福井の食や文化の発信地に。黒龍酒造が手がける複合施設「エシコト」

【福井】歴史ある「本物」を未来へつなぐ洗練の発信地を巡る

「アコヤ」のアラカルトメニューから。手前はスモークしたサクラマスと地野菜のサラダ1320円、奥はジャージー牛頬肉の赤ワイン煮込み3300円、それぞれ料理に合う日本酒をペアリング。「永（とこしえ）」（右）は酒蔵直結ならではの夏の限定生酒。

〔永平寺町〕エシコト

高床式の平屋で、九頭竜川を見下ろす高さに建てられた「酒樂棟」は緑に溶け込むスタイリッシュな外観がひときわ目を引く。

育む風土を眼前に「日本酒」を堪能。酒蔵は至福のテーマパーク

眼の前には、季節ごとに表情を変える里山の景色、そして豊かな水を湛えて滔々と流れる九頭竜川が広がります。禅の修行道場として知られる永平寺を擁するこの地に「エシコト」が誕生したのは、2022年6月。国内外で人気の高い日本酒「黒龍」の製造元である黒龍酒造が手がける複合施設が、開業と同時に注目を集めています。

欧米の銘醸ワイナリーに想を得て「日本酒をつくり、販売するだけではなく、食や風土も含めてプレゼンテーションできる場所にしたい」と立ち上げたプロジェクトは構想に費やすこと10年。約3万坪もの広大な敷地にまずオープンしたのが「酒樂（しゅらく）棟」（写真上）、さらに貯蔵セラーやイベントスペースを備えた「臥龍（がりゅう）棟」があります。

ガラス張りのモダンな「酒樂棟」は、レストランと酒ショップという2つのセクションに分かれています。

レストラン「アコヤ」でいただけるのは、福井の新鮮な食材をふんだんに使ったフレンチと、酒をテーマにした焼き菓子やパフェなどのスイーツ類。また、酒ショップ「石田屋」にはここに足を運ばなければ購入できない特別限定酒も揃っており、カウンターではテイスティングを楽しむことができます。

「福井の、ひいては北陸の食や文化の発信地にしたいと思っています」と、案内してくれたマネージャーの水野真悠さんは言います。

来春の北陸新幹線開業を控え、将来的にはオーベルジュなども加わる予定とか。まだまだ進化の途上にある「エシコト」。老舗酒蔵が描く、そう遠くはない未来の姿に期待が募ります。

左・大吟醸の酒粕を使ったソフトクリーム600円は、酒粕の香りほのかなバニラ風味。右・蕎麦王国・福井らしい焼き菓子。蕎麦粉のロールケーキ（4カット分）2200円。 

アコヤに集結した精鋭のスタッフたち。左から2人目が黒龍酒造の次代を担う水野さん。

壁面には越前和紙、テーブルには県産の杉の一枚板が使われている。

左上・福井産「黄金の梅」を使った梅酒。しずく形ボトルは贈り物にも最適。「ESHIKOTO梅酒25 佐藤卓」300ml 8800円。左下・越前の土の特徴を生かした薄さ、シャープさが持ち味。片口8140円。ぐい呑み6175円。右・「臥龍棟」のセラーで瓶内二次発酵させたスパークリング日本酒「ESHIKOTOAWA2020 Extra Sweet」1万3200円。テイスティングも可。

景色を眺めながら多彩な個性を飲み比べ。テイスティングは4種から3種をセレクトできる。1800円（単品600円）。左からスパークリング「ESHIKOTO AWA2020 Extra Sweet」、日本酒「永五百万石」、「ESHIKOTO梅酒13」。