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【声に出してみたい古典】なんというおおどかな詠みぶり。竜田川の紅葉を詠んだ歌

2023.09.05

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9月・竜田川の紅葉

(訳)竜田川では紅葉が乱れながら流れているようだ。渡ろうとしたら、美しい錦が二つに裁ち切られてしまうだろうか。

平城天皇(774~824年)は桓武天皇の皇子。『古今和歌集』は、延喜5(905)年に成立した、わが国最初の勅撰和歌集である。

選・文=渡部泰明(日本文学研究者)

竜田川は、現在の奈良県生駒市を南に流れ、斑鳩(いかるが)町で大和川に合流する川である。晩秋、川の水面を覆(おお)い、紅葉が散り敷いている。まるで色鮮やかな絹織物のように。川を渡ったりしたら、その美しい織物は引き裂かれてしまうのではないか。


なんというおおどかな詠みぶりだろう。実際に紅葉を見ていながら「めり」と推定の表現を用いているのは、およそ紅葉には見えないけれど、という含みである。それゆえ下句は、川に錦を晒している、などとまとめることもできた。しかし作者は、その絹織物が裂かれていくさまへと展開している。想像の世界を悠々と翔(かけ)っていくのだ。

よみ人しらず、つまり作者未詳の歌であるが、一首には左注(さちゅう=その歌にまつわる伝承を左側に記したもの)が付いていて、「ならの帝」作者説があることを紹介している。「ならの帝」は現在平城(へいぜい)天皇のこととされている。平安京を離れて奈良の都に舞い戻った天皇に、通じるものを感じた人がいたのだろう。たしかに、古風さと天衣無縫の趣とを併せ持っている歌だ。
国文学資料館館長の渡部泰明先生による朗読と解説を音声でお楽しみください!

こちらからご視聴いただけます>>



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この記事の掲載号

『家庭画報』2023年09月号

家庭画報 2023年09月号

イラスト/髙安恭ノ介

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