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がんになった医療者の治療選択と向き合い方。看護師 射場典子さん 第3回(前編)

2018.02.02

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病を体験した人の言葉から生きる勇気と知恵を得る


生きがいを失い、先の見えない日々を過ごしていた射場さんに、さらに一筋の光が差し込んできます。それが「健康と病いの語り ディペックス・ジャパン」との出会いでした。

患者の語りをデータベース化し、インターネットで公開するDIPEx(Database of Individual Patient Experiences)は、病気を体験した二人の医療者によって2001年に英国のオックスフォード大学で始まった活動です。17年末現在、欧米を中心に13か国でDIPEx方式による「患者の語り」が公開されています。

日本では06年3月、医師の別府宏圀さん(ディペックス・ジャパン理事長)ら有志が設立準備会を発足させ、勉強会を重ねていました。そのことを緩和ケア関係者のメーリングリストで知った射場さんはさっそく英国のウェブサイトを閲覧し、この活動にたちまち魅了されます。


「病気の体験をした人々が語る言葉の中から大切なことを拾い上げ、そこから生きる勇気を得ようとする取り組みに、“私がやりたいことはこれだ!”と直感的に思いました。まさに患者になってから求めていたことで、質的研究者としての経験も役立てられると」。

ディペックス・ジャパン事務局長の佐久間りかさんは「英国と同じように、患者の立場を経験した医療者がかかわってくれるのはとても心強いと感じました」と射場さんとの出会いを振り返ります。

こうしてディペックス・ジャパンの最初の取り組みである「がん患者の語りプロジェクト」の主要メンバーとなった射場さんは、英国DIPExでの短期研修、語り手の人権を守るための倫理委員会設立などの準備を経て、乳がん患者へのインタビューを開始します。それは08年1月のことでした。

(後編に続きます)
取材・文/渡辺千鶴 撮影/八田政玄
①②③写真提供/射場典子さん

「家庭画報」2017年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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