になり「そうだ、なかったことにしよう」になり「忘れられない!」になり「仕方ない認めますよ白旗上げます」になるまでには時間がかかる。だが本当に降参したそのとき、要らないプライドも一緒に解けていくような気がして結局ラクになる。お笑いの先輩たちには心の底から感謝している。だからといって同じような指摘を知らない人に居酒屋でされることは辛い。そうですねえ、と自分に落とし込む大らかさはわたしにはまだない。

態度、言葉づかい、このあたりは日々訓練と思い気をつけている。脚を組むことからは泣く泣く卒業した。だが、何十年も脚を組んできたわたしは、たまに無性に左脚の上に右脚を置きたくなる。だから演技の役柄によっては脚を組んでよいことにしていて、舞台上にいるのはわたしではない、という大義名分を自分に与えながら、脚を組むのが懐かしくて嬉しい。

乱暴な言葉づかいは控えている。その表現の方が、たとえ、面白いから言いたい! と思ったとしても。見てる人からしたら実際には大した違いはないかもしれないが、わたしにとっては、あー残念だなこの表現が使えなくて。あー使いたかった、と寝る前に思い出してしまうこともあったりするのだが。

(後編に続く)

『50歳。はじまりの音しか聞こえない』


アラフィフを経験するすべての女性たちに贈る、青木さやかさんの最新書下ろしエッセイ集。さまざまな困難な壁を乗り越えてきた著者が、50歳を迎えて乗り越える次なる壁とは。恋愛、断捨離、反省道……赤裸々に綴られた文章が多くの共感を呼び、早くも重版出来!

青木さやか 著 1760円/世界文化社

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