培った引き出しを生かして“狂言回し”を創り上げる
発する言葉からは経験に基づく深みが感じられる。今回挑む『太平洋序曲』にはどういう印象を持ったのだろう。
「作曲されたソンドハイムの目線というか、日本をテーマにして描いていることに最初は驚きました。例えばアメリカのブロードウェイが誕生した瞬間を僕らの目線で作品にするようなことじゃないですか！ ペリーの来航って向こうは“日本に行くぞ”という心構えがあるでしょうが、鎖国していた日本人にとってはUFOが突然やってきて宇宙人に会ったみたいな感覚になったんじゃないかと思うんです。それを一つのテーマとして取り上げて創られた作品なので、我々日本人にとってもいろんな意味があって、大切にしなければならないものだと思います。
「日本人のマインドを大切にして演じたいと思います」── 山本耕史
僕が演じるのはいわゆる物語の進行を司る役割だけでなく、名前のない“狂言回し”という役なので、カメレオン的な要素があると思うんです。武士や小姓などいろんな作品のいろんな役の一部分を断片的に入れたら面白いのではないかと。武士といっても勇ましい武士なのか、それとも現代の人がくすっと笑ってしまうようなか弱い武士なのか、稽古で足並みを見ながら演じてみます。マシュー・ホワイトさんとは初めて作品づくりをご一緒しますが、演出助手の河合さんからも“フラットでいいかた”だと伺っているので、僕たちにできることをちゃんと汲んでくれるのではないでしょうか。すごく楽しみにしています」
さらに楽曲からはどんな世界観をとらえているのかについても伺った。
「ソンドハイムの曲は意外とメロディーラインが日本に合っている気がしています。『RENT』を手がけたジョナサン・ラーソンはソンドハイムから多大な影響を受けていてオマージュとして作った曲があるんですが、日本のことがいっぱい描かれているんです。そこにインスピレーションのつながりがあるんだなと思ったので、『太平洋序曲』の曲にはソンドハイムの日本へのリスペクトが感じ取れるのではないでしょうか」
ベテランの域でありつつ、変わらぬ若さを放つその秘訣とは何なのか。
「朝一の筋トレは欠かしません。ルーティンですが今は減らしていかないとと思うくらい取り組んでいます（笑）。リラックスにもなっているのだと思います」 山本耕史（やまもと・こうじ）
1976年、東京都生まれ。幼少時からモデル活動を始め、1987年『レ・ミゼラブル』の日本初演の少年革命家・ガブローシュ役で舞台デビューし、注目を集める。1998年にはブロードウェイミュージカル『RENT』の日本初演で主演のマーク役を21歳で務める。主な出演作にはフジテレビ『ひとつ屋根の下』をはじめNHK大河ドラマ『新選組！』『平清盛』『真田丸』『鎌倉殿の13人』など多数。幅広く活躍する実力派俳優。
ミュージカル『太平洋序曲』
ミュージカル『太平洋序曲』のメインキャストたち。作詞作曲をスティーヴン・ソンドハイム、脚本をジョン・ワイドマン、演出をハロルド・プリンスが手がけ、“日本の視点”にこだわって誕生したブロードウェイ1976年初演の作品。
今回は芸術性の高い作品をプロデュースすることで定評のあるロンドンのメニエールチョコレートファクトリー劇場と梅田芸術劇場が初コラボレーションに本作を選び、オリヴィエ賞にノミネートされたマシュー・ホワイトが新演出でお届けする。
狂言回し役を山本耕史、松下優也、香山弥左衛門役を海宝直人、廣瀬友祐、ジョン万次郎役をウエンツ瑛士、立石俊樹がそれぞれダブルキャストで挑む。
日生劇場／梅田芸術劇場（東京）2023年3月8日〜29日
TEL：0570（077）039
梅田芸術劇場メインホール（大阪）2023年4月8日〜16日
TEL：06（6377）3800
URL：
https://www.umegei.com/pacific-overtures/S席1万3500円（全席指定）ほか
表示価格はすべて税込みです。
撮影／永田忠彦 構成・文／山下シオン ヘア＆メイク／西岡和彦〈PARADISO〉 スタイリング／笠井時夢
『家庭画報』2023年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
