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連載・季節の賞翫(しょうがん)飾り花 七夕──朝顔と唐糸草を夏の夜空の恋人に見立てて

2023.06.22

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季節の賞翫 飾り花 造花工藝作家の岡田 歩さんが綴る、四季折々の行事と草花の物語を月に1回、12か月紹介する連載です。一点一点丁寧に、創意工夫を凝らして作った飾り花を賞翫しましょう。 ※賞翫/良い物を珍重し、もてはやすこと。物の美を愛し味わうこと。

7月 今宵出会う、朝顔と唐糸草


文=岡田 歩(造花工藝作家)

夏至を迎え、日に日に暑さを増し、夏は盛りへと。

朝露をたたえた草花の煌めき。照りつける陽射しを浴びながらいただく氷菓子。静寂の中に夜風とともに聞こえてくる、さらさらと流れるような木々や草花の葉擦れの音。


五感で感じるもの、食べるもの、肌に触れるものすべてに涼を求めたくなる季節。透明感にあふれた朝顔と唐糸草(からいとそう)を七夕(しちせき)の節句の飾り花としてこしらえました。

造花工藝作家岡田歩さんの飾り花

七夕の習わしも他の節句と同様に諸説ありますが、中国から伝わる「乞巧奠(きこうでん)」と、日本古来の「棚機津女(たなばたつめ)」の神様への信仰や儀礼などが、長い歴史の中で結びつき、今の日本に伝えられている行事の形となったそうです。

「乞巧奠」は、日本でもよく知られていますが、織女(しょくじょ)と牽牛(けんぎゅう)が天の川を渡り、年に一度だけ会うことが許されたという伝説をもとに、詩歌管弦・裁縫・習字などの芸事の上達を、七夕の空に輝く2人の星座に祈る行事と聞きます。

旧暦の7月7日頃に夜空を見上げると「織女星(こと座の1等星ベガ)」と「牽牛星(わし座の1等星アルタイル)」の2つの星が、天の川をはさんで、一年のうちで一番美しく煌めいて見えるといわれています。

造花工藝作家岡田歩さんの飾り花朝顔は、花筒と花弁の6つのパーツを1mmほどの糊代で繋ぎ合わせ、花の形に仕上げました。織女と牽牛の和合を願い、唐糸草の一番濃い色に調和するように、朝顔の花弁を染めています。

ある時のこと、私は朝顔の異名に「牽牛花(けんぎゅうか)」や「牽牛子(けんごし)」という呼び名があることを識りました。その由来は、「朝顔の種子は牛と取引されるほど価値のある漢方薬だった」という説や「朝顔を牛車に積んで売り歩いた」という逸話、また「ちょうど牽牛星が姿を現す七夕の頃に朝顔が咲き始める故に……」など、様々あります。

私は日ごとに牽牛の姿を朝顔の花に重ね、想像を膨らませるようになりました。朝顔の飾り花であれば、布や紙でこしらえる細工物だからこそ、夜まで咲き続ける「牽牛花」の姿を叶えることができると思ったのです。

朝顔の花が涼しげに咲くのと同じ頃、「唐糸草」が光り輝く絹糸のような紫みを帯びたピンクの穂状の花を咲かせます。風に揺れるその姿は、まるで美しく可憐な女性のよう……。その佇まいに想を得て、唐糸草を織女に、そして朝顔を牽牛に見立て、麻の糸巻きの筒を花器として「七夕の飾り花」に仕上げました。

造花工藝作家岡田歩さんの飾り花唐糸草は、絹の布を細長くテープ状に裁断し、横糸を一本一本、手作業で抜き、フリンジ状にしたものを用いてこしらえました。唐糸草の穂の色は、茎となる部分を中心に内側から外側に向かって濃くなるようにグラデーションに染めています。

現代では、時間の流れも早く、コミュニケーションツールの発達とは裏腹に、人と人の直接的な心の交流が希薄になっているように感じます。会える頻度や時間の長さ、空模様にも左右されることなく、大切な人たちと会えた時は真心を持って向き合いたい……そんな私なりの願いを込めた飾り花です。

岡田 歩(おかだ・あゆみ)

岡田歩さん 造花工芸作家造花工藝作家
物を作る環境で育ち幼少期より緻密で繊細な手仕事を好む。“テキスタイルの表現”という観点により、独自の色彩感覚と感性を活かし造花作品の制作に取り組む。花びら一枚一枚を作り出すための裁断、染色、成形などの作業工程は、すべて手作業によるもの。
URL:https://www.ayumi-okada.com
撮影/大見謝星斗 スタイリング/阿部美恵 撮影協力/AQ PRIME駒沢
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