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写真家・鍋島徳恭さんによる中村吉右衛門さんの写真展が開催。初の作品販売も

2023.03.02

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2023年3月9日(木)~21日(火・祝)、セイコーハウス銀座ホールで写真家・鍋島徳恭さんによる二代目中村吉右衛門さんの写真展が開催されます。鍋島さんが2006年より追いかけてきたという、舞台や楽屋での貴重なショットのほか、衣裳をまとった吉右衛門さんを黒幕の背景で撮り下ろした作品群などが展示されます。 『家庭画報』でも活躍の鍋島さんに、吉右衛門さんとの撮影エピソードや作品への想いを伺いました。
吉右衛門さんの当たり役より。左から『菅原伝授手習鑑 寺子屋』松王丸、『一條大蔵譚』一條大蔵長成、『一谷嫩軍記 熊谷陣屋』熊谷次郎直実、『勧進帳』武蔵坊弁慶。

ひとりの写真家が見つめ続けた、稀代の歌舞伎役者の姿


写真家の鍋島徳恭さんと二代目中村吉右衛門さんの出会いは2003年。吉右衛門さんご夫妻が出演する『家庭画報』の企画に、カメラマンとして参加したときでした。

その後、同誌2006年10月号での初代吉右衛門の生誕120年を記念した公演に向けた特集で再会。舞台を観る機会にも恵まれ、心を動かされたのだと鍋島さんは語ります。


舞台裏の中村吉右衛門さん楽屋にて。

「舞台の上には吉右衛門さんでなく、芝居の役の人物が生きていました。その姿に感動し、毎月撮影に入らせていただきたいとお願いしたのです」

以来、歌舞伎座はもちろん、国立劇場、新橋演舞場、京都南座、松竹座、御園座、博多座、香川県のこんぴら歌舞伎や地方巡業公演まで、吉右衛門さんが出演するほぼすべての公演に足を運び、記録を続けました。

舞台に加え、楽屋で顔(化粧)をするところから衣裳と鬘(かつら)をつけ、役の人物になっていくまでの姿など貴重な場面も撮影。

「宙乗りの場面では舞台から浮かび上がるところを撮影したら3階まで駆け上り、到着するところを撮影。私は走るのが好きで、大会に出場することもあるのですが、吉右衛門さんに“マラソンで鍛えた甲斐がありましたね”とおっしゃっていただいたこともありました」

中村吉右衛門さん『楼⾨五三桐』より⽯川五右衛⾨。

撮影風景上のカットの撮影風景。黒幕の作品群は、忙しい合間を縫って、このように撮影された。

さらに毎回、楽屋に黒い幕を張り、扮装姿での撮影も。

「冗談で“一日二公演”とおっしゃることもありましたが、舞台に出る前にその芝居の決まり、決まりの見せどころをカメラに向かってひと通り演じていただくという贅沢な時間でした」

『松浦の太⿎』松浦鎮信は小道具を使って撮影。

楽屋での撮影には、舞台で使う小道具を用意して臨むこともありました。

「お弟子さんや衣裳さん、床山さんにもご協力いただいてのチームプレイで記録し続けた作品です。今回の写真展のためにセレクトして、こんなにも大量の記録を残してきたかと自分でも驚きました」

作品は“撮影”ではなく“記録”


鍋島さんは、吉右衛門さんを撮った作品では、自身のクレジットを“撮影”ではなく“記録”としています。

「『家庭画報』をはじめ普段の撮影では自分なりの切り取り方や演出を加えることもありますが、吉右衛門さんを撮るにあたっては、ありのままをすべて“記録”したいと考え、撮影に挑んできました。

特に好きな役は『俊寛』の俊寛僧都と『熊谷陣屋』の熊谷次郎直実。毎回、吉右衛門さん演じるそれぞれの役の細かい心の動きを感じながら記録していました。

もっと演じていただきたかった、もっと撮り続けたかった、というのが本音ですが、こうして和光(セイコーハウス銀座ホール)で写真展を開催させていただけるのはありがたいことです。

会場に入られたら、たくさんの吉右衛門さんが演じた役の数々にお会いいただき、その舞台を思い出していただけたらと思います」

また本展では作品販売も実施。コラージュ作品の中から希望のカットを指定し、額装して購入できるという新しい試みです。

稀代の歌舞伎俳優とうたわれた吉右衛門丈の一瞬の表情、鬼気迫る姿を捉えた写真に触れ、在りし日の姿に心をお寄せください。入場無料。

鍋島徳恭写真展
― 二代目 中村吉右衛門 ―

2023年3月9日(木)~21日(火・祝)
10時30分~19時(最終日は~17時)
会場:セイコーハウス銀座ホール
(東京都中央区銀座4丁目5-11 セイコーハウス銀座6階)

●お問い合わせ
銀座・和光
電話 03-3562-2111(代表)




鍋島徳恭(なべしま・なるやす)
1960年(昭和35)広島県生まれ。広告制作会社を経て、1989年独立、2001年(平成13)有限会社鍋島徳恭事務所を設立。雑誌・広告を中心に人物からファッション、食、伝統芸能まで多岐にわたるジャンルで活躍。

二代目 中村吉右衛門(にだいめ なかむら・きちえもん)
1944年(昭和19)八代目松本幸四郎(初代松本白鸚)の次男として生まれる。母方の祖父である初代中村吉右衛門の養子となり4歳で初舞台、22歳で二代目を襲名。以降、古典演目の復活上演や後進の育成にも心を注ぎ、2011年(平成23)重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定。2021年(令和3)11月永眠。
写真/鍋島徳恭 協力/清水井朋子
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