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栗山英樹さんが訪ねる、聖地・高野山。「如実知自心の目覚め」

2023.08.29

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〔特集〕誕生1250年記念「空海を旅する」──即身成仏への道
今から1250年前に誕生した日本で最初の人類普遍の天才・弘法大師空海。その教えの根本唯一の目的は、人を幸せに導くこと。宗旨、身分、人種、生物、無生物を問わず、宇宙に存在するものすべては大日如来の顕れであるとした空海の教えの実践が世界平和につながります。前回の記事はこちら>>

如実知自心の目覚め(栗山英樹さん・談)

金剛三昧院の御本尊・愛染明王(運慶作)は源頼朝公等身大の坐像念持仏として作成された。息災や増益、敬愛などのご利益のほか、欲・本能を糧にする功徳を持つ。

金剛三昧院の御本尊・愛染明王(運慶作)は源頼朝公等身大の坐像念持仏として作成された。息災や増益、敬愛などのご利益のほか、欲・本能を糧にする功徳を持つ。

寺社仏閣を巡り、偉大な先人たちと対峙する時間を大切にしてきた私ですが、ここ高野山に対しては最高峰の聖域であるがゆえに、生半可な気持ちで訪れてはいけないのでは、との思いから歳月が流れていきました。

でも今回初めて高野山という聖地を歩いて感じたのは、お寺も宿坊も町全体も包み込むような温かさがあり、対応が柔軟だということ。1200年前から多様性を大事にしてきたお大師様の魂が現代にも受け継がれていることが、訪れて初めてわかりました。


いちばん行きたかった奥之院での時間は一生忘れないでしょう。朝の5時、樹齢1000年ともいわれる杉木立が続く参道はまだ薄暗く、お大師様がいらっしゃる御廟へと近づくにつれ、明らかに空気が変わり霊気に包まれていきます。この世ではない場所にいる感覚、ひんやりするほどに澄み切った気の圧に身震いする思いでした。

何かをいわれている気がして続いていた息苦しさがふっと軽くなったのは、朝6時からの勤行見学が終わった頃でしょうか。読経に耳を傾けながら心の中で対話していたお大師様から、「君、ちゃんと真面目にやる気があるんだね?」と少しだけお許しいただけたような不思議な気持ちになったのです。

7時を回り、少しずつ明るくなってきた参道を歩くと、あちらこちらに存じ上げているかたがたの墓碑や供養塔、墓所が。織田信長に明智光秀、豊臣家や徳川家はもとより、親鸞聖人や法然上人までここに集っているとは。死が今よりも身近にあった時代、敵味方に関係なく万人に手を差し伸べ、救おうとしてくださるお大師様の近くでせめて死後は安らぎたい、と願った「入定信仰」の気持ち、よくわかります。

今回の取材を通して、「弘法大師空海とは?」、「密教とは?」というお話を聞く中で、本当に多くの得るものがありました。「密教の密は、秘められた自分自身の大切な働きに気づいてくださいという意味」とのお話は、目から鱗が落ちました。

そのほか、「我欲と大欲」、「如実知自心」の教えも心に残っています。監督として選手に接する際はできるだけ自分を抑えていたつもりなのですが、どうしてもときには我が出てしまう。何かの拍子にイライラを感じる自分に情けなさを覚えることもあったのですが、「欲はなくさなくていい。ただし、自分のためだけの欲(我欲)ではなく、欲を大きくしてみんなのために使いなさい」という教えに感じ入りました。

これもまた、密教の根本的な教えである「如実知自心」の意味は「自分自身の心を知る」。自分を知ることが何より難しく、それができればすなわち悟りの境地とのこと。イラッとしている自分に気づく時点でまだまだ修行が足りないのは明らかですが(苦笑)、自分を知り、確認するところから心がけたいと思います。

WBCでの優勝は実のところ、人智を超えたところで勝敗が決まったようにも感じています。高野山でも多くの参拝客のかたがたに「ありがとう!」といっていただけましたが、奥之院を歩きながら「君はまだまだだよ」と叱咤激励されるような感覚にも陥っていました。

自らの体を捧げて仏になる「即身仏」に留まらず、「即身成仏」、つまり悟りを得て仏になったのち、そこからさらに万人に手を差し伸べて祈り続ける道を選ばれたお大師様ですから、私にはまだまだやるべきことがあるだろう、と思われたのかもしれません。きっと、すべての人に意味のある投げかけがなされる場所なのでしょう。

それを受けて、私の今の気持ちをひと言で表すとしたら……「さあ、行こうか!」高野山はお大師様と対峙し新たな一歩を踏み出していくときに訪れたい、そんな大切な場所になりました。お大師様に、すべての人々に感謝します。

戦国時代の武将、上杉謙信廟にお詣りして。「選手たちにWBCの出場交渉をした際、手紙の落款に『第一義』という上杉謙信公の言葉を用いたお礼を直接伝えられてよかったです」。

戦国時代の武将、上杉謙信廟にお詣りして。「選手たちにWBCの出場交渉をした際、手紙の落款に『第一義』という上杉謙信公の言葉を用いたお礼を直接伝えられてよかったです」。

WBCでの実際の手紙の一部。

WBCでの実際の手紙の一部。


特集「空海を旅する」の記事一覧はこちら>>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2023年09月号

家庭画報 2023年09月号

撮影/鍋島徳恭 取材・文/小松庸子 取材協力/和歌山県観光連盟 北海道日本ハムファイターズ

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