歌っていても涙が…平原綾香さんが語る『ムーラン・ルージュ！ ザ・ミュージカル』

名曲たちが導く素晴らしい光景

私は『ムーラン・ルージュ！ザ・ミュージカル』のオーストラリア公演を3回拝見しました。劇場に入った瞬間、セットが作り出す世界観や雰囲気に魅了されました。バズ・ラーマン監督が創り上げた映画の意志を継承しつつも、新たな魅力をまとった唯一無二の作品で、何度も観たくなります。

人を愛すること、人が生きるということ。自分の人生を全うするサティーンの姿には自然と涙が溢れました。


病気を抱えながらも弱音を吐かず、痛いとか辛いという言葉の代わりに愛を配り続けた姿は、私の父と重なりました。亡くしたばかりなので、その感覚を痛いほど身近に感じます。

サティーンの心の葛藤や、まっすぐ愛してくれるクリスチャンの存在に揺れ動く姿にも共感しますし、私は彼女の年齢とちょうど同じくらいなので、あまり役作りをせずにのぞみました。39年間の自分をしっかり注いで、最後まで演じ抜こうと思います。

昔のヒットソングや最近の流行り曲が70曲以上も使われており、時にマッシュアップされているのも、このミュージカルの魅力のひとつ。クリスチャンがその名曲たちを、まるで自分が作ったかのように披露するシーンは客席から笑いが起こります。

日本版ではミュージックシーンで活躍しているアーティストたちが訳詞を担当しており、このミュージカルにとっては世界初となる試みだそうです。曲に新たな命を吹き込んでくれたアーティストのかたがたの生き様を感じ、歌っていても涙が出ます。

私は「巨人の肩の上」という言葉が好きですが、私が遠くを見渡せたのだとしたら、それは偉大な人たちが作ってくれた偉業の上に立っているからなんですね。

このミュージカルに携わるすべての人たちの想いを胸に、この感動をできるだけたくさんのお客さまに届けたいです。

平原綾香
東京都出身。2003年『Jupiter』でデビュー。日本レコード大賞新人賞、日本ゴールドディスク大賞特別賞、日本レコード大賞優秀アルバム賞などを受賞。ミュージカルは『ラブ・ネバー・ダイ』『ビューティフル』『メリー・ポピンズ』などに出演。今回はナイトクラブ「ムーラン・ルージュ」の花形スター、サティーン役を望海風斗とダブルキャストで演じる。