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ジュエリーに欠かせない真珠は、かつてダイヤモンドより高価だった

2023.09.08

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これぞジュエリーの真髄 第9回(02) アールデコと真珠 有川一三氏が主宰する「アルビオンアート」の歴史的な芸術品の数々を、宝石史研究家の山口 遼さんの解説で紐解くジュエリー連載。第9回は、アールデコと真珠の魅力をご紹介します。第9回(01)はこちら>> 連載一覧はこちら>>

ダイヤモンドより高価だった真珠

ジュエリーの世界で、ダイヤモンドと並んで重要な地位を占めるのは真珠です。ここでいう真珠とはもちろん天然真珠のことで、養殖真珠は一つもありません。真珠は数ある宝石の中でも恐らく最古のものでしょう。人間が食料とした貝類から出てくるのですから。しかし真珠は有機物ですので、長い年月の間に経年変化で消滅することが多く、古代の真珠で今に残るものは大変に少ないのです。

中世以降、東西間の交易が盛んになるにつれ、インドやペルシャ湾から西欧にもたらされる真珠は莫大な量でした。さらに今日では想像もできない地域、スウェーデン海岸やドイツのババリア地方や英国のスコットランド、ウェールズの河川、さらにはアメリカのミシシッピィ川流域からも、多くの真珠が採れています。

真珠は決して白く丸いものではありません。白くて丸いのは養殖真珠を作る時に丸い核を入れたためで、天然真珠で丸いものはきわめて稀です。不定形で何ともいえない柔らかな輝き、それが真珠の美しさなのです。


真珠の使い方は2つに大別されます。一つは大粒の真珠のさまざまな形を生かしてデザインするもの。使われる真珠はせいぜい2〜3個です。もう一つは小さい真珠を大量に集めてデザインするもの。これには数百から数千の真珠が必要となります。

では大粒の真珠から見てみます。

1.ダイヤモンドとナチュラルパールのラブ・トークンペンダント
製作年代:1950年頃
製作国:イギリス(推定)

1はほぼ同じ形の美しい真珠を使って、ハートのデザインを描いたペンダント。男女の心が一つになったという愛のデザインです。

2.[ルネ・ラリック 作]ペリカン・ペンダント
製作年代:1890年頃
製作国:フランス

2はラリックで、ペリカンの胴体に、見事なブリスターパール2個を裏表に貼り合わせています。ラリックらしい巧妙な作りで、薄いピンクのエナメルが見事です。

3.フクロウのペンダント
製作年代:1880年代
製作国:イギリス(推定)

3はフクロウの胴体の部分が真珠。

4.[ジョルジュ・フーケ 作]マザーオブパールとパールとべっ甲のヘアコーム
製作年代:1905年頃
製作国:フランス

4はフーケで、アワビの母貝を全体の背景に使い、金で波模様を描き、その上に激しく変形した真珠を3個、岩に見立てて飾っています。櫛の形も風景のデザインも、日本の美術の影響が鮮明です。

5.ベルエポックのボウブローチ
製作年代:19世紀後期
製作国:アメリカ(推定)

小粒の真珠をたくさん集めて作るジュエリーで最もわかりやすいのは5。大小の真珠を並べ、美しいリボンを描いています。

6.パールのドレスリング
製作年代:20世紀中期
製作国:未詳

6は真珠と同じような球体を金で作り、その上に少し間隔をあけて同じサイズの真珠をびっしりと取り付けています。真珠の孔が見えるので、おそらくネックレスをバラバラにして使ったのでしょう。それだけ真珠が貴重だった証です。

7.ヴァニティケース
製作年代:1920年頃
製作国:イギリス(推定)

もっと凄いのは7のヴァニティケース。隅のサファイアを除けば、全面に小さな真珠が埋め込まれています。

8.[ベルエポック]パールとダイヤモンドのティアラ/バンドゥ
製作年代:1910年頃
製作国:フランス(推定)

8はバンドゥとも呼ぶ幅の狭いティアラ。ダイヤモンドの枠の中に縦横に精密な真珠の格子を取り付けてあり、その精密さには感嘆します。いずれも、同じような真珠をよくここまで集めたものだと思います。

真珠は白だけではないという作例を。

9.ダイヤモンドとコンクパールのペンダント/ブローチ
製作年代:1910年頃
製作国:イギリス(推定)

9は最近日本でも知られるようになったピンク色の真珠。コンク真珠と呼ばれ、主に中米で採れます。

10.[シュザンヌ・ベルペロン 作]パールブローチ
製作年代:1950年頃
製作国:フランス

もう一つは、比較的最近の作品で、白い真珠と黒真珠を用いたブローチ10。天然にしては珍しく真円に近い真珠を使っています。

歴史の中では、同じ大きさのダイヤモンドよりも高価だったという真珠の魅力がおわかりいただけたでしょうか。

※記事の写真は、下のフォトギャラリーからもご覧いただけます。

この記事の掲載号

『家庭画報』2023年09月号

家庭画報 2023年09月号

監修・文/山口 遼 撮影/栗本 光

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