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エドワーディアンとベルエポック時代のジュエリーの特徴とは

2023.07.07

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これぞジュエリーの真髄 第7回(01) エドワーディアンとベルエポック、そしてプラチナ 有川一三氏が主宰する「アルビオンアート」の歴史的な芸術品の数々を、宝石史研究家の山口 遼さんの解説でご紹介するジュエリー連載。第7回は、エドワーディアンとベルエポック時代の特徴を紐解きます。前回の記事はこちら>>

ジュエリーが一段と華やかになった時代


1901年、英国のヴィクトリア女王が死去します。後を継いだエドワード7世は、母親が長生きしたため、即位時は既に59歳。治世は10年ほどで終わります。女王が公務からほぼ離れた1890年頃からエドワードが死去する1910年の頃までの期間を、エドワーディアンと呼びます。

この頃、フランスではやっと産業革命のようなものが起き、英国と同様に平民が富裕になる時代が来ます。ほぼ100年の遅れです。そして豊かになった人々は消費に走ります。このフランスの時代を、ベルエポック──麗しき時代と呼びます。

英国で生まれたエドワーディアンは、フランスにわたってベルエポックとなり、ジュエリー産業が花開いた時代でしたが、それまでのものと大幅に違う点があります。それは、プラチナという金属が使えるようになったことです。


この時代のジュエリーの際立った特徴は、全体に白くて端正、プラチナとダイヤモンドの多用と左右対称のつくり、ガーランドと呼ばれるデザイン、そしてナイフエッジと呼ばれる極度に細い線。さっそく作品を見てみましょう。

ガーランドスタイルペンダント

1.ガーランドスタイルペンダント
製作年代:1905年頃
製作国:イギリス(推定)


[ベルエポック ショーメ 作]ガーランドスタイル ストマッカー

2.[ベルエポック ショーメ 作]ガーランドスタイルストマッカー
製作年代:1906年頃
製作国:フランス


1はおそらく英国のもの、2はショーメが作ったもの。見事なまでに左右対称、いたるところにガーランドのデザインが見て取れます。ガーランドとは花綱という意味で、小さな花模様を連続して線状に作るデザインです。

ダイヤモンド・ラヴァリエール

3.ダイヤモンド・ラヴァリエール
製作年代:1910年頃
製作国:イギリス(推定)


3はペンダントの中央部から花状の房が2つ垂れ下がっています。こうしたデザインをラヴァリエール、あるいはネグリジェと呼びますが、これも左右対称。

[ブシュロン 作]ダイヤモンド・ドッグカラーネックレス

4.[ブシュロン 作]ダイヤモンド・ドッグカラーネックレス
製作年代:1910年頃
製作国:フランス


4は首まわりから上に向かって立ち上がるような形のネックレス。犬の首輪に似ていることからドッグカラーと呼びますが、これはダイヤモンドを繫ぐ線の細さを見てください。

これまでダイヤモンドを留めるための白い金属は銀でしたが、銀は柔らかく、石が落ちるのを防ぐには太い爪が必要でした。しかしプラチナの登場で、すっきりと細い爪で済むようになったのです。これはそうした技術のよい例といえます。

[ジョルジュ・フーケ 作]アクアマリンとトルマリンの翼を広げたモティーフのストマッカー

5.[ジョルジュ・フーケ 作]アクアマリンとトルマリンの翼を広げたモティーフのストマッカー
製作年代:1901年頃
製作国:フランス


もちろんこの時期、すべてがプラチナになったというわけではありません。5はゴールドです。アクアマリンとトルマリンを、ダイヤモンドを埋めた細い枠で取り巻いた左右対称のデザインで、アール・ヌーヴォーで活躍する天才フーケにしては珍しいつくり。

[アンリ・ヴェヴェール 作]オパールと宝石をセットしたブローチ

6.[アンリ・ヴェヴェール 作]オパールと宝石をセットしたブローチ
製作年代:1905~1910年頃
製作国:フランス


6はフランスの名工アンリ・ヴェヴェールの作品。オパール、ルビー、ガーネットという華やかな宝石を使い、その周りを、ダイヤモンドを埋め込んだプラチナの線で取り巻いています。ほとんど見えないプラチナの爪の細さに注目してください。

これほどにデリケートで端正なデザインのジュエリーがどうしてこの時代に登場したのかといえば、やはり顧客のレベルが上がったからとしか思えません。

ヴィクトリア朝時代の新しい顧客は、どんなジュエリーでも飛びついた。それが数十年の年月を経て、より繊細なものを理解し、求めるようになった。そこにプラチナと豊富なダイヤモンドが登場した、という時代の流れが感じられます。

これぞジュエリーの真髄

監修・文/山口 遼 撮影/栗本 光

『家庭画報』2023年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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