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【スーパー獣医 野村潤一郎先生の動物エッセイ】名付けが犬に影響を及ぼす?

2022.08.24

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イラスト/コバヤシヨシノリ

また好きなアイドルグループの名前も人気で“フックン” “ヤックン” “モックン”なども人気である。

ある日、恰幅の良い中年紳士が金無垢ロレックスをキラキラさせて、ヴィトンのキャリーから3匹のトイプードルを取り出した。


「“明美” “恵子” “梨花”です」

「なるほどね……」

「先生は鋭いからもうお気付きだと思いますが、実は2号、3号、4号の名前なんです。女房に寝言を聞かれても言い訳ができるように頭を使いました」

こういう余計なことを喋る方には「あ、聞いていませんでした……」と返すしかない。

前半に紹介した「縁起の悪い陰」「身体的特徴のある主人公」「問題行動の擬音に似たもの」「肉体の一部を連想するもの」以外は概ね無害と思うが、私が知らない名前に関する因縁が他にも沢山あるかもしれないので、名付けの際は注意していただきたい。

「ところでセンセの愛犬たちはどんな名前なの」という皆さんも多いと思うので簡単に説明しておくが、私の場合はあまり深読みせずに、フィーリングを大切にしてきたみたいである。

歴代の最初の4頭はみんな女の子だったので、全て花の名前がついていて、初代の白い雑種は“リリー”。2代目からは全頭ドーベルマンなのだが、“リーラ” “ビオラ” “イリス”と紫色の花が続き、5代目からは男の子なので花の名前は中止して“ありふれた男性の名シリーズ”に変更した。すなわち“オスカー”そして現在の6代目は“ビクター”である。これらに共通するのは呼びやすい3文字であることと全てドイツ語であることだ。

オスカーは「うーん、オスかあ……」と唸ってしまうような筋骨逞しい肉体に恵まれ、その性格も穏やかで悠々としていて実に男らしい犬に育ったので、トンチ好きの名前の神がたまたま良い方向に運命づけてくれたのかもしれない。

ビクターに関しては“勝者”を意味するその名の通り、無敵感ただよう大胆な性格になり、身体も過去最大級で体重はやがて70キロに迫ると思われるほど発育が良いものの、まだ経験値が浅いこともあってか、非常にくだらない事柄にビクつくことがある。もしかしたらイタズラ好きの名前の神がVICTOR=“ビクつく人”と解釈して悪さをしているのかと思ったのだが、私はこんなこともあろうかと、秘密の対策を準備していた。

実はビクターという名は「通り名」で「忌み名」は別にあり、しかもそれはかなりカッコいい。ビクターは私だけに従い、他の誰の言うことも聞かないが、それは私がビクターに命令する時に必ず心の中で“本当の名である忌み名”を念じるからで、これは宇宙の最後が来ようが、未来永劫、たとえ神であっても邪魔することも解き明かすこともできない、私たち親子だけの絶対の秘密なのであった。

野村潤一郎(のむら・じゅんいちろう)

野村獣医科Vセンター院長。現在、東京・中野にある病院は、ハイテク医療機器が揃い、大勢のスタッフを抱える病院ビルだが、開業は小さなビルの1室からのスタートだった。しかし、自ら犬猫をはじめ、爬虫類や両生類、淡水魚、昆虫まで飼育する腕利き院長の噂は広まり、患者はその頃より全国から訪れていた。
『家庭画報』2022年9月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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