3年ぶり開催の「ファンタジー・オン・アイス2022」。トップスケーターたちの豪華競演に胸熱！

新境地を開拓したといってもいいほど、見事な出来だった織田信成さんの新プログラム『Kinky Boots』。今後もぜひ続けてほしい作品だ。

織田信成さん（日本）
『Kinky Boots』


毎回趣向を凝らしたパフォーマンスで楽しませてくれる織田信成さん。期待はしていましたが、今回の選曲・演技はさらにその想像の上をいく、拍手喝采ものでした。

映画をもとにミュージカル化もされ、今も愛されている『Kinky Boots』。その主役の一人、ドラァグクイーン（女性の姿でパフォーマンスを行う男性）のローラに扮したと思われる衣装、メイク、立ち振る舞いは初回公演から完璧！　登場してから演技を終え、リンクを降りて幕の向こうに消える瞬間までローラとして歩く後ろ姿に、惜しみない拍手が送られていました。

徹底的になりきり、やりきるサービス精神とプロ根性に感嘆です。猫足着氷といわれる軽やかなジャンプも健在で、引退後ますますスキルアップしている印象。新たな名プログラムを発掘した織田さんのこれからのパフォーマンスがさらに楽しみになりました。



見ていて、氷が喜んでいると感じるほど、滑らかなスケーティングはますます深化していた。無駄な力がいっさい入らないステファンの演技は、まさにお手本の極み。

ステファン・ランビエルさん（スイス）
『This Bitter Earth』

ファンタジー・オン・アイスを語る上でなくてはならないスケーターの一人、ステファン・ランビエルさん。毎回、心に残る演技を披露してくれるのですが、今回揃えてきた2作の新プログラムはすでに芸術作品の域に達する内容でした。

前半では、坂本花織選手、ハビエル、荒川静香さんとスタオベが続く演技の流れを受けて登場したステファン。動と静の世界を緩急つけた演技で表現しきった圧巻のパフォーマンスに、もちろん会場中がスタオベでした。そして、さらに脱帽だったのは後半のプログラム『This Bitter Earth』。完璧なエッジワークと情感豊かな振り付け。そこが銀盤であることを一瞬忘れ、現代舞踊を見ている錯覚に陥るような崇高さすら漂わせ、観客をステファンの作り上げる世界観へと誘っていました。



疾走した次の瞬間にはぴたっと静止するなど、エッジワークと銀盤を自由自在に楽しんでいた。

皆さんご存じのように、北京五輪銅メダリストであり、22年世界選手権王者である宇野昌磨選手、島田高志郎選手、今回のアイスショーで成熟した演技を見せてくれたデニス・ヴァシリエフス選手（ラトビア）たちのコーチでもあるステファン。指導の合間に、革新的なプログラムに自ら挑戦し続ける姿勢は、愛弟子たちに多大な刺激と影響を与えているはず。進化し、深化していくであろうランビ組のパフォーマンスに期待大です。

ひと蹴りで驚くべきスピードに乗り、伸びやかかつ、丁寧なスケーティングで魅了してくれた坂本花織選手、北京五輪・世界選手権2022ともに金メダルに輝いたアイスダンスカップル、ガブリエラ・パパダキス＆ギヨーム・シゼロン選手組、ステファン同様、毎回進歩的なプログラムで唸らせてくれる荒川静香さん、氷上の伝道師・ジョニー・ウィアさん、長い手脚を生かしてダイナミックな演技で表現者としての魅力を改めて感じさせてくれた田中刑事さん。



フィナーレにて、周回前の最後の挨拶。清々しい表情を見せる羽生結弦選手と、拍手で観客の声援に応えるスケーターたち。しっとりと成熟した演技を久しぶりに披露してくれたジェフリー・バトルさん（奥から羽生選手、ジョニー・ウィアさん、ジェフ）の笑顔も見える。

印象深い演技、心に響く歌声……やっぱりフィギュアスケートって魅力的だ、アイスショーって夢のひとときだ、と再認識させてくれた「ファンタジー・オン・アイス2022」幕張公演。これから名古屋、神戸、静岡でご覧になる方は幸せな時間にひたっていらしてください。