今、会いたい名医に聞く 米倉涼子の「気になる医学」 全国に約3000万人もの患者がいるとされ、今や国民病ともいわれる“腰痛”。背中側の肋骨の下からお尻までの範囲の筋肉や筋膜、関節、靱帯など、神経が分布されているところで、何らかの原因により炎症が起きて生じた痛みを“腰痛”と総称しています。腰痛歴の長い米倉涼子さんが整形外科の名医・出沢 明先生に対策やおすすめのストレッチなどをお尋ねしました。
「常に首と腰に痛みがあるのでラジオ波で温めて、マッサージやストレッチも欠かしませんが、なかなか痛みが取れないんですよね」と米倉さん。「基本対策はさすがにバッチリです」と出沢先生。
〔米倉さん〕シャツブラウス36万5200円 パンツ30万5800円／ともにザ・ロウ（ザ・ロウ・ジャパン） ピアス4万8400円／ジョージ ジェンセン（ジョージジェンセン ジャパン）
出沢 明先生（医療法人 明隆会 出沢明PEDクリニック・理事長）
米倉さんから見た出沢先生の印象→「私の体調を気遣ってくださったので、腰痛以外のこともたくさんお話しできました。話しやすくてありがたかったです」
出沢 明（でざわ・あきら）
1951年11月24日生まれ。長野県出身。1980年千葉大学卒業。帝京大学医学部附属溝口病院整形外科教授、副院長補佐などを経て2014年出沢明PEDクリニック開業。数学教師になる夢を抱き北海道大学に進学するも学園紛争中で不完全燃焼だったある日、シュヴァイツァー博士とともに治療に当たる髙橋功先生の講演会へ。「雷に打たれたような衝撃」を受け、千葉大学医学部を受験。医師の道を歩む。●座右の銘／「六根清浄」（五感の先にある第六感をも清らかにすべく鍛錬する）
約3000万人が悩んでいる国民病の腰痛
「小学1年の頃から接骨院に通うほど、腰痛とは長いつきあいです」── 米倉さん
米倉さん（以下敬称略） 今日は整形外科の名医にお会いできるので、楽しみにお伺いいたしました。実は私は腰痛歴がすごく長いんです。
出沢先生（以下敬称略） 初めまして。いつぐらいから腰痛なんですか？
米倉 小学校1年生から、腰痛に悩まされて接骨院に通っていたんです。バレエをやっていた影響なのか、ストレートネック気味で反り腰になりやすいんですよね。『ドクターX』の手術シーンでは同じ体勢を長時間取り続けるので、腰の仙骨や仙腸関節が痛くなることも度々ありまして。腰痛の誘因は、一般的にはどのようなものですか？
出沢 やっぱり姿勢と、年齢を重ねて弾力性や運動量が低下することも影響しています。特に女性は更年期を迎えると、破骨細胞を抑制していたエストロゲン（女性ホルモン）が急激に減少するので、60歳くらいから腰痛を発症されるかたが増えるんです。椎間板や骨が潰れやすくなったり、筋肉が衰えたり。腰や肩、脳などの神経は一度傷めると再生しないので治りにくいんですね。幹細胞の研究が進んで、将来的には治るようになるかもしれませんが。
出沢先生から見た米倉さんの印象→「もう少しクールなのかと思いきや、気さくなかたでした。長年、大門未知子を演じているだけあって医学の知識と意欲がすごい。たまに休養して気分転換できるといいですね」 今や国民病ともいえる腰痛の85パーセントが原因不明
米倉 腰痛の男女差を比べると、やはり女性のほうが多いんですか？
出沢 そうなんです。そして国民生活基礎調査（厚生労働省実施）の病気やけがの自覚症状では約20年間、男女ともに腰痛、肩こりが上位なんですね。
米倉 腰痛の原因はさまざまですよね。
出沢 多様ですね。腰痛の原因は、今も85パーセントがまだ原因不明なんです。なかでも治療がいちばん難しいのは2000万人以上いる、といわれている慢性腰痛。痛みが3か月以上続いている場合、発端となった原因までなかなか辿り着けないので、治すのが困難なことも多くて。腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア（以下、椎間板ヘルニア）の患者さんも、かなりの数です。今日は、10代のお子さんの椎間板ヘルニア手術を行ってきたんですよ。
米倉 10代で椎間板ヘルニア！ お若いのに......体質の問題なのでしょうか。
出沢 10代は確かに少し早い発症なのですが、椎間板ヘルニアには20代、60代とピークが2つあるんです。椎間板は20歳頃から老化が始まるので、それも原因の一つかと。若い世代の発症には、老化以外にスポーツの影響とゲームも関係しているでしょうね。同じ部位に負荷がかかることが多いので。
米倉 あまりに若いと椎間板ヘルニアに辿り着く前に、ほかの原因を疑ってしまいそうです。
出沢 腹部大動脈瘤が破裂して、腰に拍動性の痛みが出ることもありますしね。
米倉 それは我慢していると危険！
出沢 大動脈瘤の破裂は速やかに処置しないと死に至ることも多いですから。神経の病気は活動時間帯は辛いものの、寝ているときは案外大丈夫なことが多いんです。でも、拍動性の腰痛に24時間悩まされている場合は、内臓疾患が原因の可能性が高いので、一刻も早い外科での診察をおすすめします。
