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タピオカ粉を使った野菜の揚げ出し。白く揚がり、モチッとした食感に仕上がります

2022.06.28

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

揚げ出し3種 いちじく、アボカド、豆腐


揚げ出し3種 いちじく、アボカド、豆腐

今日は3種の揚げ出しを紹介します。揚げ出しは「海老いもの揚げ出し」でもお教えしましたが、豆腐やなすなどの淡泊な食材を油で揚げて、おろし生姜や大根おろしなどの薬味とともに、醤油や合わせ出汁で食べる料理です。揚げ出し豆腐がよく知られていますね。

揚げ出し豆腐の場合、片栗粉や小麦粉をまぶして揚げるのが一般的ですが、まぶす粉によって仕上がりが変わります。片栗粉は合わせ出汁となじんで豆腐がにゅるっとした食感になり、汁にとろみがつきます。小麦粉はパリッと堅く揚がり、汁にとろみはつきません。私は両方のいいとこ取りをして、片栗粉と小麦粉を同量ずつ混ぜてまぶすことが多いです。ただ、粉類はまぶす際に豆腐によく密着させないと、豆腐の表面で浮いてしまい、粉臭さが残ることがあります。


海老いもの揚げ出し」ではもち粉を使いました。もち粉を使うと表面はカリッと揚がり、粉臭さもなく、海老いもや里いもにはよく合いますが、すべての揚げ出しに合うわけではありません。今回は数年前に大ブレイクしたタピオカの粉をまぶします。これも粉臭さがなく、白く揚がり、出汁となじむともちっとします。製菓材料店やネット販売で手に入りますので探してみてください。

粉の種類によらず、揚げ出しにする際は粉のつけ方にコツがあります。一度に粉をたっぷりつけようとしても上手につかず、油に入れた瞬間に定着していない粉ははがれてしまいます。刷毛で均一に薄くつけ、しばらくおいて、食材の水分を吸いしっとりしたら、再度、つけ重ねるとはがれません。

豆腐は木綿豆腐のほうがくずれにくくて扱いやすいけれど、それは作り手の都合です(笑)。絹ごし豆腐のほうがパサつかず、しっとりとしておいしいと私は思います。早く水分を抜くために塩をふったり、先に電子レンジで加熱して効率を上げようとする人もいます。それはそれでいいのですが、豆腐は90%以上が水分で、下手に加熱すると豆腐にすが入ってしまいかねません。

プロの商売料理なら作業効率を重視する場合もあるでしょうが、家庭では少しでもおいしいものをと、愛をもって作っていただければと思います。面倒なことはありません。段取りです。最初に豆腐の水きりをしておき、他の作業や準備をすればいいだけです。シンプルな料理であればあるほど、ひと手間を惜しむか惜しまないかででき上がりが変わります。今日も野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「揚げ出し3種 いちじく、アボカド、豆腐」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

いちじくは皮を包丁でむくのではなく、湯むきする。火が入り過ぎて実がぐちゃぐちゃにならないように注意。

アボカドは柔らかく熟れているものを使うこと。アボカドが熟れていなければ、どんなに手を加えてもおいしくはならない。追熟の仕方については「アボカドと焼きなすの塩麹和え、アボカドの醤油焼きわさび漬けを添えて」参照。

・豆腐は絹ごし豆腐を常温にもどして水切りして使う。木綿豆腐はくずれにくいがバサついた感じになる。

・豆腐は大きく切り過ぎると中まで熱くなりにくい。小さ過ぎると豆腐自体の水分が失われてパサパサに。豆腐1丁(約300g)を6等分くらいの大きさ(各4cm×5cm×3cm)に切る

タピオカ粉を厚めにつけると表面がカリッと揚がるが、一度に厚くつけるのではなく、2〜3回に分けてつけ重ねるとはがれない。







揚げ出し3種 いちじく、アボカド、豆腐

「いちじくの揚げ出し」(左奥)


【材料(2人分)】
・いちじく 2個

・タピオカ粉(薄力粉1:片栗粉1でもよい) 適量

・青じそ 2枚

・揚げ油 適量

・合わせ出汁 適量
出汁6:濃口醤油0.6:薄口醤油0.2:みりん1の割合

・おろし生姜 適量

【作り方】
1.鍋にたっぷりの湯を沸かし、(トマトや桃の湯むきの要領で)常温のいちじくを湯に入れ10秒ほどで引き上げ、氷水に落とす。水気を拭いて、竹串を使って皮をむく。「焼きいちじくの田楽」の「ひと目でわかるプロセス&テクニック」参照。

2.いちじく全体にタピオカ粉を刷毛で均一につける。しばらくおいてタピオカ粉がいちじくの水分を吸いしっとりしたら、再度、タピオカ粉をつける。

3.青じそを素揚げする。フライパンに揚げ油を入れて160℃弱くらいに熱する。青じそを入れて、少し透明感が出てきたら裏返して揚げる。泡がほとんど出なくなる直前で油から引き上げてクッキングペーパーに広げ、余分な油を除く。

4.揚げ油を170℃に熱していちじくを入れる。170℃を維持して内部まで熱くなるように1分〜1分30秒ほど揚げる。表面がカリッと揚がったら、油から上げて縦半分に切り器に盛る。温めた合わせ出汁を横から注いでおろし生姜をのせ、青じそを添えて供する。

「アボカドの揚げ出し」(右奥)


【材料(2人分)】
・アボカド 1個

・タピオカ粉(薄力粉1:片栗粉1でもよい) 適量

・ベビーコーン(小) 2本

・天ぷら衣
薄力粉50g、冷水50cc、卵黄1/2個

・揚げ油 適量

・合わせ出汁 適量
出汁6:濃口醤油0.6:薄口醤油0.2:みりん1の割合

・大根おろし 適量

・おろし生姜 適量

【作り方】
1.アボカドは熟した柔らかいものを用意する。アボカドの種に当たるように縦に包丁を1周入れ、ひねって2つに割り、種と皮を除く。片身をそれぞれ縦3つに切る。

2.アボカド全体にタピオカ粉を刷毛で均一につける。しばらくおいてタピオカ粉がアボカドの水分を吸いしっとりしたら、再度、タピオカ粉をつける。

3.ベビーコーンは皮をむいてひげを取る。ベビーコーンのひげを揚げる。フライパンに揚げ油を入れて160℃に熱する。ひげを入れて箸でほぐし、20秒ほど揚げてきつね色になったら、油から引き上げる。クッキングペーパーに広げて余分な油を除く。

4.天ぷら衣を作り、ベビーコーンを天ぷらにする。ボウルに入れた冷水に卵黄を加え、泡立て器でときほぐす。そこに薄力粉を加えて粘りが出ないようにさっくりと混ぜる。ベジタリアンは卵を用いなくてもよい。ベビーコーンに薄力粉(分量外)を薄くまぶして天ぷら衣をつけ、175℃に熱した揚げ油に入れて揚げる。出る泡が少なくなりカリッと揚がったら油から上げて、クッキングペーパーにのせて油をきる。

5.揚げ油を175℃に熱してアボカドを入れる。170〜175℃を維持して内部まで熱くなるように1分30秒ほど揚げる。表面がカリッと揚がったら、油から上げて器に盛る。温めた合わせ出汁を横から注いで大根おろしとおろし生姜をのせ、ベビーコーンの天ぷらとひげを添えて供する。

「豆腐の揚げ出し」(手前)


【材料(2人分)】
・絹ごし豆腐 1丁(約300g)

・タピオカ粉(薄力粉1:片栗粉1でもよい) 適量

・甘長唐辛子 2本

・揚げ油 適量

・美味出汁 適量
出汁4:濃口醤油1:日本酒1:みりん0.8の割合

・大根おろし 適量

・おろし生姜 適量

【作り方】
1.絹ごし豆腐はあらかじめ常温にもどしておく。クッキングペーパーではさみ、軽い重石をして90%程度の重量になるように水をきる。豆腐を4cm×5cm×3cmくらいの大きさに切る。

2.豆腐全体にタピオカ粉を刷毛で均一につける。しばらくおいてタピオカ粉が豆腐の水分を吸いしっとりしたら、再度、タピオカ粉をつける。タピオカ粉のしっかりした皮膜をつけたければ、同じ要領でもう一度タピオカ粉をつける。

3.甘長唐辛子はヘタを取る。フライパンに揚げ油を入れて170℃に熱する。甘長唐辛子を入れて、箸で返しながら1分ほど揚げて油から引き上げる。クッキングペーパーにのせて油をきる。

4.揚げ油を175℃に熱して豆腐を入れる。170〜175℃を維持して内部まで熱くなるように1分30秒ほど揚げる。表面がカリッと揚がったら、油から上げて器に盛る。温めた美味出汁を横から注いで大根おろしとおろし生姜をのせ、甘長唐辛子を添えて供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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