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『小説小野小町 百夜』絶世の美女の本当の姿は?髙樹のぶ子さんインタビュー

2023.07.13

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〔今月の本/美しき平安雅文〕
『小説小野小町 百夜(ももよ)』髙樹のぶ子 著

髙樹のぶ子

髙樹のぶ子(たかぎ・のぶこ)
1946年山口県生まれ。東京女子大学短期大学部卒業。1984年「光抱く友よ」で芥川賞、1995年『水脈』で女流文学賞、1999年『透光の樹』で谷崎潤一郎賞など受賞多数。前著の『小説伊勢物語 業平』は泉鏡花文学賞、毎日芸術賞をW受賞。2009年紫綬褒章、2017年旭日小綬章を受章。2018年文化功労者に。

平安の世を見事に生ききった小野小町の人生を描く


平安時代初期に編まれた『古今和歌集』の序文に記された六歌仙の一人で、絶世の美女と謳われた小野小町。生没年が不詳で、全国に生誕地や墓所などが点在する伝説の存在でもある。髙樹のぶ子さんが、そんな小野小町の一生を描いた。


「東北地方に生まれながら都に上がり、歌で名をなし、帝の寵愛を受けて栄華を極めたのちに故郷に落ちぶれて孤独の中で亡くなった、つまり若いときはちやほやされたけれど晩年は悲惨だったというのが、観阿弥の能『卒都婆小町』などをもとに、後世に伝えられている小町の一生です。

タイトルにもある“百夜(ももよ)”は、小町が自分に思いを寄せる男に“百夜通ってくれば共寝してもいい”という無理難題を突きつけて、百夜目にその男が悲劇的な死を迎えてしまうというエピソードですが、そうした冷淡な女性というイメージもつきまといます。

けれども私は、地方から出てきて最初はコンプレックスだらけだった幼女が健気に頑張って成長し、都で立派に思いを遂げて、最後に故郷に戻り静かにこの世を去ったという、見事な人生を送った女性として書き換えたいと考えました」

髙樹さんは2020年、同じ六歌仙の一人、在原業平を題材とした『小説伊勢物語 業平』(日本経済新聞出版)も手がけている。

「業平は好色で女たらしというイメージが定着していますよね。美男で女性にもてたから、嫉妬ややっかみもあったのでしょう。でもそれだけではなく、業平がいかに素晴らしい歌人だったかということを伝えたかったのです。

この本を書き終えてから3年かけて執筆したのが、『小説小野小町 百夜』です。私は、業平は“雅”、小町は“あはれ”という、現代に通じる日本の美の源流を確立したと考えています。この2冊で、平安という同時代を生きた美男美女である業平と小町の名誉を回復できたのではないかと思います」

2つの物語を表現するため、髙樹さんは独自の“平安雅文”を生み出した。

「文章が耳から入るようなイメージを大切にしています。リズムよく流れながらも、人の心に何かを残す。そのため、漢字の熟語にやまと言葉のルビを振ったり、拗音や促音を極力使わなかったり、体言止めを駆使したりなど、細かな工夫をしています。流れに乗って読み進みながら、平安の世界観を感じていただけたらと思います」

四季折々の花や貴族の暮らしが“平安雅文”により生き生きと描写される。

「幼い小町が満開の卯の花とともに都に上がり、帝と近づきになるときには撫子が咲いているなど、小町の一生を四季にたとえて表現している点も、お楽しみいただけると嬉しいです」

小説小野小町 百夜(ももよ)

装幀/芦澤泰偉 装画/大竹彩奈

『小説小野小町 百夜(ももよ)』
髙樹のぶ子 著/日本経済新聞出版


平安時代を生きた六歌仙の一人、小野小町の生涯を辿った物語。日本画家・大野俊明氏によるカラー挿絵が彩りを添え、平安貴族の世界へと誘う。各場面に差し挟まれた小町の歌が、心情とともにいっそう味わい深く響く。題字は、髙樹さんのご令妹の書家、村田順子氏が担当。

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構成・文/安藤菜穂子

『家庭画報』2023年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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