島崎藤村の名作小説『破戒』が60年ぶりに映画化。新旧2作品をぜひ見比べて

亡き父から「出自を生涯明かさないように」との戒めを受けていた被差別部落出身の青年教師の苦悩を描いた島崎藤村の名作『破戒』。

『破戒』

© 全国水平社創立100周年記念映画製作委員会　配給：東映ビデオ


1962年に名匠・市川 崑監督が映画化して以来、60年ぶりに映画化された。どちらも上映時間は119分。同じ時間で描かれた同一作品。新旧2作品を見比べるとより深い世界が味わえる。

市川監督の『破戒』で主人公の瀬川丑松を演じたのは伝説の映画スター市川雷蔵。長門裕之、三國連太郎、中村鴈治郎、杉村春子、岸田今日子、藤村志保など豪華共演陣に加え、陰影の美しい宮川一夫のカメラワークや風格のある芥川也寸志の音楽も素晴らしい。

2022年に公開される前田和男監督の作品で丑松を演じたのは間宮祥太朗。生徒と向き合う誠実さや心に抱えた大きな悩みへの憂いが表情だけでも見事に伝わってくる。

丑松は下宿先の養女で士族出身の志保に恋をするものの、自身の出自に周囲が疑念を抱くようになり、学校での立場も危うくなっていく。そして被差別部落出身の思想家に傾倒し、一大決心をする。“破戒とは戒めを破ること”。2人の丑松は自身の決心をどう伝えたのか。ほかの配役も含め、それぞれの圧巻の演技をぜひ見比べてほしい。