きものダイアリー

中村壱太郎さんが語る、歌舞伎座三月大歌舞伎『滝の白糸』への意気込み

2018.03.07

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「好きな男性に尽くす一方、意地っぱり。
そんな滝の白糸の現代性と母性を表現したい」


――『滝の白糸』は泉鏡花の「義血侠血」を原作とする戯曲です。水芸一座の太夫、滝の白糸は、法律を学びたいという村越欣弥の向学心に共鳴し、仕送りをして支えます。しかし、仲間内の恨みを買い、揉め事に巻き込まれてしまう滝の白糸。村越欣弥との再会は法廷にて、検事と被告人という立場ででした。

中村壱太郎さん


壱太郎「舞台は文明開化の時代。言葉も会話のテンポも現代に近いですし、俥やアンパンが登場するなど、お客様には親しみやすいのではないでしょうか。リアルな舞台設定の中に、いかに新派の芸術性を表現できるかが課題です。お手本は、もちろん玉三郎のおじさま。流れるような芝居の中で泉鏡花の原作ならではの美しい台詞がお客様の脳裏に焼き付くように演じられたらと思っています」

――公演に先立って2月には、物語の舞台であり泉鏡花の故郷でもある金沢にも足を運びました。

壱太郎「生憎の大雪の日で、劇中で登場する卯辰橋や兼六園に足を運ぶことはできなかったのですが、泉鏡花記念館で、その人柄や、どういう人生を歩んで来たかを知ることができました。原作の「義血侠血」は、泉鏡花のごく初期の作品。僕が鏡花ものに臨むスタートが、鏡花にとってもデビュー数作目の作品であることに何だかご縁を感じています」

――今回の公演では、滝の白糸の心を捉える村越欣弥を、尾上松也さんが演じます。

壱太郎「古典歌舞伎では何度も相手役をさせていただいていますが、新派の戯曲でご一緒するのも楽しみです。滝の白糸は負けず嫌いで意地っ張り。現代の女性にも通じる部分があると思います。その一方で自分が好きになった村越欣弥のためには心を尽くす。これは、母親を早くになくした泉鏡花の人生が投影された、母性への憧れなのではないか、という気もしています」
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