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7月の花 白蓮「伊豆の山居にて」戸田博さん連載・季節の茶花

2023.06.19

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谷松屋戸田商店 季節の茶花 谷松屋十三代目当主の戸田 博さんが、茶席の花について語ります。7月の花は「白蓮(しろはす)」です。前回記事を読む>>

7月 白蓮(しろはす)
伊豆の山居にて


語り/戸田 博


一年を通して、いちばん好きな花といえば蓮。そしてもう少し早い時季、初夏の大山蓮華でしょうか。この2種の花が私にとっては双璧で、そういえばどちらも白い花です。

白蓮


花に止まり、羽を休める蝶。山居の蓮池にて、幾重にも波のように広がる荷葉のあいだから、白い花がまっすぐに伸びている。その花の香に誘われて蜂や蜻蛉(とんぼ)、蝶などが集い、池の周りを飛び交う様は、さながら天上の楽園のようである。

絵に描かれている蓮の花を見ても綺麗だなと思うし、生きた花を目の前にすると、その美しさに思わず手を合わせてしまうほど。

この季節にはどうしても欲しいと思い、伊豆にある山居の庭に大きな蓮池を造って楽しんでいます。3月頃には根起こしをし、植木屋さんとどう配置するかなどを相談しながら植え直し、開花を心待ちにしているのです。早いものは5月頃から咲き始めますが、盛りはやはり7月頃になります。

蓮といえば、5月の花の回でお話ししたように経筒花入などに入れて、追善の茶に使う茶花のイメージがあります。追善イコール蓮ということから、蓮イコール追善と捉えがちです。しかし、これは茶の湯がもたらした弊害の一つといいましょうか、形骸化された観念です。

そんなことよりも今、庭に咲いている蓮が美しい、だからそれを入れただけ、でよい。本来、お茶の花ってそういうものですから。

咲き始めた白蓮と表情豊かな荷葉一輪二葉の美しさを一直線に入れる

咲き始めた白蓮と表情豊かな荷葉 一輪二葉の美しさを一直線に入れる
白蓮
染付梅瓶(そめつけめいぴん)中国・明時代
庭の蓮池から白蓮ひと花を選び、中国の染付に入れる。梅瓶と呼ばれるやや肩の張った瓶子(へいし)の濃い青色が、蓮の白さをさらに際立たせている。口が小さな花器を使うことで、すっくと立ち上がる蓮の姿をより印象づける効果も。


そんなわけで、今月は茶室にこだわらず、暮らしの中の空間で、今の季節いちばん美しいと思う蓮の姿を追っていこうと思います。

わが山居には親しい友が隣の敷地で暮らしています。稲葉 京(いなば たかし)という人物で、これまで話題にしてきた花の名手とは彼のこと。本連載で花を入れている戸田商店の小林 厚の師でもあります。私と偶然同い年で、思えばすでに30年ほどのつきあいになりますが、花のみならず、アートのこと、料理、部屋のしつらい、空間の捉え方など、私にとっては多角的に刺激を与えてくれる大切な友人です。今回は、彼の住空間の中で、小林が蓮と向かい合い、存分にその魅力を引き出してくれています。

清々しい山の気に満ちた朝、白や薄紅の花が咲き誇る庭の池から、稲葉くんと小林は二人して蓮を選びに行きました。久しぶりに再会した師弟が一緒になって手折った白い蓮のひと花。小林が丁寧に水揚げをし、蓮池の姿そのままに中国の染付に入れました。
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