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満開の桜を愛でる花散歩のお供に。桜あんが香る「お花見スイーツ」

2023.03.22

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エッセイ連載「和菓子とわたし」


「和菓子とわたし」をテーマに家庭画報ゆかりの方々による書き下ろしのエッセイ企画を連載中。今回は『家庭画報』2023年4月号に掲載された第21回、赤木明登さんによるエッセイをお楽しみください。


vol.21 日本一の「丸柚餅子(ゆべし)」千年の味
文・赤木明登



柳 宗悦が、能登の輪島を訪れたのは、昭和15年のことだった。日本全国の伝統的工藝品を見て歩く旅の途上である。目的は、もちろん「日本一」の看板を掲げた輪島塗の見聞であった。輪島の何処で、何を見たのか、詳細な記録は残っていないが、その結果記された評論は手厳しいものだった。輪島塗が美しかったのは、江戸から明治にかけてまでであり、それ以降は堕ちる一方である。職人は、器形、絵付などをもっと工夫し、さらなる精進をするべきであると。さもありなんと、ぼくも思うのだ。

目的であった輪島塗については、突き放したような言いようだが、輪島で出会ったものの中に、ひとつ、おおいに気に入ったものがあったようだ。輪島名物の「丸柚餅子」である。日本中に柚餅子と呼ばれる菓子があるが、輪島のものが日本一だとまで言っている。柳先生に、ここまで言われてしまったら「日本一」の看板を、掛けかえるしかない。

柳の訪問から、すでに八十余年が経ったが、いまでも輪島市内には柚餅子屋さんが数件残っている。厳しい冬に入る前、街中に柚の香りが立ちこめる季節がある。丸柚餅子は、柚果実の上部を水平に切り取り、中身を竹の篦(へら)で掻き出して、柚釜をつくる。その中に餅を詰め込んで、いちど取り外したヘタの部分で蓋をする。

それから蒸して、乾燥させてを、半年ほど繰り返すと、全体は縮んで小さくなり、表面は飴色に変化する。文献によると、これは保存食として、平安時代から千年以上つくりつづけられているようだ。それが江戸末に、砂糖が普及して、餅を甘くするようになってから、菓子になったのだとか。

輪島と言えば「朝市」も有名だが、これも平安から千年も途切れることなくつづいている。丸柚餅子も、この「朝市通り」でいまも買うことができる。素朴ながらも、千年の時を刻んできた貴重な菓子を、有難くいただきながら、柳とともにぼくも、輪島塗の行く末を案じるものの一人である。

参考文献/柳 宗悦『手仕事の日本』

赤木明登
塗師。1962年岡山県生まれ。中央大学文学部哲学科卒。編集者として出版社に勤めた後、88年に輪島へ移住し、輪島塗の下地職人・岡本 進に弟子入り。94年独立。以降、日常生活に寄り添う漆器「ぬりもの」を制作し、各地で個展を開催。ドイツ国立美術館「日本の現代塗り物十二人」に選ばれるなど海外でも高い評価を受ける。『漆 塗師物語』『二十一世紀民藝』など著書多数。2023年春にオーベルジュ「茶寮 杣径(そまみち)」を開業予定。

Information

宗家 源 吉兆庵

表示価格はすべて税込みです。
『家庭画報』2023年04月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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