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ハレの日も、ケのひとときも、和菓子とともに季節を巡る。千 宗屋さんインタビュー

2023.03.07

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〔今月の本/和菓子の履歴書〕
『千 宗屋の和菓子十二か月』千 宗屋 著

千 宗屋さん

撮影/浅井佳代子

千 宗屋(せん・そうおく)
1975年京都生まれ。武者小路千家第15代家元後嗣。斎号は隨縁斎(ずいえんさい)。慶應義塾大学環境情報学部卒業、同大学大学院前期博士課程修了(中世日本絵画史)。2008年、文化庁文化交流使としてニューヨークを拠点に世界各国で活動。明治学院大学非常勤講師、慶應義塾大学総合政策学部特別招聘教授、同志社大学特別講師を歴任。

ハレの日も、ケのひとときも
和菓子とともに季節を巡る


武者小路千家第15代家元後嗣千宗屋さんが、和菓子で季節を巡る歳時記を上梓した。お正月から年の瀬までの折々の和菓子、祝儀のためのものまで、54の和菓子が紹介される。

「この本について“どれがいちばんお好みですか?”とよく質問されるのですが、それは愚問です(笑)。私は仕事柄ほぼ毎日和菓子をいただいていますが、季節やシチュエーションによって、おいしさや好もしさを感じる和菓子は異なります」

掲載されているのは、初釜のきんとんから日常のおやつとなる餅菓子まで。それぞれに、その和菓子の特徴や由来に加え、千さんが好きな理由や思い出話が添えられている。

「子どもの頃から慣れ親しんだ京都の味はもちろん、進物でいただいたり、こちらが出掛けたりして出合った地方の和菓子も登場します。なかでも、十数年前から定期的にお稽古で通っている名古屋は、京都とは違う、ひとひねりした和菓子が多いのが特徴ですね」

読み進めるうちに、茶道の心得がなくとも、和菓子にはおのずと備えた格があることや、見た目や製法、銘などに歴史や物語が込められていることへの理解が進む。加えて、それらを踏まえた似つかわしい季節や機会にいただくことの嬉しさにも触れることができる。

時には、子どもの頃、鍵善良房の竹筒に入った水ようかん「甘露竹」を、茶席の外でひそかに直接口をつけて吸い込んで食べるのが好きだったことなど、微笑ましいエピソードも。

「お茶を習っていない人に楽しんでいただこうというコンセプトで作った本です。“和菓子が好きだから”という理由でお茶を始められるかたは昔から多いですが、和菓子を扱ったこの本を入り口に、お茶や日本文化の深奥に興味をもっていただけたら嬉しいですね」

それぞれに異なる和菓子の表情、器との取り合わせの美をとらえた浅井佳代子さんの写真にも注目したい。

「器は、ほとんど身近なものを取り合わせています。撮影は浅井さんにお任せし、私は別室でお待ちしていました。月刊誌の連載でしたので、撮影時と掲載時の季節が異なることがままありましたが、光によってその時期ごとの季節感を見事に表現していただいていると思います」

54の和菓子のなかに、“これはぜひ自分の舌で味わってみたい”と思うものが見つかるはずだ。

「和菓子は、お米や砂糖、小豆などのわずかな素材を用いて作られますが、味や見た目に無限大のバリエーションがあり、飽きがくることがありません。見た目の美しさや背景にある歴史とともに、味わうこともできる、“食べられる日本文化”といえるでしょう」

千 宗屋の和菓子十二か月

写真/浅井佳代子 デザイン/川﨑洋子

『千 宗屋の和菓子十二か月』
千 宗屋 著/文化出版局


2017年1月号~2021年4月号の雑誌『ミセス』での連載に未掲載分と撮り下ろしを加え、再編集したもの。連載時に行われた松平不昧公200年遠忌茶会、興福寺中金堂落慶法要の献茶式、自身の結婚披露茶会のために用意した特注の和菓子も収録。巻末には問い合わせリストも。

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構成・文/安藤菜穂子

『家庭画報』2023年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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