モーツァルトが一般大衆のために書き上げた最後のオペラ『魔笛』

クラシックソムリエが語る「名曲物語365」　難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。連載一覧はこちら＞＞

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第30回　モーツァルト『魔笛』

イラスト／なめきみほ

モーツァルトが一般大衆のために書き上げた最後のオペラ

今日9月30日は、モーツァルト（1756～91）のオペラ『魔笛』の初演日です。クラシック史上最大の天才とたたえられるモーツァルトですが、存命中は思うような評価を得られずに、失意のうちにこの世を去ったことは、映画『アマデウス』にも描かれています。

そのモーツァルトが最後に完成させたオペラが『魔笛』です。作曲を依頼したのは、王侯貴族や大劇場ではではなく、民衆劇場の支配人で、俳優や台本作家も兼ねるシカネーダー。初演は完成から2日後の1791年9月30日にシカネーダーが運営するウィーンの劇場で、モーツァルト自身の指揮によって行われています。そしてその約3か月後の12月5日にモーツァルトはこの世を去ってしまうのです。

一般大衆に受ける要素を盛り込みつつ、モーツァルト自身も傾倒していた秘密結社「フリー・メイソン」の理念である“自由・平等・博愛”が込められた『魔笛』こそは、最晩年のモーツァルトが残してくれた至高のプレゼントといえるでしょう。

田中 泰／Yasushi Tanaka

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一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。