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〔女性外来を訪ねて〕患者の症状の背景にあるストレスや無理に気づくことが第一歩

2023.07.12

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天野惠子先生のすこやか女性外来 第14回(04)日本の女性医療、性差医療の先駆者で、ご自身の更年期体験も山ほどお持ちの、天野惠子先生の連載「すこやか女性外来」。今回は、天野惠子先生が推薦する全国・女性外来を紹介します。

【天野惠子先生が推薦】全国・女性外来を訪ねて
回生病院 女性漢方外来・ペインクリニック科 野萱純子先生


●前回の記事
目の病気の原因は「加齢」だけではありません。知っておきたいリスクと対策

背景にあるストレスや無理に気づくことが第一歩
長引く痛みに漢方的診断・漢方薬を駆使



野萱純子先生

野萱純子先生(のがや・じゅんこ)
香川医科大学卒業。同附属病院麻酔・ペインクリニック科講師(2008年まで)、同女性外来診療部勤務(2021年まで)。麻酔、疼痛治療、緩和医療に従事し木下優子先生に漢方医学を師事。2008年回生病院に赴任、女性漢方外来・ペインクリニック科開設。在宅診療 敬二郎クリニックに週1回勤務。2022年より香川大学医学部臨床教授。

漠然とした痛みのメカニズムを探っていく


野萱純子先生の専門は疼痛治療。性差医療や漢方の知識も生かし、月経困難症や更年期症状、特に慢性痛に対応しています。

「人にわかってもらえないつらさや原因が不明な不安が症状を強く感じさせ長引かせる」と話す野萱先生が心がけるのは、本人が理解し安心できる医療。

経路人形治療に使うツボを説明する際に用いる経絡人形。

「痛みがいつどのように始まったかを伺うと、たいていストレスや体の無理が関係しています。まずご自身が痛みのバックグラウンドに気づくことが不調を脱する糸口になります。同時に西洋医学的な検査や所見に漢方的な診断を重ね、痛みのメカニズムを探っていきます」

炎症か神経過敏か、冷えか瘀血(おけつ=血流の滞り)か、メンタルの影響か――。漠然とした痛みの正体が露(あら)わになると本人も納得して治療に臨めるといいます。

近赤外線療法痛みの神経伝達をブロックする近赤外線療法。首の星状(せいじょう)神経節に当てると自律神経の安定をもたらす。

神経ブロックの注射液と注射器。神経ブロックの注射液と注射器。

消炎鎮痛剤や近赤外線療法、神経ブロック療法のほか、漢方薬は欠かせません。「温めるときは桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)、血流改善に疎経活血湯(そけいかっけつとう)、ストレス軽減に四逆散(しぎゃくさん)など体質や痛みの性質に合わせて使える漢方薬は疼痛治療にとても効果的です」。

診察室応接間のような椅子や絵画で、患者の緊張がほぐれるよう配慮の行き届いた絨毯敷きの診察室。

在宅医療の経験を通して更年期の大切さを実感


更年期女性が訴える痛みの中で目立つのが関節痛。骨が華奢なのに家事などで手を酷使するため腱鞘炎やヘバーデン結節にもなりやすいのです。

「ペットボトルや瓶のふたは素手でなく道具を使って楽に開けましょう。痛みや不調はできるだけ予防し治療して更年期を生き生きと過ごしていただきたいですね」。

アロマアロマテラピーには痛みで忘れがちな幸福感を補う効果がある。

よりよい更年期の先に幸せな老年期がある――。高齢者の在宅診療にもかかわる野萱先生の言葉には説得力があります。

Information

社会医療法人財団 大樹会 総合病院 回生病院

香川県坂出市室町3‐5‐28

天野惠子先生のすこやか女性外来

1「更年期は女性の体の“変化のはじまり”」
1−1 更年期と“その後”の元気のために、体の変化を知りましょう
1−2 女性の健康の守り神・エストロゲンがゼロになったら、生活習慣で補いましょう
1−3 更年期の不調や病気予防に! 女性医療の先駆者が教える生活習慣の「基本5か条」
1−4 女性外来を訪ねて「伊豆美レディスクリニック」

2「だるさ、頭痛、冷え、動悸も。更年期の不調は全身に」
2-1 10年間、我慢するのはもったいない。自分に合う対処法を見つけましょう
2-2 更年期の症状が全身に出るのはなぜ? 訴えの多い10の不調と対処法
2-3 更年期症状の程度を知り、適切な対処法を。専門医も使う簡易テストでセルフチェック!
2-4 女性外来を訪ねて「春日クリニック」

3「不眠、イライラ、うつ、思考力低下。更年期は心も脳も不安定」
3-1 不眠、イライラ、うつ、思考力低下…。更年期のメンタルの不調を正しく知ろう
3-2 更年期のメンタルヘルスを左右する3つの物質とは。減少すると起こる不調は?
3-3 更年期のメンタルを改善するには? 症状に応じた漢方薬や生活習慣の見直しを
3-4 女性外来を訪ねて「こころとからだの杉本クリニック」

4「女性の元気を支える“骨・筋肉・血流”の三本柱」
4-1 更年期以降の人生を健やかに過ごすには、“骨・筋肉・血流”の三本柱が大切です
4-2 骨量と筋肉量は何歳からでも改善できる! まず年齢による変化を知りましょう
4-3 脳と心臓の健康を保つカギは「血流」。動脈硬化を防ぐために注意したい3つのリスク
4-4 女性外来を訪ねて「和歌山ろうさい病院 女性専門外来」

5「骨粗しょう症を予防し、“転んでも折れない骨”をつくる」
5-1 骨粗しょう症を予防するために、骨量維持は更年期女性の重要な“ミッション”!
5-2 “女性であること”が骨粗しょう症のリスク!? 骨量減少に気づくために5年に1度の骨密度検査を
5-3 骨は自分でつくるもの。骨粗しょう症を防ぐために、実践したい食事と運動とは?
5-4 女性外来を訪ねて「アットホーム表参道クリニック」

6「“高血圧なんて関係ない”は大きな間違い。今から減塩を」
6-1 自分には関係ないと思っていませんか? 更年期以降、誰にも高血圧のリスクが生じます
6-2 加齢とともに女性の血圧は3段階で変化します。自分の“高血圧リスク”を知って対策を
6-3 血圧を下げるための7か条とは? 自然に減塩できる野菜スープのレシピも
6-4 女性外来を訪ねて「山梨県立中央病院 女性専門家」

7「心筋梗塞や狭心症のリスクを高める女性の糖尿病」
7-1 女性の糖尿病は男性以上に高リスク! 更年期以降は血糖値を上げない生活を
7-2 血管に及ぼす影響は大! 女性こそ注意すべき「糖尿病」とはどんな病気?
7-3 自分の“糖尿病リスク”を知って、今から対策を! 実践したい生活習慣もご紹介
7-4 女性外来を訪ねて「ソフィア北円山クリニック」

8「女性の脂質異常症は、過剰に怖がらなくて大丈夫」
8-1 コレステロールも中性脂肪も必要な栄養素!? 性差で考える“女性の脂質異常症”
8-2 更年期以降の女性は脂質異常症になりやすい体に。コレステロールが増えても慌てないで!
8-3 コレステロールは自力でコントロール! 薬の前に生活習慣を改善しましょう
8-4 女性外来を訪ねて「順天堂大学医学部附属浦安病院 女性専用クリニック」

9「更年期から気をつけたい心臓の血管にかかわる病気」
9-1 更年期以降増え始める女性の「狭心症・心筋梗塞」。気をつけたい心臓の血管にかかわる病気
9-2 更年期以降気をつけたい「狭心症・心筋梗塞」とはどんな病気? 男性との違いも解説
9-3 狭心症・心筋梗塞の症状には性差が! 女性の症状は広範囲に及び、診断されにくい
9-4 女性外来を訪ねて「高知いちょう医院」

10「動悸は更年期以降によくある症状。心配のいらない加齢現象です」
10-1 動悸は自律神経の乱れで生じる、更年期症状の一つ
10-2 「動悸・息切れ、不整脈」は中高年女性に多く、精神的ストレスの影響も
10-3 動悸・息切れが起きたときの対処法や予防法
10-4 女性外来を訪ねて「西松園内科医院」

11「20年後、30年後の元気のために更年期から脳卒中の予防を」
11-1 くも膜下出血は女性に多い。50歳になったら全身の健康チェックを行いリスクを洗い出しましょう
11-2 脳卒中には血管が詰まるタイプと破れるタイプがある
11-3 家族歴のある女性は特に気をつけたい「くも膜下出血」
11-4 女性外来を訪ねて JCHO久留米総合病院 女性総合診療科「なでしこ」

12「今から始める認知症対策。恐れるより、まず知ることからを」
12-1 女性はリスクが高いからこそ、“ならないための心がけ”が大事。予防の一歩は正しい知識から
12-2 認知症の7割近くはアルツハイマー型認知症
12-3 更年期の物忘れは、認知症とは違います
12-4 女性外来を訪ねて「岡山中央病院セントラル・クリニック伊島 ウィミンズメディカルセンター」

13「認知症は“生活習慣病”です。予防のために今、できること」
13-1 認知症は“生活習慣病”です。日常生活の改善と難聴対策も忘れずに
13-2 研究からわかった認知症のリスク要因
13-3 天野先生がすすめる5つの認知症予防策
13-4 女性外来を訪ねて「京都大学医学部附属病院 産科婦人科 ヘルスケア外来」

14「更年期から気をつけたい目の病気白内障、緑内障、ドライアイ」
14-1 更年期から気を付けたい3つの目の病気。50歳を過ぎたら毎年眼科検診を
14-2 更年期から気をつけたい白内障、緑内障、ドライアイ
14-3 目の病気の原因は「加齢」だけではありません。リスクと対策
14-4 女性外来を訪ねて「回生病院 女性漢方外来・ペインクリニック科」

*NPO法人性差医療情報ネットワーク「女性外来マップ」では、女性外来を開設している医療機関(2018年現在約300か所)のリストを公開。 URL:http://www.nahw.or.jp/hospital-info *「女性外来オンライン」(天野惠子先生主宰)では、天野先生ご自身が厳選した女性の健康の回復や維持に役立つ信頼性の高い情報を発信している。 公式サイト「女性外来オンライン」:https://joseigairai.online/ YouTube「女性外来オンラインチャンネル」はこちら>>
取材・文/浅原須美 写真提供/回生病院

『家庭画報』2023年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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