今から見頃、神秘的で美しい「ハス」の観賞ポイント。花後の姿にも注目して

ハス

花弁の先端が紅色に染まる花は、気品があり見惚れるほどの美しさ。すっと尖った美しいつぼみにもご注目を。

■属科・タイプ：ハス科の宿根草
■花期：6月下旬〜9月

■草丈：50〜100cm

神秘的な美しさの中に、クスッと笑えるポイントが！

そろそろハスが大きな花を咲かせる時期です。ハスは池など水中の土中に塊茎をつくり、そこから茎を伸ばして水面に葉を浮かべ、花を咲かせる水生植物。住宅街の散歩では滅多に見かけることはありません。城下町にお住まいで、お堀にハスが咲いている光景を毎年眺めることができるかたをとても羨ましく思います。

全国のハスの名所にはお寺も多くあり、最近では観光ガーデンでもハスを栽培しているところがあるので、ぜひ開花時期に訪ねてみてください。少し遠出をしてでも見ておく価値のある花だと思います。

ハスは仏教の世界とつながりの深い花です。以前、お寺の住職さんから聞いた話が印象深く、今でもよく覚えています。人はあの世に行くと、毎日1枚ずつハスの花弁に姿が変わり、7週間＝49日で完成形のハスの花になって極楽浄土に行けるというもの。以来、ハスの花弁は全部で49枚と頭にインプットされましたが、実際には少し違うようで…。

ハスの苗の生産者さんに伺うと、一重咲きは25枚以下、半八重咲きは26～49枚、八重咲きは50枚以上というのがおおまかな分類だそうです。ということは、住職さんが話してくれたハスは半八重咲きの種類ということですね。

水面に伸びた花茎の大きな蕾が開いていくさま、透き通るような花色の大きな花を見れば、その厳かで神秘的な美しさに圧倒され、仏教の世界を象徴する花の一つであることに大いに納得がいきます。


花の中心の飛び出している部分が花托。穴がたくさんあいたジョウロの口をハス口と呼ぶのはこの形に由来しています。

ハスの花はどのアングルから見てもきれいなのですが、花がよく開くと花心まで見えます。その花心を花托（かたく）といいますが、とてもユニークな形で、私はこれを見るといつもくすっと笑ってしまいます。

花弁が落ちるとその花托がどんどん大きくなり、タネがついてハチの巣のような形になり、果托と呼ばれるようになります。それがまたなんともアーティスティックな雰囲気で、珍しさから切り花でもよく利用されます。

その花托→果托が見られるのは、おそらくハスの花だけともいわれています。花の時期が終わる頃にもう一度訪ね、タネがついた果托もぜひご覧になってください。花に劣らぬほどフォトジェニックな姿ですよ。

さて、2022年7月1日から始まったこの連載も本日で最終回です。その時期の見頃の植物を毎日紹介してきましたが、いくつの植物に出会えたでしょうか。ずっとわからずにいた植物の名前が判明できていたら幸いです。花との出会いは人生を豊かにしてくれると思います。これからも皆さまが花散歩で多くの花に出会えることを、心より願っています。

栽培の難易度

ご自宅の庭の日当たりがよい場所に池がある場合、または樽など大きな栽培容器があれば、ハスを栽培することは可能です。容器で栽培する場合も、日当たりのよい場所に置きます。粘土質の栽培用土に元肥を施し、苗を植えつけたら土面から10cm以上の水深をキープします。また、水を汲み上げてこまめに交換します。生育期の7月〜9月に、月に1度緩効性肥料を追肥します。花が終わっても果托が楽しめるのでそのまま残し、枯れた葉は取り除きます。

【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる