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京都随一の名料亭「瓢亭」で仙道敦子さんが、世界から注目される“料亭文化”を体感

2023.09.19

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【座敷に向かう露地の風情を愛でる仙道敦子さん】年月を感じさせる苔や琵琶湖疏水の水を引いた池、そこに泳ぐ鯉を眺めながら、広間へ続く露地をゆく仙道敦子さん。「目に入るすべての景色が絵になっていますね」。

〔特集〕今秋、感動の体験旅へ 京都・奈良 日本が世界に誇る2大古都、京都と奈良。世界文化遺産にも登録されている、この2つの都市の文化的価値と魅力を、料亭、庭園、建築などに焦点を当てて紐解いていきます。さらに美味処、話題のスポットの情報もお届けします。前回の記事はこちら>>


〔京都〕秋の古都で大人の教養観光を

この秋は老舗料亭「瓢亭」で今、世界から注目される“料亭文化”を体感。美しき苔寺「西芳寺」では、荒廃と復活の歴史と、禅の庭の見方を学びます(9/20公開予定)。専門知識を持つかたの案内のもと、奥深い日本文化に出合う旅へ。さらに京都の旬を味わう新しい美味処をご紹介します。

瓢亭 本店(南禅寺畔)

【座敷の中心は床の間。最初に掛物を拝見する】築約400年の茅葺き屋根の茶室「くずや」の床の間。掛物は季節やその日の趣向を表すもの。料亭では入室したらまず最初に床を拝見する。庭拍子(酒井抱一)筆の「名月や くもりながらも提灯なし」。

京都随一の名料亭を世界標準の説明で読み解く

【文人墨客に愛された築400年の「くずや」】四畳半と二畳の2間続きの「くずや」にて、「心が落ち着きますね」と仙道さん。創業以来あるこの座敷は谷崎潤一郎の『細雪』の中にも登場する。1983 年の映画『細雪』に出演した仙道さんは当時を振り返り、感慨深げ。

仙道敦子さんと学ぶ、日本の総合芸術「料亭文化」

阪田 徹さん(さかた・とおる)

GRAND TOURISM ORGANIZATION 代表理事、文化産業科学者、文化批評家。芸術の脳科学、心理学の応用研究で博士(学術)取得。日本の文化芸術等の学術書多数。国土交通省 観光庁のアドバイザーを務める。

仙道敦子(せんどう・のぶこ)さん

俳優。主な出演作に、NHK連続テレビ小説『なつぞら』、TBS『この世界の片隅に』、Net fli x『サンクチュアリ- 聖域-』。2024年1 月放送予定の『鬼平犯科帳』にも出演。

約400年前、南禅寺境内の茶店として始まった「瓢亭」。天保8年に料亭ののれんを掲げてから今日まで180年余、この地で歴史を刻んできました。

瓢亭に代表される「料亭文化」は世界に類を見ない稀有な文化だと話すのが、観光庁の国際観光アドバイザーを務める阪田 徹さんです。古都・京都の老舗料亭で、仙道敦子さんを「教養観光(グランドツアー)」へ案内します。

「『教養観光』とは、18世紀に英国人貴族の子弟の間で行われた修学旅行のこと。一流の知識人のガイドのもと、将来に向けた“貴族としての素養を習得するための学び”が実践されたのです。グローバル化が進む現代、自国についての教養を身につけ、それを他文化と比較しながら自分の言葉で伝えられなければいけません」と阪田さん。


そこで日本を学ぶ場として着目したのが瓢亭でした。「今、世界中から料亭が注目されていて、老舗料亭として名高い瓢亭にはフランス人訪問客も多いそう。これは料亭が単に料理を供する場ではなく、さまざまな日本文化を体感できる場所だからでしょう」。

茶の心を重んじた建築、座敷とそこにしつらえられた軸や花、自然のままに見えながら手入れされた庭、歴代が蒐集した器、もてなしの心──歴史とともに育まれた料亭文化は“日本の総合芸術”なのです。

「料理だけでなくたくさんの要素が繫がっている、豊かで深い世界。後世に残すべき文化だと思います」という仙道さんに、「瓢亭を訪れた一人一人が日本文化のアンバサダーになってほしいですね」と阪田さんも頷きました。

【入り口の蹲踞(つくばい)で手と口を清め、席入りする】入り口を入ってすぐの露地に置かれた大きな蹲踞は、客人が席入りする前に手を清めるためのもの。垣根に使われる植物は萩などが一般的だが、瓢亭では黒文字が据えられている。

一子相伝の味

【江戸時代からの名物「瓢亭玉子」】鯛と車海老の菊花ずし、枝豆、焼き栗、子持ち鮎の山椒煮、そして一子相伝の名物、瓢亭玉子が盛り込まれた秋の八寸。器は菊の絵柄の蒔絵菓子盆。瓢亭玉子は文久2年の『花洛名勝図会』の中にも登場し、「瓢亭の煮抜玉子は近世の奇製なりとて酒客あまねくこれを食悦す」と記されている。

明石鯛、瓢亭玉子――守り伝えられてきた名物の味を識る

京料理の最高峰・瓢亭を代表する料理の一つに、明石鯛のお造りがあります。先代の髙橋英一さんが若い頃、明石の担ぎ屋との出会いがあり、そこから一年を通して瓢亭の向付は鯛のみ。

「明石鯛は最高級の魚として江戸時代から愛されてきました。そのおいしさには明確な根拠があります」と阪田さんは話します。明石海峡は潮の流れが速く、窒素やリンを含む栄養分が舞い上がることでプランクトンが大量に発生します。豊富な餌を食べ、荒波で鍛えられた鯛は、身が引き締まって脂のりがよく、その歯ごたえとうまみを生かすために瓢亭の鯛はへぎ造りなのです。

3人のお子さんのお弁当を25年間作ってきた料理好きの仙道さんの目を引いたのは、明石鯛に添えられたトマト醬油。海外のかたにもなじみ深いトマトを使って生魚を食べやすくしようと、15代目当代の義弘さんが考案した新定番です。

一方で創業当時からある「瓢亭玉子」は、茶店の時代に庭先で飼っていた鶏の卵を茹でて出したのが始まりといわれ、古格を守る瓢亭の象徴といえます。「歴史と格式の制約がある中で、時代に合わせてブラッシュアップを加える。瓢亭はクラシックとイノベーションを両立してきた存在なのです」(阪田さん)。

【「明石鯛」のお造りは伝統と革新、2種の醬油で】昔ながらの土佐醬油と、低温で焼いたトマトと薄口醬油を合わせたトマト醬油とともに。「明石鯛の歯ごたえがしっかり。食材の背景を伺うと感じ方も変わりますね。五感を研ぎ澄ませながら味わいたいです」と仙道さん。明石鯛の器は楽七代長入 作の柏皿。

1枚ずつ意匠の異なる蒔絵菓子盆。「日本の器使いは西洋とは異なり、陶磁器に塗り物、ガラスもある。道具を取り合わせて楽しむ茶道の概念がベースにあるからでしょう」(阪田さん)。

店先に大きな看板などはなく、茶店時代の面影を残して旗のれんと大草鞋が下げられている。

瓢亭 本店(ひょうてい ほんてん)
京都市左京区南禅寺草川町35 
TEL:075(771)4116
(営)12時〜13時、17時〜19時(ともに入店)
水曜定休、ほか不定休あり

※次回に続く

特集「今秋、感動の体験旅へ 京都・奈良」の記事一覧はこちら>>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2023年10月号

家庭画報 2023年10月号

※料理店の献立は仕入れの都合により、食材や料理内容が変更になる可能性があります。また料金は別途サービス料等がかかる場合があります。※施設・店舗は臨時休業の場合があります。事前にご確認のうえお出かけください。撮影/本誌・坂本正行 きもの・小物コーディネート/相澤慶子 きもの提供/服部商店ときね 帯/服部織物室町店 ヘア&メイク/徳田郁子 着付け/小田桐はるみ 『家庭画報』2023年10月号掲載。この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。

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