一瞬も目を離せぬ音楽。藤田真央さんが奏でるモーツァルトのピアノ・ソナタ全集

一瞬も目を離せぬ音楽

藤田真央のモーツァルトは、笑い、歌い、語りかける。楽譜に基づいていながら、その場で生まれたかのようなみずみずしさがある。

日本人ピアニストとして初めてソニークラシカルとワールドワイド契約を結んだ彼が、第1弾の録音としてリリースしたのは、得意とするモーツァルトのピアノ・ソナタ全集。


シンプルだからこそ、技術やセンスなど奏者のすべてが見える作品で、藤田はそのユニークな想像力でたどり着いた境地をさらけ出す。

同じフレーズの繰り返しも、毎回少しずつ表情を変える。草原で寝転び、花畑を駆け抜け、ときに路地裏に迷い込むような音楽は、聴く者を一瞬たりとも飽きさせない。

藤田はチャイコフスキー国際コンクール入賞を機に世界から注目された。コンクールのタイトルは、それだけでは真の国際的キャリアをもたらしてはくれないが、彼はその後、大指揮者や著名オーケストラとの共演で結果を残し、チャンスを着実に次につなげた。

世界最高峰の舞台で活躍する数少ない日本人ピアニスト。これからもその軽やかで喜びにあふれた音楽で、世界の聴衆を魅了し続けるだろう。

藤田真央（ふじた・まお）
1998年生まれ。2019年、チャイコフスキー国際コンクールピアノ部門で第2位に入賞し、国際的なキャリアをスタート。世界の主要音楽祭やオーケストラに招かれ、著名指揮者と共演。東京音楽大学を経て、ベルリンのハンス・アイスラー音楽大学在学中。