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伊集院静さん、愛犬との輝ける暮らしと別れの友情物語『君のいた時間 大人の流儀 Special』

2023.05.11

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〔今月の本/ペットロスを慰める〕
『君のいた時間 大人の流儀Special』伊集院 静 著

伊集院 静

伊集院 静(いじゅういん・しずか)
1950年山口県防府市生まれ。1972年立教大学文学部卒業。1981年短編小説「皐月」でデビュー。1991年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、1992年『受け月』で第107回直木賞、1994年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。2016年紫綬褒章を受章。

人生を豊かにするご褒美
愛犬ノボとの輝ける暮らしと別れ



執筆のため、仙台と東京を行き来している伊集院 静さんが、家族と暮らす仙台の家で飼っていた愛犬について筆をとった。

伊集院さんが最大の愛情を込めて“東北一のバカ犬”と呼ぶノボ(本名乃歩/ノボル)との出会いと別離。前書きには“実はこのような本、投げ出してしまいたかった”とある。

「正直、書いていて、楽しいことより、辛いことのほうが多かったですね。犬、猫との楽しい思い出を書けば、やがて別離、死別の事実と向き合うことになります。彼らがこの世にいないこと、なぜ自分を置いて行ってしまったのだ?という、考えても仕方のないことを考えざるを得なくなります。“幸せの情景、表情”というものは、単純にまぶしかったり、輝いたりして、似たものが多いのですが、“哀しみの情景、表情”というものは、みながそれぞれ違っています。ペットと過ごした幸せな時間と、別離し哀愁を誘う時間は、明らかな違いがあり、それが人間を強くしたり、頑張る姿勢をもたせたりするのかもしれません」

読み進めると、伊集院さんが愛犬と出会ってすぐに、別離にまで思いを馳せているのがわかる。大ヒットシリーズ「大人の流儀」のスペシャル版として出版された本書。ペットとの暮らしも、人を大人にするのだろうか。

「ペットと呼ばれる生き物は、人間の5倍から7倍の速さで生きていきます。彼らを子どものうちに引き取って一緒に過ごすと、赤児から若者、壮年、老齢にいたる彼らの姿を見つめることになり、各年齢によって成長したり、父や母になって子育てをしたりする姿を見るようになります。そのことは生き物がもつ素晴らしい“生の記憶”を垣間見ることにもなります。少年が子犬とともに過ごし、やがて老犬となって、以前のように動き回ることがない姿を見ると、少年は“生きることって何だろう?”という命題を見つめることになります。これはペットが人間に教えてくれる大きなテーマでもあります。私たちが生きるのに、役に立たないわけがありません」

奥さまの犬だった亜以須(アイス)、近所に住むお手伝いさんが飼っていたラルク、そして伊集院さんに懐いていたノボ。

3匹の愛犬を次々に失った伊集院家には現在、1匹の猫がいるという。それぞれの名前から一文字ずつを取ってアルボと名づけた。

「アルボを見ていると、ノボを思い出して哀惜の情が込み上げてくることもありますが、生きものはやはり見ていて面白く、家に帰ることが楽しみになります。ペットという存在は、間違いなく人生のご褒美といえるでしょう。出会いは、常に別離に勝るものであるということです」

君のいた時間

挿絵/福山小夜 装丁/竹内雄二

『君のいた時間 大人の流儀Special』
伊集院 静 著/講談社


ペットショップで最後まで売れ残っていたところを引き取り、2021年1月に天国へと旅立った愛犬との友情物語。正岡子規の幼名升(のぼる)にちなんで乃歩(ノボル)と名づけた。累計228万部を突破した大ベストセラー「大人の流儀」シリーズの特別編。

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構成・文/安藤菜穂子 撮影/宮本敏明

『家庭画報』2023年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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