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がん治療の選択に際しては、自身の希望、不安や体調を主治医や医療者に率直に伝えて

2023.06.16

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がんまるごと大百科 第6回【治療の選択編】(03) がんと診断されたとき、納得して自分に合う治療法を選ぶためには、情報収集や医療者とのコミュニケーションが大切です。治療の選択にかかわる重要なポイントを国立がん研究センター がん対策情報センター本部の若尾文彦先生に伺います。前回の記事はこちら>>

病状を知り、思いを話して医療者とともに治療を考える


若尾文彦先生(わかお・ふみひこ)
若尾文彦先生

国立がん研究センター がん対策情報センター本部 副本部長。横浜市立大学医学部卒業。1988年、国立がんセンター中央病院に入職。放射線診断部医長、がん対策情報センターセンター長などを経て、2023年より現職。信頼できるがん情報の発信と普及、がん対策評価などに取り組む。

自分が大事にしていることや不安を整理して伝える



治療の選択にあたっては「単に説明を受けて同意するのではなく、自分の希望や大切にしたいことを伝えてください。もちろん希望どおりにならない場合もありますが、まずは伝えたうえで医療者にも一緒に考えてもらうことです」。

例えば、“治療に時間がかかってもいいので、体に負担のない方法を選びたい” “外来の抗がん剤治療は午前中に受け、午後は出勤したい” “仕事で手を使うから手のしびれが出る抗がん剤は避けたい” “子どもの結婚式があるので治療のタイミングを考慮してほしい” “子どもが住む地域で治療を受けたい” といった具体的な要望を早い段階で述べておくことが自身が納得できる治療につながります。

「人生で大事にしていること、優先させたいことを書き出して整理することをお勧めします。また、聞きたいこと、伝えたいこともメモにし、受付や医師に渡すといいと思います」。

若尾先生は、脱毛や爪の変色といった治療による外見(アピアランス)の変化に関しても「あらかじめ情報を得て、対策を確認し、他の治療法の選択肢についても知ることが大切」と強調します。

将来子どもを持ちたいのであれば、治療前に性生活や妊娠・出産への影響、卵子や精子の凍結保存の可能性なども確認する必要があります。異なる専門性を持つ医師の意見を聞きたいならセカンドオピニオンを利用しましょう(下「関連情報はココに!」参照)。

がんの進行期や標準治療が今一つ理解できない、希望がまとまらない、親や子どもへの伝え方に迷う、セカンドオピニオンの手順や病院がわからない、治療費が心配......といった相談は、医療者に率直に伝えましょう。

がん診療連携拠点病院等に設置されている、がん相談支援センターでは患者や家族が予約なしで、またその病院で治療を受けていなくても相談できます。

若尾先生は「がんと診断されたときには、“当たり前・あわてない・焦らない・あきらめない”の4つの“あ”が大事です」と話します。

「ショックを受け、不安になるのは当たり前で、泣いても周囲につらいと話してもいいのです。そして、あわてて仕事を辞めず、仕事が続けられるよう治療法を選んで、勤務先の支援も求めましょう。焦って不確かな情報に飛びつくことなく、情報を見てあきらめないで。落ち込んだときにはご家族や友人に気持ちを伝え、医療者に相談してください」。



【がん情報さがしの10ヵ条】
国立がん研究センターがまとめたがんに関する情報を探すときに心がける10のポイント


(1)情報は“力”。あなたの療養を左右することがあります。活用しましょう。

(2)あなたにとって、いま必要な情報は何か、考えてみましょう。
解決したいことは? 知りたいことは?悩みは? メモに書き出して。
*下記URL「がんと診断されてから治療が始まるまで」に質問の例が出ています。

(3)あなたの情報をいちばん多く持つのは主治医。よく話してみましょう。

(4)別の医師の意見を聞く「セカンドオピニオン」を活用しましょう。

(5)看護師、ソーシャルワーカー、薬剤師など医師以外の医療者にも相談してみましょう。

(6)がん診療連携拠点病院のがん相談支援センター、患者団体など質問できる窓口を利用しましょう。

(7)インターネットを活用しましょう。
わからないときは、家族や友人、がん相談支援センターに頼みましょう。

(8)手に入れた情報が本当に正しいかどうか、考えてみましょう。
信頼できる情報源か、商品の売り込みでないか、チェックして。

(9)健康食品や補完代替医療は、利用する前によく考えましょう。
がんへの効果が証明されたものは、ほぼ皆無。有害なものもあるので要注意。

(10)得られた情報をもとに行動する前に、周囲の意見を聞きましょう。
主治医は? 家族は? 患者仲間は?あなたの判断の助けになります。

(「がん情報さがしの10カ条」2008年版を編集部で一部改変)




【関連情報はココに!】
がんと診断されたときの情報収集に「がん情報サービス」を利用しましょう


●がん診療連携拠点病院・がん相談支援センターを探す>>
がん情報サービスサポートセンター:0570-02-3410(ナビダイヤル平日10時~15時)

●診断と治療
がんと診断されたあなたに知ってほしいこと>>


●患者必携
がんと診断されてから治療が始まるまで>>


●治療にあたって
セカンドオピニオン>>




がんまるごと大百科

1「女性の2人に1人はがんにかかる時代です」
1−1 2人に1人はがんにかかる時代、正しい情報を知りましょう
1−2 男性よりひと足早く、30歳過ぎから増える女性のがん患者。その理由は?
1−3 早期発見なら多くのがんは助かる病気。かかることを想定してリスクに備えましょう

2「5つの健康習慣を実践してがんをできるだけ予防する」
2−1 女性のがん要因として最も多いのは「感染」。がん予防につながる5つの健康習慣とは
2−2 がん予防にはまず禁煙や節酒を! 嗜好品の摂り方をチェックしましょう
2−3 がんのリスクが約4割下がる5つの健康習慣。運動を欠かさず、適正体重を保ちましょう

3「早期発見に役立つ根拠のある検診を受ける」
3−1 がん検診を正しく利用してがんによる死亡リスクを減らす
3−2 目的はがんを早期に発見し適切な治療をすることでがんによる死亡を減らすこと
3−3 国が推奨する検診を基本に自分のがんリスクに応じた検診を賢く選んで受ける

4「納得できる治療のために病院選びのポイントを知る」
4−1 自分のがんの状態について把握するのが第一歩
4−2 医療体制だけでなく、生活支援や地域連携、情報公開も選択のポイント
4−3 がん診療連携拠点病院等では医療・生活支援体制が整っている

5「診断や治療選択に欠かせない検査の重要性を理解する」
5−1 どのような目的のもと、どんな精密検査が行われるのか理解する
5−2 特定の検査だけを信頼せず、さまざまな診療情報をもとに総合的に診断していく
5−3 がんの広がりを調べることで決まってくる「病期」は治療選択の際の重要な目安に

6「病状を知り、思いを話して医療者とともに治療を考える」
6−1 現状を理解し、治療や生活の見通しを立てる
6−2 自分のがんの状態や標準的な治療法を理解することが治療選択の第一歩
6−3 自身の希望、不安や体調を主治医やほかの医療者に率直に伝える
イラスト/にれいさちこ 取材・文/小島あゆみ

『家庭画報』2023年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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