中村玉太郎さん「一つ一つのお役を一か月かけて洗練させていきたい」【歌舞伎俳優ファイル】

僕が歌舞伎俳優の道を本格的に歩むことを意識したのは2019年4月に御園座で上演された『南総里見八犬伝』の犬江親兵衛仁（まさし）を勤めさせていただいたときです。




2019年4月、御園座『南総里見八犬伝』の犬江親兵衛仁。©松竹

子役のときは台詞や動きなどの決められたことを覚えて演じればよかったのですが、大人の役ではそれは当然のこと。

さらに若旦那や町娘など、演じるその役に見えることが求められます。目線や意識の持っていき方、足の広げ具合や表情など、役の型や技術も習得しなければなりません。

共演した中村梅枝兄さんや坂東新悟兄さんなどの先輩がたからは台詞回しや動きについての教えやご指摘をいただくので常に発見があります。

僕は女方を目指していますので、一つ一つのお役を一か月かけて洗練させていき、経験を積んでいきたいと思います。

また2023年5月1日には同じ志を持つ囃子、長唄三味線、生田流箏曲の仲間とともに結成した「白苑会」の自主公演を開催させていただくことになりました。僕は『三番叟』の素踊りと『藤娘』では拵えをして踊らせていただきます。今後、回を重ねていき、分野の垣根を超えて伝統芸能の世界を盛り上げていきたいです。

5月の歌舞伎座「團菊祭」では2010年12月以来上演されていなかった『達陀（だったん）』で練行衆の一人として踊らせていただきます。これだけの人数の若手が一度に集まって共演するのは久しぶりです。皆さんで創り上げるこのハードな踊りに携わることが楽しみです。