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大英帝国の絶頂期に生まれた、奇抜なアイディアのジュエリー

2023.05.10

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これぞジュエリーの真髄 第5回(02) ジュエリーの大衆化と大英帝国 有川一三氏が主宰する「アルビオンアート」の歴史的な芸術品の数々を、宝石史研究家の山口 遼さんの解説でご紹介するジュエリー連載。第5回は、時代の変化に呼応して、大きく変わる輝きの世界を紐解きます。前回の記事はこちら>>

大英帝国の絶頂期に生まれたもの


ジュエリーの大衆化が進む中で、これまでにはなかったような奇抜なアイディアのものが登場するのも、このジョージアン、ヴィクトリアンという時代です。小振りなものが多いですが、そのアイディアには驚かされます。

リガード ブローチ

1.リガード ブローチ

製作年代:1840年頃
製作国:イギリス(推定)


ジョージアンハート型のロケット

2.ジョージアン ハート型のロケット
製作年代:1820年頃
製作国:イギリス


1と2をご覧ください。ブローチは中央に大きなクリスタルの板を配し、その下に左からルビー、エメラルド、ガーネット、アメシスト、もう一つルビー、そしてダイヤモンドと並べています。2も同じ宝石がハート左下から時計回りにちりばめてあります。

なんだこれはという配置ですが、これは色を楽しむジュエリーではありません。宝石の頭文字を並べると、REGARD。リガードとは “見る” を意味しますが、単に見るではない、好意や関心を持って見るという意味。

ですからこれを女性が男性から貰ったら、その男性は貴女に好意を持っている、ということです。なんと回りくどい口説き文句でしょう。

タイガー・クロウ セット

3.タイガー・クロウ セット
製作年代:19世紀
製作国:インド(推定)


3のパリュールは本物の虎の爪を使っており、爪はインドからきたもの。19世紀、インドは英国の属領になり、多くの人々が行き来するようになります。インドで作られたものか、英国でインドを真似して作られたものかははっきりしませんが、今ならワシントン条約違反、もちろん日本にも輸入はできません。当時は虎の持つ魔力を身につけたいと思ったのでしょうか、凄味があります。

ルネサンス・リバイバル様式 ホルバイネスク・ペンダント

4.ルネサンス・リバイバル様式 ホルバイネスク・ペンダント
製作年代:1860年頃
製作国:イギリス


ホルバイネスク・ガーネットとダイヤモンドのペンダント

5.ホルバイネスク・ガーネットとダイヤモンドのペンダント
製作年代:1867年頃
製作国:イギリス(推定)


4と5は同じような作りで、中央にカボションカットのガーネットをセットし、上下左右に宝石を埋めたコーナーを作り、周りと裏面には精緻な彫り、あるいはエナメル細工が施されています。これは16世紀初頭に英国で活躍したドイツ人画家、ハンス・ホルバインが残したデザイン画をもとに作ったものとして売り出され、ホルバイネスク・ジュエリーといいます。

しかしこれは真っ赤な噓。ホルバインのスケッチにジュエリーのデザインがあることは事実ですが、こんなデザインはどこにもありません。まあ、今でも女優や建築家などがデザインしたジュエリーがありますが、そうしたもののハシリともいえます。それは別として、実物は見事な作りです。

スワンのリバースインタリオブローチ

6.スワンのリバースインタリオブローチ
製作年代:1860~1870年頃
製作国:イギリス


水辺に泳ぐ白鳥を描いた6は、リバースインタリオというこの時代に産まれた技術で、クリスタルの板の裏面に、インタリオの状態で白鳥と水草を彫り込み、その表面に絵具で精密に彩色し、絵具の剥離を防ぐために白蝶貝の板で塞ぐのです。エナメルとは違う精密な色付けが可能で、分かりやすいデザインのため、大小、数多く作られていますが、これほどの完品は珍しく、絵のようにきれいです。

ヴィクトリアン・バタフライ・ブローチ

7.ヴィクトリアン・バタフライ・ブローチ
製作年代:1840年頃
製作国:イギリス


自然主義の葉と花のダイヤモンドネックレス

8.自然主義の葉と花のダイヤモンドネックレス
製作年代:1830年頃
製作国:未詳


さて、ダイヤモンドにも大きな変化が生まれます。

7と8はこの時代にしては多くのダイヤモンドを使っていますが、ダイヤモンドがすべて小さい。どちらも1850年以前の作品です。

リヴィエール ネックレス

9.リヴィエール ネックレス
製作年代:1890年頃
製作国:イギリス


そして9は1890年頃のもので、粒が大きい。この違いは、1860年代にアフリカでダイヤモンド鉱山が見つかり、そこで採れたものが登場するのが1880年代からであることを示しています。

アフリカ以前の鉱山はインドとブラジルだけで、年産30万カラットもなかったのが、突然300万カラット以上になったので、こうした大粒のものが作れるようになりました。ジュエリーもそれを使う人間も、数が爆発的に増え、賑やかな時代といえます。
監修・文/山口 遼 撮影/栗本 光

『家庭画報』2023年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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