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20世紀初頭の「プラチナ」を使ったジュエリー。未知なる金属の登場と変遷

2023.07.10

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これぞジュエリーの真髄 第7回(02) エドワーディアンとベルエポック、そしてプラチナ 有川一三氏が主宰する「アルビオンアート」の歴史的な芸術品の数々を、宝石史研究家の山口 遼さんの解説でご紹介するジュエリー連載。第7回は、エドワーディアンとベルエポック時代の特徴を紐解きます。前回の記事はこちら>>

未知なる金属、プラチナの変遷


プラチナという金属は、ジュエリーの世界においては全くの新参者です。自由に使えるようになってからまだ100年ちょっとですから。しかし古代から銀と混同され、プラチナとは知らずにさまざまな工芸品には使われてきたようです。有名なのはエジプトのテーベの小箱で、箱の側面に小さな自然のプラチナの塊が嵌め込まれています。こうした自然の塊がどこで取れたのかは、今でも不明です。

未知の金属だったプラチナが広く知られるようになったのは、スペインが中南米を征服してからのこと。エクアドルやコロンビアから、自然の小さな塊として欧州に送られます。英、仏、独、露の科学者がこの奇妙な金属を溶かそうと挑戦しますが、失敗。プラチナを溶かせるようになったのは、1850年前後に酸素と水素を混ぜて使うバーナーが完成し、1800度近い温度が出せるようになってからです。

さらに実際にジュエリー加工に使えるようになるのは1880~90年代のこと。これを機に極端に細い線が作れるようになり、石を留める爪が小さくなったのは前回の記事の通りです。


[ベルエポック ラクロッシュ 作]プティ・ポワンのブレスレット

1.[ベルエポック ラクロッシュ 作]プティ・ポワンのブレスレット
製作年代:1914年以降
製作国:フランス


1は刺繡の模様を模したブレスレットですが、プラチナの細い線で四角の枠を連続させた上に、ダイヤモンドを埋めた花模様を乗せたつくり。

これがすごいのは、四角を構成する線のすべてが、細い糸鋸を使って正確に切り出したものであることです。ピヤーシングという技術ですが、どんな糸鋸を使ったのか、気が遠くなるような作品です。これは金や銀ではできない、プラチナだからこそできたもの。

ダイヤモンド マーキーズ・リング

2.ダイヤモンド マーキーズ・リング
製作年代:1905年頃
製作国:イギリス(推定)


サファイアとダイヤモンドのボンブリング

3.サファイアとダイヤモンドのボンブリング
製作年代:20世紀初頭
製作国:アメリカ(推定)


2と3は、ダイヤモンドやサファイアを留める爪が小さくなったために、全体に綺麗なドーム状のデザインになっています。

注目すべきは随所に見える、プラチナの線上にある小さな点。これはミルグレインと呼ばれ、日本ではミル打ちといいますが、プラチナの線上に鏨(たがね)を使って小さな横線を打つ技術。プラチナが不必要に光るのを抑え、デザインの複雑さが増えます。作業としては極めて大変です。

[ベルエポック ショーメ 作]ピンクスのティアラ

4.[ベルエポック ショーメ 作]ピンクスのティアラ
製作年代:1905年頃
製作国:フランス


[ベルエポック]ラティスワークのティアラ

5.[ベルエポック]ラティスワークのティアラ
製作年代:1910年頃
製作国:イギリス(推定)


次はティアラを2つ。4と5はいずれも非常に細い線に注目してください。これはナイフエッジと呼ばれる技法で、正面から見るとナイフの刃のように細く鋭い線が出るところからこの名が付きました。シャープという言葉がぴったりですね。金や銀ではこの細さでは歪んでしまい、無理なのです。

ダイヤモンドボウノット・ブローチ

6.ダイヤモンドボウノット・ブローチ
製作年代:20世紀初頭
製作国:イギリス(推定)


6は表面に金属が見えないデザインの見本のような堂々とした作品。ダイヤモンドを埋め込んだリボンのブローチですが、すべてダイヤモンドだけのように見えますね。

全盛を誇ったプラチナも、1917年に主産地であったロシアに革命が起きると、次第に入手できなくなります。やがて西欧では、扱いやすい金を白くしたホワイトゴールドがプラチナにとって代わります。

[ヴァン クリーフ&アーペル 作]ダイヤモンドカスケードブローチ

7.[ヴァン クリーフ&アーペル 作]ダイヤモンドカスケードブローチ
製作年代:1950年代
製作国:フランス


過渡期のプラチナとホワイトゴールドを一緒に使った7をご覧ください。どこがプラチナでどこがホワイトゴールドなのか全く区別がつきません。

しかし何故か日本では、ホワイトゴールドはあまり受け入れられず、プラチナ信仰のまま今日に至っています。不思議なことに、日本はプラチナ王国なのです。
監修・文/山口 遼 撮影/栗本 光

『家庭画報』2023年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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