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【松岡修造の健康画報】“体の研究” とはどういうものですか?研究者・伊藤亜紗先生に聞く

2023.08.17

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松岡修造の人生百年時代の“健やかに生きる”を応援する「健康画報」

障害のある人たちが語る体のままならなさや、生きていくうえでの工夫にじっくりと耳を傾け、人間の体を研究している伊藤亜紗先生。

一方の松岡さんも、パラスポーツ関連の仕事などで障害者のかたを数多く取材してきたこともあり、先生の研究に興味津津。「体は自然の一部」など、はっとする言葉満載のインタビューとなりました。前回の記事はこちら>>
松岡さんと伊藤さん

畳敷きのコーナーもある居心地のよい空間は、伊藤亜紗先生がセンター長を務める未来の人類研究センターのイベント&ラボスペース。(松岡さん)ベスト、シャツ、パンツ、ネッカチーフ、ベルト、靴/コナカ

東京工業大学 科学技術創成研究院 未来の人類研究センター長、同リベラルアーツ研究教育院教授 伊藤亜紗先生


伊藤亜紗先生

松岡さんの質問一つ一つに、丁寧に言葉を選んで答えてくださった伊藤先生。取材後、「今までされたことのない質問ばかりです。すごいかたですね」と目を丸くしていました。

伊藤亜紗先生(いとう・あさ)
1979年東京都生まれ。2010年に東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究美学芸術学専門分野を単位取得のうえ、退学。同年、同大学にて博士号を取得(文学)。日本学術振興会特別研究員を経て、2013年に東京工業大学リベラルアーツセンター准教授に着任。2016年より同教授。障害を通した人間の体の研究を軸に、自身が立ち上げた学問「利他学」も探究中。『目の見えない人は世界をどう見ているのか』『どもる体』『記憶する体』など著書多数。2020年に第42回サントリー学芸賞受賞。

“体の研究” とはどういうものですか?──松岡さん
「障害を通して、人間の体が持つ可能性のすべてを探ることです」──伊藤先生


人間の体のポテンシャルを世界中の人とともに開拓


松岡 最初に失礼な尋ね方をしますが、亜紗さんは何者なんですか?

伊藤 わかりにくいですよね(笑)。体の研究者です。

松岡 今まで、世の中にそういうかたはいたのでしょうか。

伊藤 お医者さんもある意味、体の研究者だと思いますし、人文系の学問でも体とは何かを考えてきた歴史があると思うのですが、私はもっと、一つ一つの体の違いを研究したいんです。自分の勝手な感覚としては、世界中の人が自分のポテンシャルを探ることで、人間の体の可能性すべてを開拓していければ、というイメージです。

松岡 なるほど。それで、さまざまな障害のあるかたの取材をされているんですね。僕も障害者のかたがたを取材してきましたが、そのたびに痛感するのが、人間が持つ能力を僕の何倍も生かしているということです。

伊藤 わかります。障害のある人たちは健常者とは全然違う体のポテンシャルを探り、高めていますよね。視覚のない人の中には、道を歩いているとき、顔にあたる空気の変化で十字路に出たことがわかる人もいる。顔の表面の触覚にそんな可能性があるなんて、驚きですよね。彼らの話を聞いていると、もし自分が病気や事故にあっても、教えを請える先輩がいる心強さを感じます。でも一方で、最適解は個々で導き出すしかないとも思うんですよね。

松岡 誰かが見出した答えが、すべての人に当てはまるとは限らないということですね。

伊藤 はい。同じ障害があっても、体力や筋力、優先順位は一人一人違いますよね。外出することを最優先したい人もいれば、家で本を読むことが大事という人もいる。何を優先するかで最適解も変わるので、こうすれば必ずうまくいくという王道みたいなものはおそらくないんですね。そして、自分なりの工夫をして最適解に辿り着いた人たちの話で興味深いのが、ヒントが思いがけないところにあったと話す人が多いことです。

ある摂食障害の人は、若い頃にたくさん食べて吐く習慣を獲得してしまって、ずっとやめられなかったんですが、たまたま職場を古美術関係のギャラリーから現代アートのギャラリーに変えたことが、回復の一つのきっかけになったと話してくださいました。

評価の軸が確立している古美術と違って、現代アートには「こんなのもあっていいんだ」と感じる作品がいっぱいある。それが本人にとって発想の転換になり、「ずっと目の前の木しか見ていなかったけれど、森があって、ほかの木もあると思えた」のだそうです。

完治したわけではないけれど、摂食障害と一緒に生きていく道が見つかった、と話されていました。そんなふうに、偶然選んだことや手に取ったものが病気や障害とのよりよいつきあい方を教えてくれるということは、たくさんあるんですね。そういう先の読めなさが非常に面白いと思います。

松岡 その話、よくわかります。僕も選手時代、痛めた膝が治らなくてもがいていたとき、常識的な視野の外にヒントを見つけたことがありました。
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